肆之肆拾陸 モブ、菩薩のありがたい説法をスルーする
そんなわけでやって来ました寛永寺。の脇のいつもの塔頭。
いつものように奥座敷に大僧正がいらっしゃる。
「おお、平賀に七海か、よく来た。茶請けに羊羹はどうじゃな? して、何用じゃ?」
ショタおじいちゃんがもてなしてくださる。この時代に羊羹あるんだ。
「羊羹は秀吉公の時代からあるぞ。伏見の駿河屋が献上したのが始まりだってさ」
いつもの平賀さんフォローが入る。羊羹と言えばの虎屋じゃないんだ。そんな昔からあるんだな。
「いや、羊羹の話じゃないです大僧正、七海に降りてきた帝釈天が帝網を残していったんですが。ほら、出しな」
風呂敷に包んだ網を大僧正に見せる。
関係ないけど風呂敷めっちゃ便利。一升瓶でもスイカでも包み方ひとつでなんでも運べる。そりゃ泥棒も風呂敷使うわ。今度次郎吉さんに千両箱盗むのに風呂敷使うか聞いてみよう。
「ほう、帝網を」
「はい、寅吉の手に余るので奉納にあがりました」
「七海よ、それを頭から被ってみよ」
え? 大僧正、なに言ってんすか?
「頭から被れ、そのつもりで渡したはずじゃ」
「あ、はい」
天界の宝物とやらを被っていいの? 大僧正の目がとっととやれって言ってるからやりますけどね、副作用とか罰当たりとかないですよね?
思い切ってえいや! と網を被る。宝玉がキラキラと周囲の景色を反射し、また、反射し返して、視界がキラキラして目がチカチカする。これはキラキラが溢れたVRだろうか。もしくは盛り専門のセルフィーアプリか。
気がついたら網も宝玉もなくなってて、網の名残の糸が虚空に消えていくとこだった。結局なんだったの。
「その網は兜率天を荘厳する帝網じゃよ。七海が天界最高の兜率天の一部になったと知らせるものじゃよ」
キラキラ網がそんな意味を持ってたの? そんで俺、天界の一部になっちゃったの⁈ ちょっと色々大袈裟ではないですか、神仏やら天人の皆様よ。
ところでとそつてん、てなに?
「兜率天は天界の最高峰、須弥山に聳える帝釈天の宮殿じゃよ。今は中で弥勒菩薩が修行しておられる」
「そういう凄いことっぽいのもうやめて!」
日本史どころじゃないビッグネームが出てきた。いい加減にしてほしいけど、どうしようもないんだろうなチクショウ。
そんな俺の葛藤も知らないように大僧正が解説を続けてる。
「良いか、帝網と言うのはの、網の結び目のひとつひとつに宝玉が飾ってあったじゃろう? 網の目が全ての繋がった関係を表し、宝玉が互いに写し合うことで独立したものなどなにもないこと、ひいては菩提の境地を示しておる。そのような教えを重重帝網という。兜率天を荘厳しておるのは、そういう教えそのものなのじゃよ」
「大僧正、七海は聞いてませんよこれ」
おじいちゃんの話長いなー。悟りって大事なんだなー。さっぱり頭に入ってこないけど。モブよくわかんない。
「七海、お前さん、今何考えてる?」
「天ぷら屋まだ開いてるかなあって」
猫神使に鰯の天ぷら買って帰ってあげたいんですよ。
誰か俺がモブだってこと、覚えてますか?
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「ぶっくまーく」などもお気が向きましたらお願いいたします。
評価をいただければ、七海が喜んで通報をものともせずに五体投地でお礼に参ります。




