肆之肆拾漆 モブ、趣味の時間が取れなくなる予感がしてくる
帝釈さんが残した網が俺に吸収された後、寛永寺を後にした俺と平賀さんは天ぷら屋の屋台に寄って目当ての鰯の天ぷらを買って長屋へ向かう。
天ぷらって屋内で揚げちゃダメだってお触れ出てるんだってさ。
「だから天ぷら屋って屋台が多いんですね。あれ? 蕎麦屋はどうしてるんだろ?」
俺の数少ない外食先の近所の蕎麦屋で天ぷらそば食ったことあるぞ? 揚げたての天ぷらが蕎麦に乗ってたんだけどな?
「そりゃ店の裏で揚げてるんだろ。天ぷら火災があるかも知れねえだろ? お触れも意味あんだよ」
なんと、天ぷら火災は江戸時代からある歴史あるものでしたか。煙草か天ぷらか放火が出火原因で聞くところだけど、お江戸でも天ぷらは要注意でしたか。
「消火器ないですもんね。そこらでホイホイ天ぷら揚げられたら火事の危険がキリありませんもんね」
「そういうこった。なにしろ火事に弱い都市だからな」
なるほどなー。木と紙でできた百万都市なんてヨーロッパやアラブ世界からしたらファンタジーそのものだろう。住んでる人間からしたら、天ぷらもおちおち揚げられない町だけど。
お江戸でもし火事が起きたら基本的に燃えた家を壊すんだってさ。延焼したらそこも壊す。壊すのはめ組でおなじみ、鳶の方々。
出初式で梯子登るのは江戸の消化活動の名残りなんだって。なんで梯子登るのか不思議だったんだけど、意味あったんだな。
梯子で屋根登ってここまで壊すぞーって目印でヒラヒラしたのや飾りのついた棒、纏って言うらしい出初式でよく見るアレ、アレを持って屋根の上で振るんだってさ。火のそばギリギリの高いとこで纏持って振るのが命知らずの証で、その男気にお姉さま方はキュンキュン来るんだと。
お江戸の価値観、マッチョ過ぎだろ。モブにもキュンキュンする余地を残しといてください。
「んじゃ、ここらで俺は帰るわ。まあゆっくり休め。ご隠居さんには連絡しとく」
「はい、お疲れ様です。ゆっくりさせてもらいます」
分かれ道で平賀さんを見送ろうとしたら河童がいた。
「どうしたの河童。キュウリも大根も持ってないよ」
「河童ではない。水虎の河太郎だ。京の陰陽師より伝言がある。若一に気をつけよ、とのことだ。大根は次の機会で良い。期待している」
大根たかる気満々じゃねーか、この河童野郎。ところで若一ってなんだっけ? ああキツネの本名か。忘れてた。
「それでキツネがどうしたって?」
「詳細は知らぬ。だが七海に伝えてほしい、と。河太郎は今から八番にも伝えに行く。その後、主の守りにつく」
河童はそう言うと衛人の屋敷の方向に向けて川に入っていく。何なんだよ、やけに物々しいじゃねえかよ、あいつ衛人のとこ行って成敗されないかな? 今のうちにさよちゃんにも知らせた方がいいよねこれ。
キツネに気をつけろってなんだろうね? 情報がなさすぎて何に気をつけたらいいのかも分かんない。誰か教えてくんないかなーと思いながら長屋へ帰る。さよちゃんは今日も絵師の修行に行ってるみたい。じゃあ俺はどうしよう? やっぱ旧キットやっとく?
「ぴっ! 宇野殿、水虎の報告は聞かれたか?」
宇野って誰だっけ。あ、俺か。
寅吉とか七海とか器とか、そんな呼ばれ方しかしてなかったから名字で呼ばれるの新鮮だな。ところでこの声は鳥さん?
「ぴっ! 各所で殺生石が活性化しておる! 九尾の一毛が復活するやも知れぬ! 若一に気をつけよ!」
「説明したいならちゃんと分かるように言って!」
言うだけ言って鳥さんは飛んで行った。
説明下手が多すぎかよ、このお江戸は。でもまあ、また何かに巻き込まれるっぽいのは見当がつきます。
旧キット改修が遠のく予感がほんのりしてる。こういう勘は当たらないでほしいけど、まあ俺の今までを考えると無理な注文なんだろうな。
神様仏様、できるだけ軽い騒動で済みますように。あと、趣味の時間がしっかりとれますように
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「ぶっくまーく」などもお気が向きましたらお願いいたします。
評価をいただければ、七海が喜んで通報をものともせずに五体投地でお礼に参ります。




