肆之拾弐 モブ、笠置の里の詳細を聞いて引く
「意外とちゃんと考えてるのねえ」
「当然ですよ、俺をなんだと思ってるんですか。自分の考えたオラ設定でアレコレ足したりするモデラーだとでもお思いですか? いや、オラ設定って楽しそうですけどね、ちょっとやりたいですけどね。だけど原型師たるもの、お客さんに納得してもらってナンボの世界じゃないですか、設定を解釈した上で造形して、この装甲断面のスジボリは複合材料なのかな、とか、ここのカービングは吸着地雷に対抗するためのツィンメリットなのかなーとか思ってもらえたらロマンが無限軌道じゃないですか、そう思うでしょう?」
「何言ってるかわからないけど、私の思ってることと違うのはわかるわあ」
やべ、熱くなりすぎてクマラさんを引かせちゃった。トークの崩壊が時間と共に進んでおります、俺はすげえ楽しいですけど。
「それにしても趣味の話はいいもんですね」
「趣味の話は爪の先ほどもしてないわよお」
そうですよね、俺の一方的な共感でしたね。
解釈の難しさは分かると言いたかっただけです。まるで伝わってないみたいだけど。
「まあ空海師の翻訳は本当に見事だったのよお。ご本人は天竺の経典を翻訳したとは仰らないけどお」
「なんで言わないんですか?」
「自分の知識や悟りは代々の座主のおかげで自分のものじゃないって。謙虚なのねえ」
確かに大僧正の自慢って聞いたことないな、そう言えば。そこで自慢しちゃうようなのは半分仏にはなれないんだろうか。じゃあ俺には無理だな。
「ところでクマラさんは山伏だったと聞きましたが、笠置ってどんなところかご存知です?」
そう、うちの長屋の住人ほぼ全てが笠置の出身らしい。柳生の里の近くらしいけど、どんなとこなんだろ。
「懐かしい名前を聞いたわあ、笠置はねえ、古くから修験の行場なのよお。南北朝の煽りで焼けたんだけどねえ、行者が頑張って里まで作って復興したのよお。乱破の始まりの里とも言われてるわねえ」
乱破て。それ忍者ですやん。
うちの長屋って忍者の集まりなの? 嶋田さんが草とか言ってた上に、現地に詳しいクマラさんが言うからにはそうなんでしょうね。
「忍びが多い里なんですか?」
「忍びが多いと言うか、山伏は独自の情報網持ってるからねえ。山伝いにどこでも行くし、自衛のために武芸も嗜んでる行者も多いし。修験の山里って大和の国や山城の国は多いのよお。それでいて怪しまれずに人里にも入れるでしょ? 結果的に忍びみたいなことになっちゃうのお」
うちの長屋って改めて考えるとヤバくない? みんな、何と戦ってるの?
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