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このEDOはフィクションです  作者: 石依 俑
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肆之玖 モブ、英雄豪傑の強さを知る

 俺が猫神使吸ってたらキツネがスパーンして平賀のおっさんが秋○商法をプレゼンしてきた。

 何を言ってるかわからねーと思うが(略


「なんで握手券つけようと思ったんですか」

「知り合いの版元が茶屋連中に頼まれたらしくてな、業界振興に知恵を借りたいと言って来たんだよ」


 で、握手券かよ。そんなにファンがついてる茶屋娘って多いのかね。綺麗なお姉さんが茶屋にいるならどうぞご紹介くださりやがれこの野郎。


「んじゃ報告らしい報告もなさそうだし、ぼちぼち俺は帰ろうかね。七海、邪魔したな」


 何しに来たんだ、このおっさん。まあ定期的に情報仕入れに長屋に来てるみたいだから暇潰しに寄っただけかな。


 そしてうちには猫神使とまだ興奮気味のキツネが残った。キツネ、お前も帰れ。


「明日は朝から衛人の屋敷に行こうと思いますが、猫神使はどうされますか?」

「何をしに行く?」

「お姉さま方に約束を果たしてもらいます」


 ああ、と猫神使が頷く。


伽把倉キャバクラとか言ってたあれか、猫は行かぬ。七海は好きにすれば良い」


 はい、好きにします。明日は負債の取立てです。お姉さま方、わては加減しまへんで、ビタ一文まける気はありまへんでえ。


 次の日の朝、いつも通りお妙さんの用意してくれたご飯を食べてから、衛人の屋敷へ向かうことにする。

 朝食に卵かけご飯とかたまには食べたいけど、こっちだと卵の生食って衛生的にどうなんだろ。

 そもそも卵がクソ高いから気軽にお願いできるもんじゃないけどね。平賀のおっさんが言うには体感的に卵一個が200円くらいの感じらしい。お高うございますね。だからお妙さんに頼むのは自重してます。でも卵焼きも食べたい。


 そんなことをつらつら考えてたら衛人の屋敷に着いた。やっぱお屋敷いいなー。俺も貰えねーかなー。無理だろうなー。

 まあいいや、今日の俺は地獄の取立て人だ! さあさあ、キャバれるお姉さまはいねがー!


「あの、当家にご用事でいらっしゃいます、か?」


 THE町娘、といった風情のお姉さんが怯えながらこちらを見て問いかけてらした。

 いかんいかん、やる気が溢れて態度に出てましたか、お姉さま方に会うまで態度に出すべきじゃなかった。俺は紳士!

 しかしこのお姉さんもお綺麗だな。屋敷のお女中さんだろうか。衛人の周りはこんな魅力的なお姉さんばっかりかよ、さすが英雄豪傑、羨ましい限りです。


「すいません、宇野七海と申します。衛人は在宅ですか? いや、衛人はいなくてもクマラさん達がいればいいんですが。それとお名前教えてもらっていいですか?」


 そういや衛人の苗字ってなんだっけ? なぜか少し後ずさりながら女中さんが答えてくださる。


「千代と申しますが、宇野七海……ああ! 七番様でいらっしゃいますか! 当主は朝の稽古中だと思います、どうぞこちらへ」


 え、いいの? ちょっと警戒心なさすぎじゃないですかね。まあノコノコと着いていくんですけどね。

 屋敷の裏手の道場の入り口っぽい所に案内されたら土御門さんと日照さんがいらした。


「七番様がいらしたのでご案内しました。ここからはお任せしても?」

「すまんな千代。宇野殿、本日はどうされた?」

「どうせ大した用事じゃあないんでしょー」


 俺的には大した用事ですよ。負債を払ってもらいに来ましたよ。

 用件を切り出そうとしたところ、道場から、ずがががが! とすごい音がする。何この音。


「今日は一段と激しいか」

「八番君も少しは慣れてきたのかしらねー」


 涼しい顔の陰陽師と尼さん。これ衛人の稽古の音なの? 木剣でこんな音する?


「クマラ殿の剣は少々激しいのですよ」


 いや、少々なんてものじゃないでしょこれ。なにがどうなってるのか、首を伸ばして入り口から中を覗き込む。

 どん! と鋭い踏み込みの音がしたかと思えばクマラさんの木剣が衛人の顔を真っ直ぐ狙っていた。

 首を傾げて突きを避けた衛人は、クマラさんの踏み込みに合わせてこちらも突きを放とうとする。が、クマラさんの突きが急に横面打ちに変化する。

 体が伸び始めようとしていた衛人は剣を戻す余裕もなく、しゃがみ込んで躱すと剣を引き戻して低い姿勢のまま右足を踏み込み、脛切りに狙いを変化させる。

 当たると思われた脛切りは突如ふわりと浮いた足についていけず、鋭く空を切る。


「私に羽を使わせたのは上出来だわあ。ななくんが来てるし、今朝はここまでにしましょうかあ」


 俺に目を向けながら稽古を終わらせるクマラさん。


「そうだった、この人飛べるんだった……。ありがとうございました」


 衛人は剣を納めて一礼する。広めの道場の正面はちょっとした祭壇みたいに掛軸やら鏡やら瓶子、それに仏像や仏具も飾られていた。神仏習合ってやつだろうか。


「お前、いつもこんな激しい稽古してんの?」


 油断一つで大怪我するとこじゃん。さっきの立ち会いも攻防が早すぎだろ。


「回峰行も護摩行もないから山にいた時より楽ですよ。飯もちゃんと食えてますし」


 うんうんと頷くお姉さま三人組。どうやら冗談じゃなさそうですね。


「俺らちゃんと飯食わないと体が砂に戻るんじゃなかったでしたっけ?」

「えっ、なにそれこわい」


 お姉さまにそう確かめるとビビる衛人。俺も大僧正と鳥さんに聞いただけだから試したわけじゃないけど。


「えいくんにはそれ伝えてないのお」

「聞かれなかったからねー」

「砂に戻らぬ程度に加減したゆえご安心を」


 こわいこわい、この人らこわいよ。でも好き。


「あっ! 例の嫌な気がまた!」


 またニュータイプが出てきた。こっちは少し放っておこう。


「衛人、こんなの毎日してるの? 剣振れないとか嘘じゃん。素人目にはすごいと思ったよ」

「そりゃだいぶ慣れたからですよ。この方ものすごいトリッキーな剣使うんで、最初の頃はボコボコでしたよ。やっと少し対応できるようになりましたけど、まだまだです」

「上下に的を振られたり不意の突きなんかには対応できるようになったわよお。人相手ならまあこれでいいけど、妖相手じゃまだおぼつかないわねえ。頭が一つで手足が二本ずつとは限らないのよお」


 仮想敵は妖怪かよ。そういや河童も手が伸びたりしたな。ああいうの相手にしなきゃいけないのか、豪傑も大変なんだな。

 お急ぎでない方、毛色の変わった此の物語をまだ読んでも構わぬとお思いの方、向後に期待してやろうという方、よろしければ更に下にスクロールして広告下の白星を「ぽちっと」押してやってくださいませんか。


「ぶっくまーく」などもお気が向きましたらお願いいたします。


 評価をいただければ、七海が喜んで通報をものともせずに五体投地でお礼に参ります。

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