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このEDOはフィクションです  作者: 石依 俑
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壱之参 モブ、安心が遠い

「あのー、いま平賀源内と仰いましたか?」

「ああ、そうだな」


 おかしい。俺の知ってる源内じゃない。少なくともこんな劣化エグ○イルじゃなかったはずだ。


「あの、平賀源内って、あの、エレキテルとか」

「そうそう、その源内。まあこっちには存在しない人物だったからそう名乗ってるんだけどな」


 んんん?

 こっちには存在? しないから?? 名乗ってる??? 何言ってんの、このおっさん? ホイホイついてきちゃったけど、このおっさんはそもそも誰なの?


「とりあえず、今向かってる拠点に行こうや。詳しい説明はそこでする。いいかい?」


 いいもなにも、俺に選択肢はないのです。

 とりあえずここから早く離れたいのと、平賀と名乗るおっさんが何者なのか、わからないながらも、現状唯一の味方らしいので仕方なくついていくことにする。

 周りもろくに見ずに荷物を胸に抱きながら、黙って乾いた土の道を歩き続ける。


 我ながら実に小心者ぽくてキャラにぴったりである。それにしても埃っぽいなあ、この江戸っぽいとこ。あと犬のうんこ多い。


=============


 そうこうしながら1時間ほど歩いただろうか、大きく広い寺が見えてくる。


「さて、ここが俺らの拠点の一つ、寛永寺だ」


 まさかの上野の寛永寺かよ。大概でかい寺だと思ってたけど、こんなでかかったんかよ、上野公園並みに広いじゃねーかよ。

 平賀のおっさんは慣れた足どりで、近くの小さな寺へと入っていく。


 奥の本堂らしき場所を越え、さらに廊下を進み、やがて小さな部屋に入ると、おっさんに座布団を勧められる。

 ちょっと光ってる小僧さんがお茶を持ってきてくれた。

 この江戸みたいな所じゃ小僧さんが光るのか、勉強になる。あれ、なんかおっさんがギョッとした顔してますね。


「どうぞ、井戸で冷やした甘茶です。少しは落ち着いて頂けるかと」

「あ、お気遣いありがとうございます。い、いただきます」

「どうぞお上がりください」


  うっすら甘いお茶が喉に心地よかった。緊張が少し解けると、急に暑さを感じる。蝉がこんなに鳴いてたんだな。


「ここは寛永寺の塔頭の一つでな、普通のお侍は入るのに少しばかり憚られるとこだ。俺らみたいなもんが動くにはちょうどいいってなもんさ」


  また未知ワード出た。

  たっちゅう? ってなに? 知らない言葉多すぎるだろ、俺。


「あの、平賀さん、ここって江戸時代の江戸? なんですよね? 俺、タイムスリップしたってことですか?」

「さて、そこだ。追々説明していくから疑問があったら聞いてくれ」


 ちょっと光ってる小僧さんが部屋の隅でニコニコと座っている。この子、ここにいていいのかな?


「まずこれは時間遡行ではない、と言っておく」


 そうか、タイムスリップじゃないのか。

 え? これで? 正気?


「やっぱり壮大なドッキリですか?」

「それも違う」


 即否定された。もうドッキリでいいじゃない。俺に安心をくださいよ。


「お前さん、オタク趣味があるよな?」

「失礼な。模型はオタク趣味じゃないです。いいですか、そもそも始まりは英国のジョンブルどもが」

「後ろ暗いやつはだいたいそう言うんだよ。まあいいや、異世界転移といえばわかるか?」


 ばっさり話を切られた。

 確かに模型は暗い・モテない・有機溶剤の三拍子が揃っている趣味だがオタクではない。はずである。

 例えば俺の好きなロボットなんかだと、どうしても資料はアニメや漫画、ゲームに限られてくる。


 設定画を元にするか、作中の印象を元にするかで、ロボットのプロポーションが相当変わってくるので、どちらも抑えないといけないのは、仕方がないことなのだ。

 つらいわー、設定本揃えて、さらに本編見るのつらいわー。

 現実のロボットがもっと格好良ければ、ミリタリー物みたいに現実の方を資料にするのだから、アニメや漫画を見るのは仕方のないことなのだ。故に俺はオタクではない。Q.E.D。


 おや? なんか小僧さんがクスクス笑ってらっしゃる。なんで?


