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このEDOはフィクションです  作者: 石依 俑
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弐之拾陸 モブ、自分の体のおかしさに今更気づく

遅れました、すいません。キャンプとかしてないです。

 早くもお江戸での生活が一週間になりました。ここ二日ほどは作業に集中してるんだけど、俺、おかしくない?


 なにがおかしいって、排泄という欲求がないんですよ、食うもん食ってるのに。飲むもん飲んでるのにも関わらず。

 食欲は普通にあるし、喉も渇く。だのにないんですよ、排泄欲が。性欲はあるけど、セルフバーニングした後、ナニが出ない可能性すらある。恥ずかしいのでまだ試してません。


 そういえば長屋での最初の夜、酔ってそのまま寝たのに蚊に食われなかった。今もその辺飛んでるのに俺に止まりもしねえ。俺、生きてるの? ひょっとして死んでるんじゃ?


 作業ミスってナイフで指切っても血が出ない。痛みがあるのが逆に不気味だわ。ほんとに生きてる? 死にかけてて夢見てるとかじゃないよね? 怖いよこの体。


「と、いうわけで疑問の解消に来ました」

「突然じゃの」


 いつもの奥の間で笑う大僧正。いや、笑わないで。俺、怖いの。なんなの、この状態。今頃気付く俺もだいぶアレだけれど。


「簡単な説明はしたはずじゃが、忘れておっても仕方ない。色々あったからの。少し詳しく話すとしようかの」


 そうです。やっと一週間経ちましたけど、まだまだこの世界の初心者なんすよ、俺。すんませんけど、ご説明プリーズ。


「お主は仮の体に魂だけが入っておる、と説明はしたの?」


 そんな話されましたっけ? されたんだろうね。


「すいません、怒涛の展開でもう覚えてないっす。たぶん最初の頃ですよね?」

「良い良い、その疑問は当然じゃろう。今までの寅吉の順応が早過ぎただけじゃし、ただでさえ七海は数日で凄まじい経験をしたからの、無理はない」


 現世じゃトップクラスにお偉い方でしょうに、解説役させてすいません。


「まずお主ら寅吉の体は、土砂加持を施した辰砂しんしゃで出来ておる」


 ほら、またわからない話する。それともひょっとして、これは江戸じゃ誰にでもわかるような話なんだろうか。あー辰砂ねーみたいな感じに。


「その説明で普通の人はわかるんですか?」


 それとも俺の世界でもみんなわかるんだろうか。だとしたらお恥ずかしい限り。教養が足りてない。


「いや、わからぬだろうの」


 良かった、俺は常識知らずじゃなかったよダディ。


「簡単に言うと…そうじゃの、みずがねは知っとるかの?」

「みずがね、ですか?」

「そう、水のように流れる銀なのじゃが」

「俺らが水銀と呼んでるものですかね?」

「おそらくそうじゃろう。そして辰砂というのはの」


 大僧正が語ってくださるに、その辰砂は水銀を豊富に含んでいて、錬丹術とかいうものに使う材料らしい。また土砂加持と呼ばれる密教の術と非常に相性がいいらしく、よく使われるものらしかった。そういやこの方、元々は密教の空海だった。


 その術をかけた辰砂に陰陽師が式の術で器として形成、魂を召喚して寅吉のできあがり、と。


 なるほど、俺が召喚された時に、平賀のおっさんが納得行ってない顔で説明をしていた理由がよくわかった。こんな世界観、誰もまともに説明できんわ。


「密教と陰陽道が協力して器を作って、それに憑依して俺がここにいることはわかりました。わかりませんけど、わかったことにします」

「正直じゃの。まあそういうことじゃ」


 この体、器なのになんで腹減るの。喉渇くの。そんで飲み食いしたものはどこ行ったの。


「中身の仕組みに関しては陰陽道の管轄での、わしにはわからぬのじゃ」


 縦割り行政みたいなこと言わないで!

お急ぎでない方、毛色の変わった此の物語をまだ読んでも構わぬとお思いの方、向後に期待してやろうという方、よろしければ「ぽちっと」押してやってくださいませんか。


「ぶっくまーく」などもお気が向きましたらお願いいたします。


評価をいただければ、七海が喜んで五体投地でお宅に参ります。

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