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このEDOはフィクションです  作者: 石依 俑
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弐之玖 モブ、クールビューティは結構ポンコツだったと知る

「そんな話とはなんぜな!」

「そうですよ、道具は職人の命ですよ」


 道具をわざわざ見せて、触らせてくれて、説明までしてくれたのに。普通は見せてもくれませんよ? 職人さよちゃんの真剣な圧に引き気味のお姉さま。涙目かわいい。


「そ、それでも宇野殿の見鬼や結界破りの話のほうが」

「あれは見鬼でも結界破りでもないのじゃよ」


 大僧正が仕方なく、といった感じで割って入ってくださる。


「七海にそのような特別な力はないのじゃよ」


 そうですよ、モブだもん。神田の一職人として生きていくだけですよ、むしろ余計な能力は作業の邪魔になるし、幕府から頼み事とかされるんでしょう? あれ? 俺もうだいぶ大僧正に頼み事されてるな? まあ大僧正だからいいか。


「今回は『七海が興味を持たされたものは見える』という特性を利用させてもらっただけじゃ。陰陽寮が便利に使える存在ではないぞ?」

(みやこ)でも江戸でも陰陽寮の予算が削られてるんですよ! うち、お金ないんですよ! 官職なのに! 中務省(なかつかさ)直轄なのに! なんかここらで一発逆転あってもいいじゃないですか!」


 涙目おこポンコツお姉様かわいい。属性が渋滞起こしてますね。クールビューティが行方不明ですが。


「保名殿、忘れているやも知れぬが寅吉は幕府の管轄じゃぞ」

「わかってますよ! もう! 幕府は邪魔ばっかりする! なんで朝廷からお金と権力持ってくの! もう官職やめる! 官位も返上する! 幕府で雇って!」


 ストレスがマッハってやつですね。苦労なさってるんだなあ、できれば俺が永久就職させてあげたいですよ。あ、もし良かったらストレス解消に踏んでもらっても結構ですよ。


「また悪い気がきた! この寅吉もうやだ!」


 駄々っ子ポンコツお姉さまかわいい。


「保名殿は普段は切れ者なのじゃが、こうなると少し長くなる。さて、さよ殿、そちに聞きたいことがあっての」


 大僧正がさよちゃんに向き合う。


「な、なんぜよ」

「いざなぎは江戸に入らぬ、という約定は知っておるかの?」


 ぼかんとするさよちゃん。それに河童。いたの? お前座ったら畳ネトネトしない? 大丈夫?


「うわー! 床がネトネトだー?!」


遠くから若いお坊さんの悲鳴が聞こえてくる。あー、やっぱネトネトしてるのかー。


「ところで主よ、本当にそんな約定が?」

「知らんぜよ。少なくともうちの里では聞いた事ないぜよ」

「いざなぎ本家と幕府と陰陽寮とで決めたことなのじゃがの」


 ぽん、と手を打つさよちゃん。河童もなぜか真似してる。


「それを決めた場にうちら傀儡方はおったぜな?」

「おらなんだの」

「ならうちの里は知らんはず、本家の里とは喜八どんの頃から交流しておらんぜよ」

「なんと」


 さよちゃんが言うには、喜八さんの水虎の術が完成した頃、いざなぎ流は式王子と祭文に限定すべし、という当時は原理主義バリバリだった本家筋から破門されたらしい。

 木地師としての側面があったさよちゃんの里は、元々いざなぎ以外の里と交流があったので、破門はあまり気にしなかった。つまり。


「知らんことは守れんぜよ」

「なるほど、道理でいざなぎ本家が水虎の対処を知らぬはずじゃの。ならば致し方なし。今回はこれで不問としようかの」


 大僧正が宣言する。


「なら、うちは江戸におってもいいぜな?」

「破門されとるのじゃろう? ならいざなぎとは見做(みな)せんのう」


 話まとまりました? それじゃそろそろ饅頭もらって帰っていいすか?

お急ぎでない方、毛色の変わった此の物語をまだ読んでも構わぬとお思いの方、向後に期待してやろうという方、よろしければ「ぽちっと」押してやってくださいませんか。




「ぶっくまーく」などもお気が向きましたらお願いいたします。


評価をいただければ、七海が喜んで五体投地でお宅に参ります。

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