「まあ異世界物はわかりますが」


 オー◯バトラーとかオー◯スあるしね。

 最近じゃ異世界転生物のロボットもある。


「話が早くて助かる。で、ここはお前さんの過去に直結してる江戸じゃなくて、別の世界の江戸だ」


 なんと、タイムスリップものかと思ってたら異世界だった。SFじゃなくてファンタジーかよ。


「異世界召喚といえば俺TUEEEEとかハーレムとかチートが」

「お前さんにはないよ」


 話の途中で否定するのやめてほしい。俺に対する優しさが足りてない。


「世界が可能性によって分岐し続けてる、って話は聞いたことあるか?」

「なんでしたっけ、平行世界とか言いましたっけ」

「まあ呼び名は多元宇宙でも平行次元でもなんでもいい。その一つがこの世界なわけだ」


 うわーファンタジーから一周回ってまたSFに戻ってきたぞ。着地点どこだよ。


 しかし困った。もうすぐ当日版権の途中審査日なのに、せっかく作ってる原型がお蔵入りになってしまう。なんのためにエナジードリンク飲みながら徹夜強行軍をしたのやら。


 サークルのモテない先輩方、モテない同級生、モテないOBの皆様、ごめんなさい。卓に置く頒布物が一つ減ってしまいます。


 隅で小僧さんが はんけん?げんけい?はんぷ? と小さな声で首をひねっている。あれ、俺ひょっとして声に出してた?


「続けるぞ、まあ世界は分岐し続けてるんだが、そろそろリソース、これがなんなのかは俺も全くわからんが、とにかくリソースだ、これが足らなくなり始めてるらしい」


 なにその壮大な宇宙観。並行宇宙のリソースが足りなくなり始めてるから、俺がこちらにカモンナウ。

 いや、わかんねーよ。主に俺に関する因果関係が。


「で、その事に気がついた神仏が」

「神仏⁈」

「神仏だ。この世界は特に神仏の影響が強くてな、この世界を異世界人を受け入れるテストケースにしようということになった、らしい」


 どういうことですか。主に俺に関する(略


「なんで神仏の影響が強いとテストケースになるんですか? そもそもなんのテストケース?」

「そらお前、なんかあった時に直接間接に神仏がフォロー入れられるから、じゃない?」


 そこは言い切ろうよ。


「で、なんのためのテストケースかというとだな、リソースが足らないなら近い世界をゆるくまとめて、そのあと分岐を極力抑えればいいんじゃなかろうか、という結論になったらしい」

「らしい、とか、じゃない? ばっかりじゃないですか」

「仕方ないだろ。俺も結論だけ聞かされたんだもん。納得も理解もできてねーよ」


 神仏に結論聞かされたとか、このおっさんが正気かどうか疑わしくなってきた。

 やばいクスリがガンギマリでイルでドープなヴァイヴスとかじゃないですよね?


 色々わからんが、とりあえず疑問は飲み込んでおく。

 ではそろそろ核心に入らせてもらおうじゃないか。


「経緯はそれでいいとして---なんで”俺”なんでふかね?」


 やだ、噛んじゃった。


 此の世には「ぽいんと」と言うものがあるそうで御座います。

 下の方に御座います、清き白星を黒き星に変えることで作者めに「ぽいんと」なるものが入るようです。

お急ぎでない方、毛色の変わった此の物語をまだ読んでも構わぬとお思いの方、向後に期待してやろうという方、よろしければ「ぽちっと」押してやってくださいませんか。

「ぶっくまーく」なども気が向けばお願いいたします。

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