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このEDOはフィクションです  作者: 石依 俑
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弐之漆 モブ、またお屋敷使ってショートカットする

「大僧正には報せの式を打ってますので、今からでも問題ありませぬ」


 さすがお姉さま、仕事が早い。


「では行くとしようかの!」


 キツネ、その子は小脇に抱えないでいいから。下ろしてあげて。普通に歩いていけばいいから。

 キツネの先導でまた寛永寺に戻る。よその屋敷は勝手に通っちゃダメだってば。


「あれ若一にゃくいち様」


 ほら見つかった。俺は女中さんにぎこちない笑顔を向ける。不審者っぽく見えませんように!見えませんように!


「せめて門でお声掛けくださいな、今日もお急ぎで?」

「うむ! 上野までの急ぎなのじゃ!」

「まあまあそれはそれは、お気をつけあそばせ」


 女中さんの対応がおかしい。俺らご覧の通りの不審者ですよ?


「なあ、お前いつも急ぎの時にここ通ってるの?」

「ここの女中は良く見知っておる!」


 お姉さまもビクビクしてらっしゃる。


「宇野殿…」


 はい、おっしゃりたいことはわかります、下手にお武家さんのお屋敷に入ったら洒落なんないですよね。できたらキツネを止めてくださいませんか。


「いや、なんで宇野殿はそんな気楽に神使に話しかけられるのか。神の御使であらせられるのに」

「まあ最初の出会いが出会いでしたので」


 そんな話をしてたら寛永寺に着いた。


「ほう、この女童めのわらわが新しい水虎の主か」


 大僧正がいつもの奥の間で待ってらっしゃった。


「保名殿、七海も息災で何より」


 息災でない可能性、あったんですか? 俺モブですよ? わざわざモブにするために召喚されたの覚えてる?


「いえ、某はなにも。そこの寅吉殿が水虎を見つけ、神使殿が結界を破っていざなぎの者を連れてきてくれたおかげです」

「そうか。若一、七海、大義であった」


 大僧正がキツネを珍しく本名で呼んで俺と一緒に労う。


「さて女童よ、名はなんという?」

「いざなぎ流傀儡方 太夫末席 さよぜよ。おんしは?」

「天海というしがない小坊主じゃよ」


 ちっこい子が驚いてる。俺もこんなリアクションしてたのかな。ここは先輩として説明してあげよう。


「その方は…」

「転生を繰り返してこの世にまだおるという噂は本当だったぜよ?!」


 あ、ご存知でしたか。噂になるレベルの話でしたか、いらんお世話でしたね。


「しかし……」


 だよねー、疑うよねー、分かるわー。よし、ここは先輩として


「主、この者は天海で間違いない」


 河童が何やら言い出した。


「この静かな態度から漏れ出てくる凄惨な殺気、天海で間違いない。封じられた時に感じた法力も同じだ」


 河童、それ、後者の情報だけでよかったんじゃないかな。半分仏様なんだから殺気とか、そういうこと言っちゃダメでしょう。見ろ、大僧正、ピキってるよ。

 さて、そろそろ本当に帰っていい頃合いだろう。できることないし。


「大僧正、俺は帰るので饅頭ください」

「もう少しおるが良い」


 本当に帰りたい。俺、立体物を盛ったり削ったりしないと落ち着かない体質なんすよ。

お急ぎでない方、毛色の変わった此の物語をまだ読んでも構わぬとお思いの方、向後に期待してやろうという方、よろしければ「ぽちっと」押してやってくださいませんか。




「ぶっくまーく」などもお気が向きましたらお願いいたします。


評価をいただければ、七海が喜んで五体投地でお宅に参ります。

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