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このEDOはフィクションです  作者: 石依 俑
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肆之肆 モブ、江戸城で結界を張る

 はい、江戸城に来ました。さすがに広い。衛人とお姉様方が門番に説明してる。俺は猫を肩に乗っけたモブだからね。猫は神使だけどね。


「七海さん、オッケーです」


 衛人が状況クリアした。でかい大手門、の脇の小さい入り口を潜る。中に入ったところで肩の猫神使からアドバイスが出る。


「まずは城内の配置と実際の建物を頭に入れよ。鳥の目で想像できるほどに」


 俯瞰の2次元と3次元構造をリンクさせるなど、立体物製作者ならお手の物。某グルアースの3Dマップか、お城模型シリーズ並みに脳内再現してやんよ。衛人、地図と案内を頼む。


 着流し股引はしょり姿のモブが猫を肩に乗せて地図片手に城内をうろつく。当然あちらこちらで誰何がかかるが、衛人とお姉様パーティーが事情を説明してる。そっちは任せた。


 うろつくこと三時間ほど。うし! だいたい頭に入った。天守閣にはさすがに上れなかったけど。


「まずは穴を掘ると良い。鼠が出られぬよう深い穴を」


 クマラさんが印を組み、馬場に土遁の術で差し渡し5メートルほどの深い竪穴を掘る。さらっとこなしたけど、この方すげえな。よっしゃ、これで準備完了だ。完了ですよね?



 刻は黄昏、化外のモノが動きだす時間。


「氏子の寅吉、観想せよ」


 散々見て歩いた江戸城の地図を頭の中で構造物とリンクさせていく。イメージだ、鼠を囲うイメージが大事なんですよね?


「良い。そのまま範囲を狭めよ、鼠は我が神の権能の外にいない」


 想像の中でゆっくり範囲を狭めていく。なんとなくのイメージから、段々と範囲が明確になってくる。

 遠くから夥しい鼠の鳴声が聞こえてくる。四方から視界を埋め尽くさんばかりの黒い波が近づいてきた。うえ、気持ち悪い、何匹いるんだこいつら。


 土御門さんが式神を呼び出し宙に浮く。おおすごい。

 他の人はと見ると日昇さんが護法童子を呼び出し、衛人と一緒にこちらも宙に浮いている。あんなこともできるんだなあ。法力も陰陽術もすげえ。なんつーか、さすが主人公パーティーって感じだな。さて俺は、と。


「クマラさん、よろしければ俺を抱えて飛んでいただけませんか?」


 このままだと俺だけ鼠の海に溺れちゃう。「死因:鼠による窒息」になるのは勘弁願いたいところ。死なないけど。


「これはちょっと洒落にならないわねえ」


 引きつった顔で俺を後ろから抱えてくださる。おうふ、やはりムチムチボディは素晴らしい。素晴らしいのに、鼠を囲うことに集中してそちらに注意を向ける余裕が1ミリもない。もったいないおばけがこんにちはしてくる。

 2メートルほど浮いてる俺たちの足のすぐ下を、鼠の大群が通り過ぎていき、我先へと穴の中に落ちていく。


「ヂュー! ヂュウウウ!」「ギー! ギー!」


 鼠どもが穴の中で大騒ぎしてる。本気で気持ちわる!


「氏子の寅吉、集中を途切れさせるでない」


 はい、猫神使。このまま穴の大きさと同じまで範囲を狭めるんですね?

 ついにすべての鼠が穴の中に落ちた。集中を維持したまま地上に降ろしてもらう。こっからどうすんだろ。


「七海さんは結界をそのままお願いします。皆さん、攻撃の準備を」


 あ、これ、結界だったの? てか、まだ続けるの? 軽く頭痛がしてきたけど、でも我慢する。これが終わったら俺、お姉様キャバクラでいっぱいいちゃつくんだ。


 ドズン! と急に頭と体の負担が重くなった。頭痛え! なんじゃこれ、なんじゃこれ!


「鼠の頭目が出るようであるな」


 猫神使、普通に言わないでください。モブはいっぱいいっぱいなんですよ。と、愚痴を言う暇もなく、大鼠がその姿を現わす。


「おのれ猫めが、何故我が邪魔をする!ただ蚕を守っておればいいものを」


 おい鼠、妖怪のくせにめっちゃいい声ですね、バリトンボイスってやつですか?


「氏子の望みである。善悪もなく、是非もない」


 ヒュー、カッケェ。負担は俺の頭が痛いだけですもんね! 衛人、早く早く! 保たないよ、俺がね!


 式神と護法童子が攻撃を始めた。大鼠が取り込んだ鼠どもを呪法で溶かしていく。溶け始めたそれをクマラさんが千々に斬りはらう。

 いやあああ! グロい! 血が! 臓物が! おえっぷ。


「ここは我慢であるぞ。じゅる」


 猫神使、グロ耐性高いっすね。鼠見てよだれ垂れてませんか? 俺は目ぇ逸らさないと無理っす。


「ただ観想せよ、目など必要ない。うまそう」


 直視しなくていいお墨付きが出ました。え、今うまそうって言った?

 俺は完全に目を閉じて鼠避けに集中する。ただひたすらに決めた範囲から出さない、それだけに心を砕く。立体屋の脳内3Dマップ舐めんな。止めはきっと主人公パーティーが差してくれるだろう、頼んだぜベイビー。

 お急ぎでない方、毛色の変わった此の物語をまだ読んでも構わぬとお思いの方、向後に期待してやろうという方、よろしければ更に下にスクロールして広告下の白星を「ぽちっと」押してやってくださいませんか。


「ぶっくまーく」などもお気が向きましたらお願いいたします。


 評価をいただければ、七海が喜んで通報をものともせずに五体投地でお礼に参ります。

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