肆之拾参 モブ、またまた機密を聞かされる
「大僧正から聞いてない?」
「何をですか?」
「何と戦うか」
「戦うの?!」
大僧正の組織した草は何かと戦うための組織なの? これっぽっちも聞いてないのでそういう機密の話はしないでください。今後ともモブとしてお江戸の片隅で生きていく所存。ご協力よろしくお願いいたします。
「てっきり草は大僧正が幕府の監視をするために置いたものかと」
「平時はそうなのお、でも最近ちょっと雲行きが怪しいのよねえ」
なんだよ、今は平時じゃないのかよ。じゃあなんなの? まさか戦時じゃないよね?
「今は平時じゃないんですか? どういう状態なんです?」
「戦が近いみたいなのよお。過去の亡霊との戦があ」
過去の亡霊……との戦? 良かった、どう考えても俺とは関係なさそうだ。こういうのは衛人の仕事だろう。こっちはモブとして日々を地味に豊かに暮らしていくだけだ。それにしても亡霊か。恐ろしい話だな、俺には特に関係ないけど。
「そのためか各地の草の動きがやけに活発なのよねえ。えいくんの修行の仕上げも急かされてるしい」
「え、あれでまだ修行終わってないんですか? あんなに強くて妖怪退治とかしてるのに?」
蝦蟇や百足を退治したって言ってたし、道場でもあんなに普通じゃない動きしてたのに? 自慢じゃないが俺だったら死んでたぞあれ。死なないけど。
「あの子には分身や斬撃飛ばす程度は最低でも覚えてもらわないとお。摩利支天と鹿島神の加護があるんだからできるはずなのお」
なんというハードルの高さ。それもう人間やめてますよね? 向こうに戻ったら人外扱いされません?
「仙郷だと加護の力がそんなに及ばないと聞いてるからあ、普通の人の振りくらいはできるんじゃなあい?」
「そこまでしないといけないんですか? さすがにちょっと衛人がかわいそうになってきました」
「できなかったらこの日の本が危なくなるだけよお。それはそれで面白そうだけどお」
ちょいちょい外道の顔が出るな、この方。でも好き。
「ただいま戻りましたー」
「ご当主様、土御門様、日昇様、おかえりなさいませ」
お、話の当人とお姉さま二人が帰ってきてお千代さんに出迎えられてる。佐々木さんはいないけど、お城に残してきたんだろうか。三人ともなにやら難しい顔で考え込んでるようだ。
「おかえりい。結局どういう話だったのお?」
そしてクマラさんは俺を見て唇に指をあてる。あざとかわいい。わかりましたよ、さっきの話は黙っときますよ。
あんな話聞くのが英雄じゃなくてモブでいいんだろうか。もう誰も俺に機密を話そうとしないでほしい。
お急ぎでない方、毛色の変わった此の物語をまだ読んでも構わぬとお思いの方、向後に期待してやろうという方、よろしければ更に下にスクロールして広告下の白星を「ぽちっと」押してやってくださいませんか。
「ぶっくまーく」などもお気が向きましたらお願いいたします。
評価をいただければ、七海が喜んで通報をものともせずに五体投地でお礼に参ります。




