参之弐拾陸 モブ、初作業で一発OKが出る
退院しました!全快とはいきませんが60%復活くらいの状態です。ご心配をおかけしました。娑婆の飯うめえ!
入院中に勢いで書いた短編を投稿しました。あとがきをご覧くださいませ。
「俺、七海さんって、いわゆる生産無双系かと思ってました」
寅吉八番こと、衛人が作業中に突然そんなことを言ってきた。
生産無双。いい響きだな、でもそれって模型もロボットも関係ないよね? あれって大体が第一次産業だったような。
むしろ今の俺は普通の根付細工と模型関係しかできることはない。ついさっき、さよちゃんとこに入門すらできなかったところである。
「いや、八番が剣術無双で七番が生産無双ってバランスいいじゃないですか」
「お前、無双できるほどの剣の腕なの? 江戸時代にも剣豪やらそれなりの剣士やらいるでしょ? それこそお前の何代か前のご先祖様とか」
衛人の顔が暗くなり、そのまま俯いてしまった、図星でしたか、ごめん。
15歳やそこらの腕で無双できるほど、この時代は甘くはないだろう。帯刀してる階級が普通にいるんだから。もちろん同年代相手なら衛人が頭一つ抜けて腕が立つんだろうけど。
「正直クマラさんにも勝てないです、それこそ一太刀も当てれないです。俺、自分が思ってたより雑魚くて凹んでます」
「落ち込んでる衛ちゃんかわいい!キュンキュンするから抱いて!もうすぐ身体出来るから!」
ははは、スライムちゃんは積極的だなあ。少しは応えてやれよ、衛人。ガチロリコンには過ぎた嫁じゃないか。いまんとこ、ただのぽよぽよした白い塊だけど。
「無理です七海さん。穂積はなんというか、家族みたいなものというか、生々しすぎるというか、洒落にならないというか、地雷臭が凄まじいというか。うまく言えないですけど、見た目うまそうな毒きのこみたいなもんです。手を出したら終わりなんですよ」
覗いて興奮してた相手に言いたい放題だな、こいつ。
「覗きはロマンですよ、七海さん」
ロマンという言葉の最悪の解釈を放つ豪傑。それ、現代日本じゃバレたら刑以上に重たい犯罪だぞ、主に社会的に。ちょっとは自覚しろ。
「よし、あとは組み上げて繋ぐだけぜよ、七海、左腕はできたぜよ?」
俺が担当してるのは左腕の肩から先、手首までだ。掌や指は仕込む術の下ごしらえが多くて、さよちゃん先生じゃないと無理だそうだ。ここらはコントロールが難しく、いざなぎの傀儡師でも簡単じゃないらしい。
「さよちゃん先生、こんな感じでどうでしょう?」
微妙な曲線を描く腕の模型をさよちゃん先生に見せる。図面通りにしたから問題ないと思うけど。腕を渡されたさよちゃん先生は自分の削った右腕と俺の削った左腕を入念に見比べる。
「ふむ、まあ及第点ぜよ」
やった、初作業なのに一発オッケーが出た。喜んでたらさよちゃん先生が持ってた腕の模型がぐにゃりと変形した。え?
なにやら呪文ぽいものを唱えながら手にした紙? 布? みたいなものを振ると木製の腕や足が突然柔らかくなり、関節らしきものができていく。なにこれ?
「さよちゃん先生、それなにしてるの?」
「呪力を込めてこの『比礼(ひれ」』を振ると仕込んでおいた術が発動するぜよ、この場合は関節が出来るように、ぜな」
「ほう、比礼を使うのか。いざなぎ流とは思ったよりも古い系統なのかものお」
「比礼を振って術を施すのは傀儡方だけぜよ。本流は御幣と祭文を使うぜな」
「ふむ、物部と関係があるのかも知れぬの。そういえばいざなぎの里は物部村といったか」
「そこまでは知らんけど、うちの近所は売るほど落人伝説が多いぜよ。田舎だからなー」
また俺にわからない話してる。
もののべってなんか昔の消えた一族だっけか、聖徳太子の戦の相手が物部氏だよね?だから飛鳥時代か。また古い話が出てきてるな。
「物部には強力な十種神宝と呼ばれる呪物があっての、そのうちの三つほどが比礼だったらしいのじゃよ」
「それをさよちゃんが受け継いでると?」
「いや、おそらく術の形式を借りただけじゃろう。さすがに残っておらぬじゃろうし、傀儡に施すものでもなかったようじゃ」
はー、なんか壮大な話だな。壮大すぎて筋が通ってるのかどうかもわからん。高校の同級生のオカルト君、こと岡本君に聞かせてあげたい話だ。そういやあいつ、陰陽師になりたいとか言ってたな。クールビューティーか鳥さんでも紹介してやりたい。そして親子喧嘩で幻滅するところを見てみたい。
「あ、ロリ絵師ちゃん! なんで胴体隠すの! そこはちゃんと見せて!」
衛人がなんか騒いでやがる。首もない裸がそんなに見たいか。さすがのサイコパスだな、欲望に正直すぎて引くわ。頭に体のデータ入ってるよね?
「ほれ太歳、こっち来るぜよ。体をやるぜよ」
さよちゃん先生が首を持ってスライムに手招きする。ショートカットの勝ち気美少女な首だ。
「あ!僕の顔だ!」
ほう、これがスライムちゃんのお顔ですか。衛人が襲ってないのが不思議なくらいに可愛いな。
いそいそと寄っていくスライムちゃんに向かってパカリと頭を開けるさよちゃん先生。
「ここに入るぜよ。そしたらあとは体と繋ぐだけぜよ」
え? そんなパイルダーオーンな感じでいいの?
「衛ちゃん、もうすぐだよ!」
「あ、首ついたらもう駄目だわ。ボディーだけもっと堪能したかったわ」
最低だな、こいつ。大僧正、繰り返しますけど、こいつが英雄豪傑でいいんですかね? お姉様方も見て見ぬ振りも限界じゃないですか? こいつと対って嫌なんですけど。
「前にも言ったが神仏の決められたことじゃからのう」
「このくらいなら可愛いものよお」
「一線は越えておらぬしな」
「彼の法教団に比べたらこのくらいねー」
皆の反応、鈍すぎませんか?
それと彼の法教団ってなに?
「七海、ぶっくまーくが増えておったぞ。ありがたいことじゃ、お礼に伺うと良い」
「オッケー! 年も開けて久々の五体投地ですね! いや、清々しいなあ! 今回はスニーキングミッションですよ! 公僕には姿すら認識させませんよ!」
「相変わらず目的を履き違えておるようじゃのう」
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「ぶっくまーく」などもお気が向きましたらお願いいたします。
評価をいただければ、七海が喜んで通報をものともせずに五体投地でお礼に参ります。
「ハハッ! 通報すらさせねえよお! ヒャッハー!」
短編を投稿しました。ぜひご一読ください。
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