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このEDOはフィクションです  作者: 石依 俑
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弐之拾壱 モブ、帝にも知られてた

「ぴーぴっ、ぴぃぴーっぴ、ぴーひょろーぴっ、んっん、うん!」


 鳥さんが鳴き声の高さを高くしたり、低くしておられる。なんか喉の調節してるみたいにも聞こえるな。え? 鳥が咳払いした?


「大僧正、つつがなきや?ご無沙汰をしている」

「おお、陰陽のかみ、いつぶりであろうかの」


 うわ、鳥さんが喋った! きれいな鳥さんがおっさんの声で喋るって、違和感も絵面もひどいものがある。声が妙に渋いのもなんか腹立つ。


「寅吉七番殿は初めてであるな。式神越しで申し訳ないが、そこの陰陽師の上司で陰陽おんみょうかみ、土御門保憲(やすのり)と申す」

「あ、はい、初めまして?」

「うちの陰陽の介が迷惑をかけておらぬか?」


 おんみょうのすけ? ってお姉さまのことかな?


「はい、大変、目の保養をさせていただいてます。属性のオンパレードで見ていて飽きません」

「さすがは仙境の寅吉。何を言ってるか皆目わからぬ。それにしても聞いた通り、穏やかではない」

「え、穏やかじゃない? どこら辺が? あ、床がネトネトだから?」

「こちらの話なので気にされぬよう」


 お姉さまが恐る恐る鳥さんに話しかけようとする。


「あの、おかみ、どの辺から聞いておられましたか」

「寅吉殿が神使といざなぎ太夫と水虎と入って来られた時にはここにおった」


 お姉さまのきれいなお顔が見る間に般若の形相へと変わっていく。怖い。


「それ最初っからやん! おるならおる、うてえや! お父ちゃんはそうやってすぐ気配消す! その癖やめてっていっっつもうてるやん!」


 え、お父ちゃん? お父ちゃんと言われましたかクールビューティ。いやこれはどちらかというとじゃりん子か。まだ新属性の引き出しがありましたか。それはそれとしてお姉さまの関西弁ってなんかいいよね。


「大恩ある朝廷と幕府に何を申しておったか! しかも大僧正相手に愚痴などと! そこに直れ!」

「しゃあかてお金ないのはホンマやん! 官位はあるけど実入りはどんだけもあらへんやん! 官位でお腹は膨れへんねんで!」

「黙れ! お前は鳴き合わせに金を浪費してるだけであろうが! この間も琉球の蛇の粉が声にいい、などと騙されて大金を払っておったろうに!」

「娘の趣味にいちいち親が絡むな!」

「貴様! いやお前、ほんま大概にせえよ、陰陽道宗家の自覚あんのんか!」


 あの、大僧正、なんかめっちゃ親子喧嘩が始まってますよ? この方達、陰陽師のお偉いさんなんですよね? ところで喧嘩の原因っぽい鳴き合わせってなんすか?


「鳴き合わせは、うぐいすなどの鳴き声勝負の賭け事だの」


 あー、このお姉さま、賭け事に全力ブッパのタイプでしたか。そりゃお金なくなるわ。お父さんもたしなめるわ。


「寅吉殿、このお菓子美味しいぜよ!」


 水饅頭を食べるさよちゃんが報告してくれる。美味しいですか、良かったですね、キミ動じない子だね。


「寅吉十二番こと平賀源内、まかり越しました……大僧正、これは一体どうされました?」


 平賀のおっさんが呼び出されてやってきた。

 そこで見たのは、菓子食ってる見知らぬちっこい子、親子喧嘩してる鳥さんと陰陽師、ネトネトした畳、まだいるキツネ。呼び出されてこの有様じゃ聞きたくもなるよね。これでも河童が帰った分、カオス成分は減ったんですよ。


「七海、お前さんか?」

「なんで俺? まあ原因は俺っぽいですけど」

「昼前、うちに来たよな?それからなにがあったらこうなるんだ」

「ええと、合羽橋で河童に会ったら結果的にこうなりましてね?」

「さっぱりわからねえ」


 ですよね、当の俺がわからないんですもん。説明できるのは…ちっこい子は論外、鳥さんとお姉さまは絶賛喧嘩中、と。ならば。


「俺にもわからないんで大僧正かキツネ、説明をお願いできますか?」

「よかろう、妾が説明してやるのじゃ」

「若一様も関係なさってるんですか、お願いします」


 おほん、とおっさんに向かって咳払いするキツネ。得意げにチラチラこっちを見る。うぜえ。


「良いか、この事態は七海の『御中主様が興味を持ったモノと強引に縁を結ぶ』加護が関係しておるのじゃ」

「このお菓子、おかわりほしいぜよ!」


 水饅頭をおかわりしてるさえちゃん以外、一同が静まりかえる。


「若一様…それまだ言ったらダメなやつじゃ…」


 頭を抱えるおっさん。

 あ、と両手で口を抑えるキツネ。

 あれか、さんざん大僧正が勿体ぶって言わなかった俺の加護の中身か。ポロリしちゃったのか、このキツネ。と、いうか、おっさん含め、関係者みんな知ってた? 鳥さんまで唖然としてる。


「え? 天之御中主之神……?」


お姉さまはなぜか、放心なさっておられる。


「あの、鳥さん。鳥さんの本体は江戸じゃないんですよね?」

「ぴっ?」


みやこから、とか大僧正言ってたよね? 鳥っぽい返事が聞こえたけど気にしない。


「ごほん。左様、京から式を打っておる」

「そんな遠いところにも俺の加護が、というか、段取りというか、なんというか。そういう事が伝わってるんですか?」

「寅吉計画は日の本全てに関わることゆえ、朝廷にも詳細は知らされておる。帝は祭祀を司る存在でもあるのでな」


なんだなんだ、えらい大ごとじゃないですか、天皇陛下が俺をご存知とか、初耳もいいところなんですが?!

「七海よ、喜ぶが良い。初めてぽいんととやらが入ったようじゃぞ」

「2ポインツww クソ雑魚いwww 作者ザッコ!www  ……大僧正、この分厚い手袋はなんですか? この肘にくくりつけられたクッションはなんですか? なんで俺の膝を縛って座布団をくくりつけてるんですか?」

「そのまま両手を合掌して高く挙げよ」

「こうですか?」

「そして膝をつき、勢いよく前へ倒れよ」

「えっ?」

「そして起き上がり、これを繰り返して前へ進む。これが五体投地という礼拝法じゃ。さあぽいんとへの感謝を表すのじゃ」

「えっ?」

「さあ、感謝を伝えてくるが良い」

「ええええええ?!」


お急ぎでない方、毛色の変わった此の物語をまだ読んでも構わぬとお思いの方、向後に期待してやろうという方、よろしければ「ぽちっと」押してやってくださいませんか。


「ぶっくまーく」などもお気が向きましたらお願いいたします。


評価をいただければ、七海が喜んで五体投地でお宅に参ります。

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