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このEDOはフィクションです  作者: 石依 俑
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壱之拾伍 モブ、meets お姉様

「そうだ、迂闊に向こうの世界のもん出すなよ。お前さんはもう出してるけど、何か使いたいもんあったら俺か大僧正に聞きな」


 マジすか、リューターとかライト付きゴーグルとかダメすか。引きこもって使うつもりですけど。


「それとスマホな。妖術扱いされるから人前で使うの禁止だ。これは寅吉全員が守ってる」


 スマホねえ、使い途ないな。ネットないならゲームもできないし。写真や動画撮るくらいか。SNSでお江戸来てまーす、とかできないし。いや、もともとSNSは模型関係のアカウントしかなかった。


 信じられないかもしれないが、模型専用のSNSは実在する。

 信じられないかもしれないが。

 イベント前になると版権の降りた原型がいくつもアップされる。ネット上での宣伝は禁止されていることが多いのだが、ブログやSNSだとギリギリ規約に反しないのだ。もちろん売れるかどうかは全く別問題なんですがね?


 しかしそうなると、根付を作るには、全てワンオフ(一点もの)の製作になるのか。あれってそもそも素材はなんなんだろう?


「木や骨、象牙、陶器、竹に金属、サンゴもある、変わったとこだと、ガラスも見たなあ。面白いのもあったよ、よく思い出せないけどな! うはは!」


 平賀のおっさんが、いい感じにほろ酔い加減になりつつある。

 俺も初めて呑んだ酒でなんだかフワフワする。お酒、きもちーっすね。これ寿司と合うなあ、うめえなあ。


「まあよく分からんから、今度、出入りの小間物屋を紹介してやるよ!」


 さすが、屋敷構えてるだけあって出入りの商人いますか。よろしくっす。大丈夫っす眠くないっす。ところで、ここどこでしたっけ?


 あとはよく覚えてなくて、朝、気がついたら畳の上でゴロ寝してた。おっさんはそのまま帰ったらしい。


「宇野様のお住まいはこちらでございますか?」

「はい、少しお待ちくださいね」


 知らん女の人の声と、受け応えする妙さんの声が聞こえる。俺のとこに客ですか?


「七海さん、平賀様のお使いが来てますよ」


 こりゃいかんね、顔だけでも洗わにゃ。


「はい、少し待ってください」


 汲み置きの水で口をゆすいで、軽く顔を洗う。何もしないよりはマシだろう。


「お待たせしました。平賀さんのお使いの…方…」


 なんだこの楚々としたお姉さん、あいや、このレベルはお姉様だ。凛として、それでいて柳のような物腰は崩さない。この方が平賀のおっさんのお使いなの?

 着物こそ小紋の地味なものだけど、多分これ、古着じゃなく仕立てたものだ。平賀さん、ひょっとして、この方がマジぴっぴすか。ベイベーっすか。


「旦那様より、小間物屋に案内するよう、仰せつかった幸と申します。宇野様でいらっしゃる?」


 昨日の今日で本当にいらっしゃった。このお姉様が案内してくれるのか、平賀さん、こんなお姉様を寄越して下さってありがとうございます!


「あ、う、はい、宇野七海です。あ、わざわざ、ご、ご足労ありがとうございます。」

「ふふ、初対面で緊張なさってますか?どうぞお気楽になさってくださいな。」


 これだよ、このお姉さん限定のコミュ障でも笑わないこの包容力ですよ。お姉様さすがですよ、平賀さんのお手つきでなけりゃ色々お願いしたいところですよ。いや、お手つきと決まったわけじゃないだろう。これが攻略対象ってやつですね!


「あ、その、すいません、綺麗な方で驚きまして」


 まあ、と袖で口元を隠される。ああ、着物でそういう仕草されると非常に萌えます。萌え袖?そういうあざといのはどっか行きたまえ。目元だけで笑ってるのが分かるのはとても色っぽいですね貰ってください。


「では参りましょう。旦那様からご案内するよう仰せつかっております」

「はい、どこへなりと。では妙さん、行ってきます」

「どうぞ行ってらっしゃいませ!」


 妙さん? ぷいと顔を背けてらっしゃる。なんか怒ってませんか? せっかく雑貨店(だよね?)へ行くんだ、なんか土産買って帰ろう。お手当もおっさんから貰ったから懐は暖かいぜ!


 道々お話をしながら歩く。

 今年の隅田川の花火は旦那様に屋形船を仕立ててもらって川から眺めた、とか、旦那様に頂いた芝居の桟敷席は演目も役者も本当に良かった、とか、吉野村の桜を旦那様と見に行った時は緋毛氈にお弁当しつらえただけでなく、野点も楽しんで、お菓子も美味しくて、それはもうもう夢のような心地でござんした、とか、おい、ひたすら惚気られてるだけじゃねーか。恨んでいいすか、平賀さん。


 そんな恨みを心に滾らせながら、表面上は良かったっすねーみたいな受け応えをする。

 うん、小心者なんだよ。綺麗なお姉様と歩いてるだけで満足してます。はあ、いい匂いすんなぁ。


 人通りの多い表通り、大層な大きさの店に着いた。


「大きい店ですね。もっと小さい店かと思ってました」

「少しお待ちくださいね、番頭さんに紹介しますよ」


 お姉様が店に入って店員さんに声をかけた。


「ごめんくださいまし」

「おや、お幸さんじゃありませんか、お珍しい。一体どういうご用向きで?」

「旦那様の紹介で職人を連れて参りました。七海さんと仰いますの。旦那様の肝煎りですのよ。喜助さんはお手隙でいらっしゃる?」


 目つきの柔和な、しかし隙のなさそうなおっさんに俺を紹介してくれる。


「平賀さんの肝煎り、とね。さてはただの職人じゃござんせんな」

「そこはそれ、言わぬが花でござんしょう」


 ふええ、なんだかふたりともおめめがきびしいよお。こわいよお。

 このお姉様、こんな大きな店の番頭さんに気軽に話できるのか。何者なんですか?


 この規模の店の取りまとめっぽい人に顔パスできるのは普通の人じゃないよね?

お急ぎでない方、毛色の変わった此の物語をまだ読んでも構わぬとお思いの方、向後に期待してやろうという方、よろしければ「ぽちっと」押してやってくださいませんか。


「ぶっくまーく」などもお気が向きましたらお願いいたします。

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