肆之肆拾参 モブ、旧キット改修に心躍らせる
「七海、それは人形遊びか? 首や四肢をバラバラにするなど趣味が悪いように見えるが」
猫神使が顔を顰めるように言う。違うんですよ、これは仮組みしたパーツを並べて関節のタイミングを見てるんですよ。猫神使には俺がそんな猟奇的な遊びするように見えてますか?
旧キットは大改造が必要なものも、少しの改修で見違えるものなど色々ある。パッケージや説明書の完成写真から改修プランを考えるが、実際、組んでみないと分からないことが多い。
今手掛けてるこのキットは顔がダメだし、いかにもなゴリラ体型で大改造が必要かと思ってたけど、肩を上に上げて角度付けて、首を延長して、胸幅詰めて、股関節も左右に伸ばして、腿も延長すれば結構イケるんじゃね? 顔は削り込みでなんとかなるかな? 頭はパテ盛って形状変更だな。
「猫神使、喜んでください。思ったより少ない改修でなんとかなりそうですよ」
「猫が喜ぶ要素が無さそうだが」
この方、興味ないことにはとことん興味ないんだな。猫だもんな。
平面に置いていた各パーツを今度はマスキングテープで立体に仮止めしていく。今は関節パーツがないから本当に仮止めだけど。市販の関節は次に買ってこなきゃだな。
関節パーツが売っていることに驚く人は多い。
嘘ですごめんなさい、そんなものが存在してるのを知ってる人自体少ないです。だが、これ何に使うの? なんて愚問はやめてほしい。関節に使うに決まってるじゃん。
今のキットは関節が進化してポージングが簡単に決まるようになってるが、旧キットやポリキャップゆるゆるプラモの関節は市販のものに置き換えるしかないのだ。
皆さん、ついてきてますか?
昔は特定の関節目当てでキットを複数買ったり、切り離してからストローとプラ棒を使って可動軸を足したりと、涙ぐましい努力をしていたと聞いたことがある。うちの常連さんのお話です。
ガ○プラ黎明期からのロボットモデラーで今は旧キット改造の鬼となってるお客さんだ。俺の旧キット趣味はこの常連さんの影響が大きい。もはや新作プラモが出るはずもないキットを自分好みに改造するのは割と後ろ向きだと自覚してます。
じゃあ前向きってなんだと聞かれればガレージキットの新作を作るか、自分でスクラッチすることだ。ただ金と労力かかるんだよな。ガレージキット、略してガレキは万単位の値段が当たり前だし、プラモと違って硬いレジンでできてるので表面処理にかかる時間と労力が半端ないし、気泡があるものも多い。綺麗に表面処理できたと安心したら隠れた気泡が出てきてブチ切れそうになったこともある。
スジボリの引き直しで気泡に当たることもある。もうブチ切れ通り越して声出ますよ。よくもこのピンポイントに気泡置いてくれやがったな! と。
最近はガレキ製作者も業者に外注したり、真空脱泡器を買ったり自作したりして品質の向上を図ってる。うちのサークル部屋で唸ってるエアコンプレッサーの一つは脱泡用だ。あと二つは工具用とエアブラシ用だ。
そんなことを思い出しながら作業してたら、立体の仮組みが出来上がってた。前から後ろから、上から下からあらゆる角度からチェックして微調整を繰り返す。うん、こんな感じかな。
「楽しいですね! 猫神使!」
「猫は全く楽しくないが、七海が楽しそうでなにより……む?」
猫神使の毛がブワッと広がり尻尾が膨らみ、目が見開かれ瞳孔が開き、体は立ち上がって臨戦態勢になってる。この急な警戒の原因はというと、
「俺ですね、どなたか降りてきますね、これ」
楽しい癒しの時間なのに邪魔しないで!
お急ぎでない方、毛色の変わった此の物語をまだ読んでも構わぬとお思いの方、向後に期待してやろうという方、よろしければ更に下にスクロールして広告下の白星を「ぽちっと」押してやってくださいませんか。
「ぶっくまーく」などもお気が向きましたらお願いいたします。
評価をいただければ、七海が喜んで通報をものともせずに五体投地でお礼に参ります。




