壱之拾漆 モブ、小僧さんの正体をバラす
短いです。すいません。
そのままお幸さんと平賀のおっさんの屋敷へ向かう。
「おや、寛永寺の小僧さんが」
「あ、大僧正」
小僧姿の大僧正が、篭を降りた、どう見ても偉そうな格好の人と挨拶してる。
「大僧正?」
あ、しまった、言ってから思い当たる。天海大僧正が小僧コスプレしてるのは秘密っぽかった。秘密だよね?
「いやなんでもないっす」
はー、と溜息をつかれる。その溜息、吸いたいですけど我慢します。ぼくは変態に非ず。
「あのお方、どうやら自分が天海だとバレてないと思ってらっしゃるようなの」
やべえ、迂闊にもほどがあった。天海大僧正が今も生きてるなんて機密にも程がある事柄だろう。
お偉いさん方と直接つながってる寅吉という立場だけに、こういうことには敏感になるべきだった。うっかりでは済まない呟きだった。
……あの、今なんて?
「バレてないおつもりでいらっしゃるの。小僧さんの格好でよく出歩いてるんですけど、幕府の重鎮やらお大名やらが、わざわざ篭を下りて挨拶する小僧さんがいるもんですか」
oh…身分詐称下手すぎ…。そういえば俺のときも小僧さんの振りして同席してたんだっけか。お茶目な登場と思ってたけど、あれいつもやってたのか。
「でも、さすがに転生を繰り返してるなんて、そうそう誰も信用しないでしょ?」
「そりゃ生まれ変わりは珍しいですけどね、ちょくちょく神使様や妖怪を見かけるぐらいですよ、なくもないでしょう」
ほら、と視線を向けた先に、豆腐屋に油揚げをたかっている狐がいた。あいつ本当なにやってんの。
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