参之弐拾参 モブ、寅吉候補の体を作り始める
「では七海よ、門外不出のいざなぎ傀儡方の秘儀、おんしに授けるぜよ。わかってるだろうけど口外まかりならぬぜな」
「秘密ってことですね、はい、漏らさないことを誓います」
「うむ、良い良い。では早速…」
そこからは物凄い勢いでいざなぎ流の傀儡の説明をされた。霊木と中に入れるもの、この場合はスライムちゃんの魂、の経絡をいかに一致させるか、表層感覚や各丹田の設定、感覚と実際の動きの修正法とか、今回以外に役に立たない知識をたくさん教えられた。教えられても今後使う機会なんかないよ。でもさよちゃん先生の手伝いぐらいはできるかな? そのくらいの理解はできたと思う。
「あ」
「あ、来たぜな、姿の詳細が」
俺のとこにはスライムちゃんの人間姿の頭部と手足の詳細が記憶に焼き込まれた。大僧正、こんなことできるのか。脳に直接書きこめるとかヤベーな、さすが半分仏様。
「なるほどなるほど、ここはこうなってるのか」
衛人が鼻血流しながら恍惚としてる。
こいつは今後は放置のまま進めていく。いちいち関わってられない。お姉さま方、衛人はお任せしますね。
とりあえず木工の手伝いにかかる。足踏み式のこれは旋盤?
「轆轤ぜよ! 腕や足のザッとした形を出すのに使うぜな、よし、弟子よ、回して削り出せ!」
「轆轤って焼き物に使うやつしか知らないんだけど、これ、どう使うの?」
「は? これの使い方を知らんとは、それでも木地師の端くれぜな?」
「いえ、木地師じゃないです。さよちゃんに弟子入りした形だけど、俺は木地師じゃないです。あえて言うなら小間物職人です」
チッとあからさまに舌打ちしながら、さよちゃん先生が割った材を横にした格好で固定していく。よく見ると材の天地を挟むように、固定用の刃先が何本かろくろから出てる。それに打ちつけて、左右から挟み込んで固定されてる。
そして足踏みのペダルを踏めば、ギュルギュルと材は回転し、刃を当てれば削れていく。こけしの削り出しも確かこのやり方と同じだったはずだ。
この固定と回転を機械でやれば旋盤と呼ばれる装置になる。木工の轆轤って面白いな。これ覚えても俺の仕事じゃ使う機会ないけど。まあいいや、スライムちゃんの腕から削り出すか。
「さよちゃん先生、とりあえずは大体の形でいいんですよね。関節は作らないんですか?」
「術で曲がるようにするから、今はいいぞ、太さはちゃんと図面と揃えるようにな」
図面というか、サイズ感の詳細が焼き付けられたから、間違いようがない。これを間違うとしたら、それは俺の腕が悪いからだ。
普段作らないサイズだから緊張する。いつも細かいものばっかり作ってるからね、
逆に言えばこの大きさならそうそう失敗はしないはず。
ただ、調子に乗って削り過ぎるのは気をつけねば。無になって脚のおおまかな形を削り出していく。
俺の横にいる、物欲しそうな顔をしてるガチロリコンと、それを捕食してるスライムの視線さえ無視すれば、今までやった事のない作業はとても楽しいです。
精神的にものすごく疲れる作業でした。
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「ぶっくまーく」などもお気が向きましたらお願いいたします。
評価をいただければ、七海が喜んで通報をものともせずに五体投地でお礼に参ります。




