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このEDOはフィクションです  作者: 石依 俑
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参之弐拾 モブ、スライムはロリ寅吉だったと知る

「この太歳、儂が預かる」


 おや、大僧正。どうなさいました? てか、いつの間にいらしたの?


「なにすんだ、あ、こら、持ち上げるな、この小坊主! 僕と衛ちゃんの仲を引き裂くんじゃない!」

「早速あだ名で呼ばせてるの? 出会ったばかりのスライムにあだ名で呼ばせる、そういう性癖が衛人にはあるの?」

「やめてください、俺はノーマルです。ところでこちらの小坊主さんは?」

「お主を召喚したものじゃよ。天海と呼べばよい」

「この方は大僧正だよ。ここじゃ皆さんが大僧正って呼んでるからな。衛人、間違っても気安く天海とか呼ぶなよ、正直、江戸じゃこの方より偉い人は将軍くらいしかいないからね? 下手したら将軍より偉いかも。この方が寛永寺組のトップと言えばわかる?」


 軽く大僧正の立場を説明すると、スッと土下座る衛人がいた。なかなか美しい、いい土下座だ。体幹の強さを感じさせつつ、スムーズに重心を移動させながら、媚びるような、おもねるような卑屈さも随所で表現されている。

土下座三段の俺から見ても、無意識に相手に気を使わせる、隙のない土下座だ。これなら五体投地も少しの訓練でものにできるだろう。


「ところで大僧正はなぜここへ? そのスライム? 太歳がなんかあるんです?」

「こやつはこう見えて寅吉なのじゃよ。巻き込まれ寅吉とでも言おうか」


 このプルプルが俺らと同じ寅吉? しかも巻き込まれ?


「さすが大僧正、何言ってるか全く分かりません」


 月一くらいで理解できないことが起こるの、いい加減にやめて欲しい。


「おい! 僕を無視して話を進めるな! 衛ちゃん、何か言ってやって!」

「いや、そんなことスライムに言われても…誰なんだよお前」

「僕だよ、いつも道場でいやらしい目で見てくるじゃないか! 知らないとは言わせないよ」


 こいつ、スライムをやらしい目で見てるのか…。リアルに去勢した方がいいんじゃないかな。


「誤解です! スライムに劣情は催しませんよ、俺はロリひと筋です。例えばさっきのキツネ巫女さんとか! あっ! 黒い靄が俺を縛る! やめて痛い怖い! それよりもだ、おいスライム、今、衛ちゃんと呼んだか? 俺を衛ちゃん呼ばわりしてくるとは、お前、ひょっとして門下生の穂積か? 今日は道場に来る日じゃないよな?」

「そうだよ! 衛ちゃんの幼なじみで可愛い妹弟子の穂積だよ! 朝からこっそり衛ちゃんを覗いてたらこんなことになっちゃったんだよ」


 なんか新たなカオスがうちの玄関先に生まれてる。すいませんが、大僧正、解説プリーズ。


「英雄召喚の折、近くにいたアメノトリフネの加護を受けておった娘が巻き込まれたのじゃ。その娘はいわば寅吉候補での。その娘が八番の召喚術の余剰分でこちらに来てしまって、たまたま近くにいた太歳を器に魂が宿ってしまったと、そういう訳じゃよ」

「いや、わかんないです」


 衛人にストーカーしてたロリがたまたま寅吉候補だったと。そんでそのストーカーが衛人の召喚の巻き添え食ってこっちに来たら、そこのスライム、もとい太歳に取り憑いちゃったと。なんで太歳なんかに取り憑いちゃったの?


「一応太歳は自我はないが神獣なのじゃよ。ギリギリ寅吉の器として使えなくもないようだの。使おうと思ったことはないが」


 神獣なのか、このポヨポヨしてるの。


「衛人、慕ってくれる子がいたんじゃん。この子は好み的にはどうなの?」

「衛ちゃんは僕くらいの年頃と成長具合がストライクって言ってたよ! いつもチラチラ見てくるんだ、着替えを覗いてたのも知ってるよ!」

「お前、割とマジで最低なのな。預けてくれてる親御さんに申し訳ないとか思わないの?」


 衛人がみんなの冷ややかな視線を受けて社会的に死んでいく。まだお若いのに気の毒な。


「衛ちゃんならいくら見てくれてもいいんだよ! なんなら触っても、その先でも表沙汰にはしないよ」

「これはこれで怖いな、この子」


 好きな相手を無意識に犯罪者にしそうだ。


「怖くて重いんですよ、わかります? 俺がストーカーってならまだわかるんですけど」


 それもどうかと思うけど、まあ言いたいことはわかる。ロリコンとロリなら前者がストーカーになるのが自然な話だわな。


 それがなぜかロリがロリコンのストーカーでグイグイ前のめりで来てる。ものすごい地雷臭を振りまきながら。


「大僧正、この子に体の用意できないんですか?さすがにこのプルプルボディはかわいそうじゃないかと」

「材料も足りぬし、術を施すにも今からではいつになるか……。あれで土御門も忙しいからのう」

「衛人、お前はどうしたい?この子、このままほっとくの?お前のこと、どっかで知って仲間になりに来たんじゃないの?」

「穂積はそりゃかわいいですけど、手を出して一生を過ごす相手としては考えられません。ここの親怖いし、親同士が仲いいから半端に手を出せないし」

「最低な理由だけど、理性の代わりにブレーキがかかるのはいいことだな」

「そういえばここには傀儡師がおったの、いざなぎのさよはおるか?」

「今は絵の修行に通ってますね」

「そうか、帰ったら寛永寺に来るよう伝えてほしい」

「わかりました。俺で役に立てるなら言ってくださいね」

「そういえばお主も木工ができたの。その折は頼むとしよう」


 さよちゃんは木工の里(木地師の里ってそういうことだよね?)出身の呪術師だから、きっとあの河童みたいにダミーの体作って、そこに魂を入れさせるつもりなんだろう。なら俺も造形的に少しは役に立てるだろう。いや、技を盗もうとか、知らない加工技術を教えてもらおうとか、そんなことは毛ほども考えてない。ろくろで木を加工するのは見てみたいけどな。

お急ぎでない方、毛色の変わった此の物語をまだ読んでも構わぬとお思いの方、向後に期待してやろうという方、よろしければ更に下にスクロールして広告下の白星を「ぽちっと」押してやってくださいませんか。


「ぶっくまーく」などもお気が向きましたらお願いいたします。


評価をいただければ、七海が喜んで通報をものともせずに五体投地でお礼に参ります。

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