肆之弐拾捌 モブ、体を取り戻す
菩薩とか天人とか聞いたことあるようなないような…。
菩薩はあれでしょ? 観音様とかそういうのでしょ? 天人って学問の神様だっけ。
「それは天満宮の天神じゃ、道真公じゃの」
「てんじんってそれとは違うの?」
「仏界の下、そして人界の上に天界がある。天人とはそこに住まう者よ。人より遥かに長い寿命を持ち、人と隔絶した力を持つが悟りには遠く、人と同じく迷いの中に生ける者じゃ」
天界って天国みたいなもの? 極楽とは違うんだろうか。大僧正の言うことはよくわかんねえな。信長さんはわかるの?
「天人として転生したことには驚いたが、天界も現世と変わらぬ。欲に塗れた者も、戦に生きる者も、仏に帰依する者も、もちろん有象無象もおる。少しばかり命が長く、力がある者が多いだけぞ。天生わずか五京年」
おかしい。それは単位がおかしい。人生の儚さどこいった。なんだ五京年って。京って単位、そうそう聞いたことも使ったこともないよ、量子コンピュータのネット記事で見たことあるかなー? くらいのレア度だよ。浮動小数計算だっけ? よくわかんないけど、さふいふ非常識なものに信長さんはなっちゃったの?
「本能寺で死して後、天人として再び生を受けた。人が天人に生まれ変わるなど未曾有のことらしい。浜の砂の一粒ほどの珍らしさだ、と聞く。天人となって骨肉相食む人の世の愚かしさが身に沁みておる。猿も金柑頭も愚か也」
なんか悟ったみたいなこと言ってるけど、いい加減体返して。
「信長よ、大概になさいませ」
お姉さま神様がおこですね。いいぞいいぞ、信長さんにお説教してやってください。
できたらそのあとに俺にもオナシャス! お姉さまの愛あるお説教欲しいです、いや愛なくてもお説教だけくださいませ。考えるだけでご飯三杯余裕です!
「天海、この者はなんなのです。せっかく器を金丹に作り替えたというのに、器にそぐわぬこの欲望。ぶっちゃけ気持ち悪いです」
お姉さまのジト目いただきました! ありがとうございます! 寿命が延びます!
「大概にせよとはどういう意味か」
信長さんが話に割り込む。てめえ俺の体でお姉さまに逆らってんじゃねえよ。
「その金丹の寅吉は神仏の器と申しました。なりたての天人風情が独占できるものではありませぬ。疾く退散なさいませ」
そうそう、言ってやって言ってやって! いい加減に体返して!
「で、あるか。ならば天人風情は天に帰るとしよう。器の寅吉、また来るぞ。次は現世の甘味を用意しておけ」
「誰が器の寅吉だよ。あ、喋れる。お、体も動く」
一応、体の中の感覚を確認する。違和感はないな。さっきまで体の中が妙に重たく感じてた。合気の訓練で不随意筋もある程度は動かせるんだけど、全身が訓練前の不随意筋みたいになってて実に気持ち悪かった。
チェック・オールグリーン。よし! 問題なし!
「見て見て大僧正に平賀さん達、体のコントロール戻ったよ!」
「うむ、戻っておるの」
ニコニコしてる大僧正に、まだ脂汗流して平伏してる平賀さん達に固まったままの鳥さん。どうしたの?
「なんでお前さん、平気なんだよ…神が顕現なさってるんだぞ」
平賀のおっさんが食いしばった歯の間から苦しげに言う。え、そんなんお綺麗なお姉さま神様だからじゃん。なんで苦しんでるのか理解できません。喜べよ。
「金丹の寅吉。あなたは神仏の器となりました。今後、あなたを通して神仏が現世に干渉なさるでしょう。その時は受け止めてくださいね」
慈愛の笑顔でお姉さま神様がそうおっしゃる。任せてください。たまにはお姉さまが降りてください、お待ちしてます。ウッヒョー、ワクワクが止まんねー。
「では言いつけも終わりましたし、寅吉が気持ち悪いので帰ります。ごきげんよう」
「うむ、始祖神の神事、ご苦労であられた。」
どうやら今回のイベントはひとまず終わりのようです。ほんと、勝手に俺を弄るのやめて。
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