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このEDOはフィクションです  作者: 石依 俑
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肆之壱 モブ、猫神使の機嫌が気になる

なんかPV増えてる? 今回から新章となります。

 そうして俺がモブ職人の日常を満喫してたら、隣の読売の新左さんがやってきた。この人はいつも仕入れた噂話を俺に聞かせていく。仕事しろよ。


「七海っち聞いたかい? お城が何やら大変なことになってるらしいぜ」

「俺が家からほとんど出ないの知ってるでしょう? そんで城が大変って何があったんですか」

「ここだけの話だけどな、出るんだってよ。いや、まだただの噂なんだがよ……」


 声を潜めて話すのを聞くに公方様、つまり将軍をつけ狙う妖が城内に出没してるらしい。

 暴れん坊、こと新さんの顔が思い出される。あの人なら自慢の新陰流で妖怪相手に大立ち回りしちゃうんじゃなかろうか。


「そういや高尾山で怪異を退治した寅吉八番が城に詰めてるらしいけど、七海っちなんか知らない?」

「知りませんよ、そんなに接点ないし」


 嘘です。将軍込みで知り合いしか話に出てきてません。


「そっか、なんか聞いたら教えとくれな」

「ないと思いますけど分かりました。なんかあったら伝えますね」


 嘘です。将軍様が旗本の三男と偽って市井に混じってるとか、八番と俺が対だとか、寅吉が幕府組と寛永寺組に分かれてるとか、言えないことばっかりです。

 あれ? 俺の周りって機密情報しかなくね?


 言うだけ言って帰っていく新左さんを見送って根付の作業に戻る。猫神使は新左さんが苦手なようで部屋の物陰でこちらを睨んでじっとしてた。

 あいつ声大きいですもんね、もう大丈夫ですよ。


「猫はうるさいのは好かぬ」

「俺もそうですよ。まあ辻に立って大声出すのが仕事みたいなもんですから仕方ないかと」

「うるさいのは好かぬ」


 プイっとあらぬ方を見て香箱組んでらっしゃる。これって拗ねてるのかな。


「七海さん! 助けてください!」


 うるさいよ衛人。突然入ってくんな。ほら猫神使がまたかって顔で機嫌悪くなってるじゃないか。


「繰り返すが猫はうるさいのは好かぬ」


 ほら、同じこと何回も言う。めっちゃ怒ってますやん猫神使。


「衛人、猫神使の機嫌悪くなるから静かにしてくれ。あと俺の作業の邪魔すんな」

「あ、すいません。でも助けてください七海さん」

「聞くだけ聞くから最初から話してみな。ゆっくりと、小声で」


 来たのはこいつだけなんだろうか。魅惑のお姉さま方はいないの?


「神使殿、七海殿、失礼仕る」

「ななくん、こないだぶりい」

「相変わらず狭いとこに住んでるねー」


 クールビューティ陰陽師にムチムチ天狗に魔乳尼さんもいらしてた。ありがてえ。むしろ衛人だけ帰れ。ところで俺が衛人を助けるんですか? なんか模型でも作ってて作業が詰まったの?


「模型じゃないです。なんで七海さんが俺を助けられるのか、俺もわかりませんけど、とりあえず来てます」

「模型以外にアドバイスなんかできないよ、俺。あとは猫との付き合い方とか?」


 いやマジで俺にできることなんてないよ、衛人は根付を作ったりするの?


「某から説明致そう」


 クールビューティー陰陽師の土御門さんが言う。この人、落ち着いてたら本当にクールビューティーなんだけどな、残念クールなんだよな。でも好き。


「あ! また悪い気が!」


 このニュータイプ能力さえなければ。いや、贅沢は言うまい。好き。


「はいはい、茶番はその辺にしといてねえ。ななくんは上様が妖に狙われてるのは知ってるう?」

「はい、ついさっき噂を聞いたとこです」

「えらく早耳がいるのねえ。さすが遠傘長屋と言ったとこかしらあ?」


 なにがさすがなのかは知りませんけど、噂好きが隣に住んでます。むしろそれがやつの存在意義です。


「上様の周りなら腕利きの護衛が固めてるんじゃ?」

「特別編成の護衛って言うんですかね、それが俺らなんですけど」

「衛人はともかく御三方は妖怪相手の専門家じゃないんですか?」

「俺もどっちかっていうとそっち側ですよ!」


 大声出すなっつってんだろ。俺が猫神使に嫌われたらどうする。

 それとモブに面倒事を持ち込まないで、お願い。

 お急ぎでない方、毛色の変わった此の物語をまだ読んでも構わぬとお思いの方、向後に期待してやろうという方、よろしければ更に下にスクロールして広告下の白星を「ぽちっと」押してやってくださいませんか。


「ぶっくまーく」などもお気が向きましたらお願いいたします。


  評価をいただければ、七海が喜んで通報をものともせずに五体投地でお礼に参ります。

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