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このEDOはフィクションです  作者: 石依 俑
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弐之弐 モブ、加護が誰のかわからない

 紙が変化した鳥が長屋の軒から飛び立っていく。つちみかど? さんに伝言を届けに行ったんだろう。

 なんか妙に緊迫してるが俺にできることと言えば、


「とりあえず腹減ったんでお妙さんに昼飯残ってるか聞いてきます。残ってたら食べてきますんで」

「そうじゃの、飯を食うたら以前の寺へ来てほしい。土御門を入れて詳しく聞きたい」

「え、行かなきゃダメですか?」


 せっかく材料貰ったし、根付け作りたい。散歩しながら構想練ってたのに。


「すまぬが頼む。大事にはならぬと思うが、一応当事者の話を聞いておきたいのじゃ」

「下手を打てば江戸を巻き込む一大事になるのじゃぞ!」


 キツネ、お前せっかくの大僧正の気遣いを無駄にするんじゃないよ。俺へのハードル下げてくれてるのに。


「天海、八番の召喚を早めねばならぬやも知れぬ」

「そこはこれからの話しじゃ、急くでない」


 のじゃのじゃ言ってるのをとりあえず無視する。こっちは腹減ってんすよ。


 それにしても急転直下とはこのことか。この江戸で慎ましくも穏やかに過ごすつもりが、河童一匹でこのザマか。あの野郎、許さねえ。


 お妙さんが残してくれてたおにぎりと漬け物を食べてお茶を飲んでゆっくりする。食後のお茶飲んでると甘いものが欲しくなるな。今度お妙さんにお茶菓子でも買ってこよう。

 ここらじゃなにが美味しいのかな。江戸時代から続く羽二重団子って聞いたことあるけど、こっちにあるのかな。


「なにしとるのかや!」

「キツネさ、この辺で美味しいお菓子って知ってる?」


 まだいたキツネに尋ねる。こいつ江戸に詳しいらしいから知ってるかな?


「そんなことより天海の元へ!」


 あ、そうか、大僧正んちに行くんだった。


「ごめん、忘れてた」

「お主、さては一度に一つのことしか考えられんのじゃな?」


 俺そんなふうに見えてるのか。いや、なぜか大学ではシングルタスクなんてあだ名つけられたけどさ。ところで河童一匹になんでそんな大騒ぎしてるの?


「それは道々話してやるからさっさと支度せえ」


 キツネと寛永寺へ向かう。さすが地元民、裏道や近道を使ってどんどんと進んでいく。人様の屋敷を抜けるのはやめなさい。捕まっちゃう。


「ところで河童の話なんだけど」

「うむ、聞かせてやろう。他言無用じゃぞ?」


 キツネが語ったところによると。この世界の陰陽道はいくつかの土着流派に分かれているらしい。強力な流派も、そうでない流派もたくさんあるが、筆頭は安倍晴明の血を引く直系、越前の名田庄で泰山府君祭を司る土御門家。今から向かう寺に、その土御門家の江戸詰め役が来るらしい。


 日本各地に散った土着陰陽道で一際強力なのが四国の物部村に伝わるいざなぎ流。この流派を継いだものが、合羽橋建設において使い魔である水虎を使って功績を残したという。水虎と河童は見た目が似てるから混同され、橋はかっぱ橋と呼ばれるようになったとのこと。


「その水虎? が出たからって何がヤバイの?」

「その使役した水虎が術者の死後、江戸各地で暴走を始めたのじゃ」


 当時の大僧正やいろんな神使がフル動員で暴走を抑え、いざなぎ流の者と話し合った結果、いざなぎの技を伝えるものは江戸に入ってはならないという約定を結んだという。


「いざなぎの術者が江戸に入ると水虎が復活してしまうからの」

「そんな自動的なもんなの?」

「当人に使役する気がなくても復活するらしいのじゃ」

「めんどくさいな、それ」

「接触したのが寅吉であるお主でよかったのじゃ、死なぬからの」


 攻撃されて死んでた可能性あったの?! でも普通にきゅうり食って名前ある自慢してっただけだったけどな、特に危ない感じはなかった。


「まあ、お主にはちょっと特殊な加護があるからの」

「どんな加護なの?!」

「それは天海に聞くが良い。妾には話す権限がない」


 めっちゃ気になるんですけど。俺には誰のどんな加護がかかってるの?

お急ぎでない方、毛色の変わった此の物語をまだ読んでも構わぬとお思いの方、向後に期待してやろうという方、よろしければ「ぽちっと」押してやってくださいませんか。


「ぶっくまーく」などもお気が向きましたらお願いいたします。

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