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このEDOはフィクションです  作者: 石依 俑
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弐之拾陸 モブ、鳥さんに生理現象の説明を受ける

「ふむ、そうなると保憲殿。説明願えるかの? 儂は護法は使えるが、式神は不調法での」

「ぴっ! 承った、大僧正」


 鳥さん、まだいたんですね。あれからずっとこっちにいたの? 俺が心配するこっちゃないんだろうけど、本業は大丈夫なんだろうか。


「さて、寅吉七番殿、式とはなにかご存知か?」

「全然わかんないっす。なんかこう、妖怪を使い魔にしてるとかそんな感じですか?」


 顎に手羽先を当てて、なにやら考え込んでおられる様子の鳥さん。俺はなんか変なこと言っただろうか。普通に妖怪みたいなのがいる、この世界こそが非常識なのだと自覚してほしい。


「式神はこの世の理外から喚ぶものであってな、まずは器を用意せねばならんのだよ。それは符であったり、また陣であったり、人形であったりな。土御門の始祖、安倍晴明は無造作にちぎった葉に式を込めたというが、そのようなことはそうそうできることではない」


 何? 俺今『陰陽道における式神概論』みたいな講義受けてるの? 通しで理解したいんじゃないんですよ、ざくっとした概要を知りたいんですよ、文系舐めんな。結論まとめたレジュメみたいのないんですか?


「ちなみに寅吉七番よ、黄泉戸喫よもつへぐいは知っておろうか?」


 知らねえよ。鳥さんの常識は誰にでも通じるものじゃないんだよ、専門馬鹿はこれだから困る。うちの大学の文化人類学の教授かよ。


 講義中にさも当たり前の知識のように「レヴィ・ストロースの晩年の思考は、パロール・ドネの講義内容の変化を見てもわかるように」とか言い出すんじゃねえよ、わからな過ぎてノートも取れねえよ。こちとら学部1年生なんだ、そういうヘヴィなのはベテラン院生に向けてやりやがれください。興味半分で講義取ったら開始10分で後悔するってどういうことだよ。


「あの、出来るだけざっくりした説明でお願いします」

「黄泉戸喫はな、黄泉の国で飲食をしたら帰れなくなるということでな」


 ダメだ、方針変える気ねえな、この鳥さん。


「要するに飲食はその世界へ紐付けられる条件の一つなのだ」


 ごめん、鳥さん。ざっくりした説明を心がけてくれてたんだね。


「大僧正の土砂加持を施した辰砂はとても霊的に質が高い。高いゆえに弊害もあってな。我らの喚ぶ式が耐えられずにすぐ土砂に戻りかねん」

「こわっ! 俺崩れるの? ドシャっと?」


 土砂だけに。ってやかましいわ!


「そこでいろいろ試したのだが、飲食でこの世に関係づけるのが最も効果が高かったのだ」

「なるほど、それで腹減るんですね」

「いや、それとは関係はない」


 ん?


「寅吉を迎えるにあたり、罪人の魂を使っていろいろと試行錯誤したのだが、ただ器に魂を移しただけでは日を置かずに狂死してな。おそらく自分の知る体と違いすぎたのだろう。魂と体の乖離が原因かと思っておる」


 んん?


「しばらく人に憑かせた式神を辰砂で器にし、ようやっと魂を定着させることができたのだよ。習慣とは恐ろしいものだな」


 んんん? なんかサラッと罪人の魂を使ったとか、ずいぶんマッドな話が出てきましたよ? 大僧正、あなた半分仏様なのにそれでいいの?


「当然儂も協力したのじゃが、死罪の決まった罪人とは言え、人の子。無理矢理に魂を使うなどありえぬぞ? 納得の上、実験に協力してもらったのじゃよ」


 どんなメリットあったら魂使わせるんだよ。


「閻魔殿と話してどんな刑が決まっても責め苦の期間を半分にして貰う約束を取り付けたのじゃよ。生前供養とでも言えばいいかの」


 この人まともだと思ってたけど、やっぱこの世界の住人だわ。倫理観がバグってる。てか、閻魔様と話して刑期の調整できるってどんな存在だよ。


 半分仏様だったわ。

お急ぎでない方、毛色の変わった此の物語をまだ読んでも構わぬとお思いの方、向後に期待してやろうという方、よろしければ「ぽちっと」押してやってくださいませんか。


「ぶっくまーく」などもお気が向きましたらお願いいたします。


評価をいただければ、七海が喜んで五体投地でお宅に参ります。

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