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このEDOはフィクションです  作者: 石依 俑
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弐之伍 モブ、クールビューティ好き好きBOY

七海くん、お姉さまキラー!(気の流れ的な意味で)

「それで水虎が生き物かと言う話じゃが、あれらは式王子と呼ばれる使い魔の一種でな、輪廻の外におるものじゃ。正しく使役せねば世に仇なすこともある。以前、水虎が暴れた時はまさにその状態じゃったの。主もおらず、為すべきこともなく、寄る辺なくただそこにある、そんな哀れな存在じゃった」


なんのアフターケアもない寅吉みたいなもんか。そりゃ途方に暮れるわ、俺なら泣くね!


「さて七海よ、これからこの保名やすな殿と一緒に行動してもらいたい」


 なんで?いや、クールビューティお姉さまとご一緒することにはやぶさかではありませんよ。むしろ光栄ですよ、念入りに至近距離にいさせていただきますよ、吐息を吸うぐらいの勢いでお伴しますよ。


「お主の加護と関係するのじゃが、七海よ、元の世界でも妙な者との関わりが多くなかったか?」


 多いどころじゃないですよそりゃ。友人からサークルからお客さんまで、変人ばっかりですよ。ほぼ妖怪みたいなのか、めっちゃ頭のいい馬鹿ばっかりでしたよ。


「お主が珍妙な者と巡り合うのは元の世界で授けられた加護によるものでな」

「俺、以前からそんな面白ホイホイみたいな扱いだったの?」

「その加護のおかげで水虎と出会ったのじゃぞ!」


 絶妙にうれしくねえ。でも分かった。面白ホイホイとして水虎を釣れ、と。


「餌ですか俺?今キツネが探してるんじゃ?」


 怪異相手には怪異が基本でしょ。いたいけなモブをあてないでくださいませんか。キツネとかいるじゃん?


「だから保名殿をつけるのじゃ。万一の安全は担ってもらえるじゃろう」

「はい、御下命とあらば!」


 クールビューティなのに熱血属性も持ち合わせていらっしゃるのか。これはクーデレ期待していい流れだよね!


「なにか微妙に気持ちの悪い気の流れを感じるのですが……」


 お姉さまが大僧正に助けを求める顔をしてるが、ニコニコと無視なさっておられる。ホント慈悲なくね?


「七海が嫌なのかえ! オラッシャダラア!」


 落ち着けキツネ。神威に当てられてるのか知らないけど、若手の新日レスラーみたいな威嚇してるんじゃないよ。そもそもお姉さまを威嚇するなど万死に値する行為であると知れ。


「とりあえずもう一度現場に行きましょうか。まだ近くにいるかもですし」

「ご同行いたす」


 ちょっと嫌そうな顔しながらもクールビューティがご一緒してくださる。


「ところで合羽橋ってどう行ったらいいんでしょ?」


 道知らねえや! 俺、とんだ田舎者じゃねえか! 江戸三日目だから仕方ないね!


案内あないいたそう」


 お姉さまが嫌そうな顔ながら案内を申し出てくださる。本日お幸さんに続いて二度目のお姉さまエスコートですよ! 二回公演午後の部ですよ! 来てる? これ流れ来てんじゃね?


「嫌な気が強くなった……少し離れてくだされ」

「大丈夫ですか? 介抱しますか?」

「離れて歩いてくれたらそれでいいから…」


 少し具合が悪そうだけど、お姉さまと一緒の道行きめっちゃ嬉しい! 楽しい! 大好き!


「陰陽のかみの占術に出たダメな方の寅吉とはこういうことか…」


 お姉さまがなんか泣きそうな顔で独り言おっしゃってる。美人は涙目でブツブツ言ってても絵になるなあ。


「あ、ここですね、河童と会ったのは」

「人払いの術……遁甲か? たかが式王子がこんな術を?」


 柳眉を逆立てて厳しい目をしてらっしゃる。もうこの世界の人が意味のわからないこと言っても気にならなくなってきた。

 あ、河童いるじゃん、緑色だからすごくわかりやすい。キツネはどこ探してたんだ?


「よう、河童!」

「河童ではない。先ほどの名のある人か、名のある生のきゅうりでも持ってきたか」

「きゅうりはもうないんだよ、悪いな。次会うときは持ってくるわ」

「宇野殿、なぜ水虎にそんなに気安く接せられる? 先の話を聞いておられたか? かの水虎ですよ?」


 だってきゅうりの浅漬けあげたし。悪いやつにも見えませんし。


「河童、お前暴れるつもりなの? 暴れたら怖い人…人? まあ人でいいか、いっぱい来るよ」

「主の気配が近い。主のもとへ至ればまた式王子として傀儡に戻ろう」

「いざなぎの術者と会えれば江戸を害しない、と?」


 お姉さまがなにか確認された。良かった。河童、即、滅という感じでもなさそうだ。さすがに知り合った河童が滅ぼされたら夢見が悪い。きゅうりもあげたし。


「即滅ぼすとかじゃなかったんですね」


 河童が気を悪くしてもなんなので小声でお姉さまに言う。


「分が悪いです。某の式神だけでは搦手も力押しもおぼつかぬかと」


 へー強いんですか、あの河童。河童のくせにねえ。しかしお姉さまと密着しながら囁きあえるなんて、前世でどんな善行したんだ俺、やるじゃん前世の俺。


「宇野殿、少し気分を抑えてもらえまいか。悪い気がさらに充満してきた」


 介抱しますか?と、言おうとしたら空間をスパーン! と襖か障子みたいに切り開いてキツネが現れた。


「七海! いざなぎの術者を連れてきたのじゃ!」


 お姉さまとの囁きあいの邪魔してんじゃねえよ、キツネ。

お急ぎでない方、毛色の変わった此の物語をまだ読んでも構わぬとお思いの方、向後に期待してやろうという方、よろしければ「ぽちっと」押してやってくださいませんか。


「ぶっくまーく」などもお気が向きましたらお願いいたします。

評価をいただければ、七海が喜んで五体投地でお宅に参ります。

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