参之参 モブ、八番がやばくて戦慄する
八番が召喚されてきた。坊さんたちと大僧正を見て狼狽えてる。
いいな、俺もこういうわかりやすい、安全な場所で狼狽えたかった。
少なくとも最初にお白州じゃない所に行きたかったぜファッキン。
見た感じは中3か高1くらい? 背は俺より低めだが、短髪で目元涼やか。なかなか引き締まった身体してる。木刀持って袴履いてるのは稽古中だったからか。
あ、平賀のおっさんが説明に向かった。八番君とやり取りしてる。時折、大僧正がフォローに入る。
しかし堂々としてんな、この子。もうちょい無様に狼狽えようよ。俺ぐらいにはオロオロしようよ。ほら、平賀のおっさんの説明は、脳みそ痒くなるほどにわかりにくいでしょ?
「真行衞人よ、お主にはこの世界で英雄豪傑として活躍してもらいたい」
「英雄豪傑ですか?」
「うむ、鹿島心鏡流 次期宗家のお主には布都主神と摩利支天の加護があるからの」
家が剣術の宗家なんだ。次期鹿島ナンチャラ流宗家か、すごいスペックの来たな。八番だから名前は衛人? 俺といい名前に洒落入ってる? わざわざ選んでませんよね?
鹿島の神って剣術の神様だっけか。摩利支天? の加護もあるんだ。俺の加護とだいぶ違うね。俺のは面白ホイホイ & 鼠除けだけど。
「えっと、こちらはいわゆる剣と魔法の世界なんですか?」
「剣は剣じゃの、魔法というのは分からんが、呪力は分かるかの?」
「はい、うちの流派では“ス”と呼んでます」
チクショウ、こいつも呪力持ちかよ。じゃあお前の元々の世界が剣と魔法の世界じゃん。いい加減、俺の低スペックをどなたか、なんとかしてください。
「ふむ、法力も修行次第で使えそうだの、なかなか有望じゃ」
法術も鍛えたら使えるとか、主人公補正効き過ぎじゃね? オーディエンスの坊さんたち、盛り上がってんなあ。いいなあ、でもこき使われそうだから俺は現状でいいや。大魔法とか必殺剣は憧れるけど、めんどくさそう。
「ところでここは一応、江戸なんですよね、人に斬りつけても大丈夫ですよね?」
「ダメじゃぞ」
「なんでですか!」
どうやら剣術を学んでも実際に使えないことにストレスを感じてたらしい。やだ、この子、ナチュラルボーンキラー?
「剣術なんて人斬らないと意味ないじゃないですか! せっかく斬り放題だと思ったのに!」
こいつ、やべえ。人斬り願望はやべえ。
「この子に剣を仕込めばよろしいのお?」
あ、山伏のお姉さんが来た。この素晴らしいムチムチボディで仕込むんだ。仕込まれるんだ、なんていやらしい。
「お主の牛若を仕込んだ腕を買ってのことじゃ。当代一の遣い手とは言わぬが、怪異、妖異に立ち向う術を教えてやっておくれ」
今、牛若って言った? 義経の牛若のこと? ハハッまさかね。そういう二つ名の誰かさんがいたんだろう。「現代の牛若丸」とか、地方プロレス団体にいそうじゃん。多分、空中戦が得意なベビーフェイスだな。
「衞人よ、あそこに若いのがいるじゃろう。あれがお主と対を成す寅吉七番じゃ」
「え、あのモブっぽいのが?」
うるせえな、モブとして選ばれたモブ中のモブとは俺のことだよ。モブがジョブだよ、文句あんのか。
「気にするな!七海よ、お主はお主のままでよいのじゃ!」
「あ、キツネ、いつの間に来てたの?」
「お主と八番がこの世だけではない、全ての世の行く末を決めるのじゃからな、妾も検分に来るぞよ!」
ムフーと得意げに息を吐くキツネ。こいつはこいつで役目を全うしようとはしてるんだよな。仕事の邪魔は許さんが。
「うわあ! ロリ狐巫女さんだ! ご褒美ですか? ご褒美ですね! ありがとうございます! いただきます!」
八番がめっちゃ興奮してる。キツネ、お前、なんかした?
「なんなのじゃ! あいつなんなのじゃ!」
目をギラギラさせた八番が迫ってくる。キツネがなんかした訳じゃなさそうだ。むしろ混乱してるというか、見たことないほど怖がってる。
「あなたが僕と対になる先輩ですね、よろしくお願いします。ところでこの江戸に淫行条例や児ポ法はないんですよね? ロリとあれこれしても捕まらないんですよね?」
いつの間にか俺の手を掴んで、めっちゃ早口で質問してくる衞人。
大僧正、こいつ至急送り返した方がいいです!
ガチでやべえ!
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