肆之弐拾 モブ、おっさんの髪を心配する
「秀頼公は豊太閤……豊臣秀吉の嫡男で家康公の娘婿じゃの。京にて首を晒されたのち、嵯峨で供養されておったのじゃが」
「ええ…首晒すって、それ江戸時代より前の話ですよね?」
カジュアルに首晒す実例が出てきましたよ。さすが江戸時代。さすが京都。怖い。
「秀頼公の名誉のために言っておくと、一応自刃の上、介錯されたので武士として死んだのは間違いないのじゃぞ」
「いや、そこってそんなに大事なの?」
死んで首晒されてるのに、気にするのそこなの?
「大事なのじゃよ、武士の体面というやつはの」
よくわかんねえな、武士の思考回路って。そりゃ価値観が違うのはわかるけど、まあ葉隠とかも軽く狂ってるもんな。
「とはいえ、恨みは限りなかろうな。西軍の総大将じゃったわけじゃし」
「その、恨みのこもった首を盗んでどうするんですか?」
首、つか、もはや髑髏だよね。そんなもんどうするんだか。
「彼法の秘儀で髑髏を荼吉尼尊に仕立て上げる修法があるのじゃよ。具体的には昼夜問わずに男女それぞれのまぐわいの液を髑髏に塗り込んで真言を唱え続けるという」
なにその絵に描いたような邪教。しかもその秘儀とやらのベースが密教つか、真言宗に聞こえるんですけど。どうなの大僧正。
「うむ、真言の経典が流出して、修行の足らぬ僧が半端に解釈を重ねて、おかしな秘儀となったらしい。そうはならぬように経典を見せるのは門下の者に限っておったのじゃが」
そんな風に誤解を受け易い教えなんだ、怖いなその経典。
「かの天台宗の伝教大師最澄にも『弟子にならねば経典は見せぬ』と申し伝えたら入門したぞ」
ちょいちょいちょーい! おいおい平安仏教よ、そんなことになってたんかよ、最澄が空海の弟子だったとか俺、知らないよ。
「まあ名目だけの弟子だったがの。それでも弟子は弟子じゃ」
さらりとその辺を流す大僧正。平賀のおっさんはこんな感じに機密を聞かされてたんだろうか。よく禿げないな、この人。
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