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このEDOはフィクションです  作者: 石依 俑
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参之壱 モブ、寅吉八番の召喚に立ち会うことになった

今回から新章です。寅吉八番がやって参ります。

 そんなこんなで、お江戸に来て一月ほどが経ちました。相変わらず長屋でお妙さんにお世話されて、ご隠居さんに根付卸して、猫神使をモフったりおやつあげたりして過ごしていた。猫神使は新宿のお社に時々帰ってらっしゃる。うちがホーム扱いかよ。


 いやー、ストレスフリーだわ。ネット使えないのと、キツネ来るのと、夜暗いこと以外はもう慣れた。


 この体の仕組みももう、便利だな、ぐらいにしか思わなくなってきた。刃物で怪我しても血も出ないから、逆に戻ったとき油断しそうで、そっちの方が怖い。気をつけねば。


 俺の作る根付はご隠居さんと平賀のおっさんが組んで、いつの間にか、仙境の寅吉ブランドとして江戸の粋人が挙って大金で求めるものになってた。

 ブランディング戦略怖い。江戸の粋人の財力も怖い。ぶっちゃけめっちゃ儲かる。おっさん、広告代理店だって言ってたな。なんか上級向けキャンペーンでもしたんだろうか。


 それにご隠居さんの口利きで根付用の細工刀、左刃も鍛冶屋で打ってもらった。


 これが慣れたら捗る捗る。材を両手で握り込んで彫れるように左側に刃がついてるんだが、さすが専用工具、硬い材に細かい細工する前提で作られてるから、柘植程度ならサクサク彫れる。これなら象牙や骨でも彫れるわけだわ。一般的な根付もご隠居さんのところで鑑賞させてもらったら、こっちの職人の凄さを知っただけだった。精進せねば。


 暮らしに慣れてきたら、一端の江戸っ子としましては風呂屋は欠かせない。湯屋っていうんだって。飯抜いてでも風呂入る馬鹿もいれば、一日4〜5回入る馬鹿もいるらしい。そんで脂分抜けてぱさぱさになったのを垢抜けた、って喜んでるらしい。垢抜けるってそういう意味だったのかよ。俺は垢や脂は出ないから湯屋に行く必要もないんだけど、気分だよ、気分。この体、髭すら伸びねえ。メンテナンスフリーかよ、便利だな。


 湯屋にも最初は驚いた。なにせ混浴ですよ、番台が隅にあって男女の区別がない。大丈夫ですか、お江戸の公序良俗。下半身は隠せてるけど、老若男女問わず、上はおっぴろげてらっしゃる。


 おかげで初めて会った時からひょっとして、と思ってたお妙さんがロリ巨乳だと確認できてしまった。知るつもりがなかったのに、知れてしまった。


 俺は悪くない、嘘ですごめんなさい。でも同じ長屋だから、同じ湯屋に行くのは仕方ないことですよね?


「七海さん、見ましたね?」

「見る気はなかったんですごめんなさい」


 平身低頭とは今の俺のためにある言葉だろう。そう、土下座ってます。嶋田さん以来だから一ヶ月ぶりくらいかな? 土下座って久しぶりにすると本当に清々しいものですね!


 湯屋にはロリと熟女と婆さんばっかりで、お姉さまがいないのはなんでだろう。一人くらいいてもいいと思うんですけど、なんか俺の加護が邪魔したりしてないよね?


そんな風に穏やかに暮らしていたら平賀のおっさんから明日の五つの刻に寛永寺本堂に集合な、と伝言が届いた。なんだろね?


「来たか、七海」

「いや、呼んだのそっちでしょうよ」

「じゃ入るぞ、大僧正はもう本堂で準備を終えられてる」


 なんの準備だよ。


「あ、言うの忘れてた。今から寅吉八番の召喚がはじまるんだよ」

「俺、関係なくないですか?」

「お前さんと対になるんだから一応顔出しとけって大僧正がな」

「じゃ仕方ないですね」

「お前さん、大僧正には素直だよな…」


 そりゃ俺の根付で荒稼ぎしてる人と半分仏様じゃ仕方なくない? ところで八番か、確か英雄豪傑が来るんだったっけ? 俺とは対局の存在なんだろうな。さぞアグレッシブなんだろう。

お急ぎでない方、毛色の変わった此の物語をまだ読んでも構わぬとお思いの方、向後に期待してやろうという方、よろしければ「ぽちっと」押してやってくださいませんか。




「ぶっくまーく」などもお気が向きましたらお願いいたします。




評価をいただければ、七海が喜んで五体投地でお礼に参ります。

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