弐之捌 モブ、模型っぽい話が出てソワソワする
「あの、俺、なんでいなきゃいけないんでしょう?」
とっとと饅頭もらって帰って根付のテスト製作始めたい。もらった材料を手持ちの工具で加工できるかどうか調べなきゃいけないし。
原型作ってる途中だったから工具が限られてるんですよ。
「七海もいろいろ疑問があるじゃろう、ここらで解消してはどうじゃ?」
前も思ったけど疑問しかねえよ。水虎だの、呪力だの、キツネだの、大僧正だの。ここにいるの、半数が人外っておかしいでしょ。そんな状況、経験したことないよ。
それに垢抜けないちっこい子がいざなぎ流?の術者だって話だけど、そもそもいざなぎ流ってなによ? 水虎だの、傀儡だのってなんなの。
「いざなぎ流の説明は七海たちが出る時にキツネからされたのじゃろう?」
「されたけども!」
「ならば次は水虎の説明じゃの。一言で言うと河童の亜種みたいなもんじゃ」
「説明になってねえ! じゃあ河童でいいじゃん!」
大僧正はおもむろにちっこい子へ顔を向ける。
「そちらでは水虎というのはどういうものだと伝えられておる?」
「ええっと、ばあちゃんに口伝えで聞いたところによると……」
ちっこい子が説明を始める。水虎とは匠によって人手代わりに作られた人形が水辺に打ち捨てられ、変化したものだと。だから木で物を作る木地師と、人形を操る傀儡師と、式王子を操る太夫を兼ねているいざなぎ流の傀儡一派が再現を試みたらしいのだが…。
「結局、喜八どんだけが成功したのぜよ」
「ふむ、よほど木地師としての腕が良かったのかの」
「里では一番の巧者だったといわれとるぜよ」
今、模型の話ししてますか?! 人形、すなわちフィギュアってことですよね? 正直フィギュアは作ったことないけど模型の話ですよね?!
「なぜか急に七海がイキイキし始めたのじゃ」
「あの、それはそれとして一つ疑問が」
お姉さまが小さく手を上げてらっしゃる。かわいい。
「なぜ水虎が遁甲の術を?」
「我が体には遁甲と修復の術が刻まれている。動かしているのは式である我だが、体である人形にかけられた術は別物であるゆえ」
ほら、こことここ、と、甲羅を外して背中をお姉さまに見せる水虎。それ外れるのかよ。
「甲羅は体だけでなく、刻まれた術を守るためのものでもある」
「なるほどの、暴走のときに分解して打ち捨てたのにおかしいと思ったのじゃ。喜八め、厄介な術を」
「だがそのおかげで新たな主に仕えることができる」
「河童、お前の甲羅って外れるんだな」
「人形の体ゆえ、こんな事もできる」
片腕が縮んだと思ったら、もう片方の腕がみにょんと伸びた。きもっ!
「ははは、まるで通臂猿猴じゃの」
つうひえんこう?
「なに、唐の伝説の猿じゃよ。左右の腕がつながって伸び縮みしたと聞く」
大僧正、なんでも知ってるな。さすが1000歳。
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