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このEDOはフィクションです  作者: 石依 俑
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肆之陸 モブ、聞きたくない長屋の使命をとうとう聞かされる

「へー鼠小僧って実在したんですか」


 そういえば鼠小僧次郎吉って言うもんな。さすが江戸ファンタジー。え? まさか本当に魚屋の次郎吉さんが鼠小僧なの? マジで? 魚屋で奥様方のアイドルのこの人が?


「宇野殿は鼠小僧をご存知のようだが、どのように聞いておられる?」

「悪徳商人や悪代官から盗みを働いて貧乏人に配る義賊、ぐらいの話しか知りません。なんかこう、ほっかむりして小判の入った箱を担いで屋根を伝って」


 我ながらチープなイメージだけど、そうかと頷く嶋田様と次郎吉さん。いや、だからなんで盗人と奉行所与力がそんな仲いいんだよ。特に与力はそれじゃダメだろ。


「ところで七海、うちの長屋がなんと呼ばれてるか知ってるか?」

「遠傘長屋ですよね。長屋にはみんなそんな感じの名前がついてるんですか?」


 次郎吉さんが突然変なことを聞く。まあ住んでそこそこ経つし、いろんな人からあー、あの長屋かあ、みたいな扱いされるから覚えましたよ。なんでうちの長屋はそんな扱いされるんだろね。


「うちは問屋から遠いのに傘張りが多く住んでたから遠傘と呼ばれるようになった、つうのが由来と言われてるがな、実は別の意味がある」

「はい? 別の意味?」

「宇野殿、心して聞かれよ。遠傘は本来は十日サ、と書くのだ」

「はあそれはどうも」


 真剣な顔の嶋田様から長屋の真の名が明かされる。明かされたけどそれがなんなの?


「十日サ、を下から書くとどうなる?」


 下から? 試しに指で宙に書いてみる……あ!


「草、ですか?」

「左様、草にござる。権現様が幕府を江戸に開いた頃より、民に紛れ、幕府を守り、また監視するために江戸の始めに大僧正が置かれたのが十日サの始まりにござった。この次郎吉も未だお役目を勤める者にござる。そして某も」


 待って。なんか壮大な話になってる。

 草がいわゆるスリーパーを指すってのは聞いたことあるけど、俺もそうなの? そんなんなった覚えないよ? むしろ寅吉だよ? それに役人の嶋田様もそうなの? それって幕府への裏切りじゃない?


「某は代々与力を勤める家に生まれ申したが、幕府だけではなく大僧正をも主と定めよ、と家督を継いだ折、口伝にて含められてござる。十日サを統括し、寛永寺との繋ぎとなれ、と」

「じゃ長屋の住人にも意味があるんですか?」


 魚屋、大工、三味線師匠、読売、大道芸人。並べても意味はなさそうなんだけど?


「魚屋は家の奥に入り奥方や女中に親しく接する。芸者の師匠はお座敷の噂話を集められる。読売や大道芸人も、市井の噂や不平不満を聞くことができる。大工は屋敷の造作や仕掛けを知ることができる。全て意味がある」

「それにもともと俺らは同じ里の出だ。笠置って知ってるか?」


 そんなん知りませんよ次郎吉さん。それ、日本のどこなの?


「笠置は京と大和の境でな。柳生の里の隣なんだよ。修験の隠れ里だな」


 ますます知らねえよ、自分の知ってることを常識だと思うのやめて欲しい。これはみんなに言いたい。

 それより柳生のお隣って、つまり剣の里で荒くれてるの?


 お急ぎでない方、毛色の変わった此の物語をまだ読んでも構わぬとお思いの方、向後に期待してやろうという方、よろしければ更に下にスクロールして広告下の白星を「ぽちっと」押してやってくださいませんか。


「ぶっくまーく」などもお気が向きましたらお願いいたします。


 評価をいただければ、七海が喜んで通報をものともせずに五体投地でお礼に参ります。

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