壱之拾陸 モブ、めんどくさい立場だった
「で、お前さんがその職人かい? 一人前のツラにゃ見えないが」
「はい、宇野七海といいます。こういう物作ってます」
とりあえず製作途中の原型(ロボットの頭部)を出してみる。
「なんだこりゃ、見たことねえ材料だし、意匠も知らねえ。この大きさだと根付でも作るかい?」
「はい、まずは腕を見てもらえと平賀さんが」
そこにお幸さんが割り込んでくる。
「この方、旦那さまと同じで寅吉でいらっしゃるのよ」
あ、番頭さん、うわ、めんどくせえって顔してる。そりゃ神仏やら幕府やらの関係で無碍にできない肩書だもんな。よく考えたらめんどくせえわ俺。
「あ、俺は寅吉でも新参者ですし、長屋で暮らしてますし、作品だけ見ていただけると」
庶民アピールをしておく。伝われ! ぼくのモブオーラ!
「まあとても大したことをしそうな顔にゃ見えねえけどよ」
伝わった! 諦めたのか、番頭さんが改めて原型をじっくり眺めてらっしゃる。
「腕は悪くはねえ。悪くはねえがわざわざ発注するかと言うと……」
やべ、ここで断られたら案内してくれたお姉さまの顔が立たない。大僧正にも。平賀のおっさんは爆発しといてください。お姉さまに惚気けられた童貞の恨みは恐ろしいと知れ。
「寅吉じゃないと知らない生き物なんかどうですか? 他の国の変わった動物や魚とか虫は?」
この世界の人が好奇心旺盛なのは散々見てきた。カメレオンやダイコクコガネなんかは多分知らないだろうし、誰も作らないだろう。これがブルーオーシャンってやつですね。
「ほう、そういうのが作れそうかね」
乗ってきた乗ってきた。珍しいものならなんでも歓迎されるんじゃないかと思ったら、予想以上に食いついてきた。幸い、オフラインで使える動物図鑑ならスマホに入ってる。これイケるんじゃね?
「じゃあとりあえずこの材を渡しておこう。お前さんが作ってきて売れたら材料代引いておくよ」
「ありがとうございます、助かります」
「お幸さん、平賀さんと親御さんによろしくな」
そう言って番頭さんは仕事に戻られた。俺の手元には四角い木材が一つ。
「柘植材ですね、失敗してもいいように安いのを渡してきましたね」
「安いんですか、これ? それは助かりますね」
「え? いいんですの? 舐められてません?」
いやだって、高い材料で失敗したら弁償でしょ? できるかどうかもわからないんですから。どこまでも小者なんすよ。
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