肆之弐拾漆 モブ、体が作り替えられてた
何故か信長さんが俺の口で喋ってる、らしい。
誰も信長の声なんて知らないし、大僧正が信長って言ってるから信長なんだろうなー、くらいの認識しかない。それよりも俺の体の自由をなんとかしてください。
この世界で俺の自由意志が無視されすぎるのはどうかと思います。いい加減にして。
信長さんに乗っ取られたっぽい俺の前の空間が突然神聖な空気に変わり、光が現れ始める。
あ、これ、どなたかいらっしゃるわ。もうこういうのはわかるようになってきた。もはや特技と言っても過言ではない。使いどころないけど。
大僧正始め、寅吉の皆さんは狼狽えてらっしゃいます。
「この子の身は私が作り替えました」
現れた綺麗なお姉さまが光りながらおっしゃる。えっと、どなた?
「まさか丹生津比売であられるか?!」
「はい、久しゅうございます」
なに? 大僧正と知り合いなの? 動けない俺をどうにかできませんか?
「久しいの、神領を割譲いただいた時以来か」
「はい、空海…今は天海ですか、仏道の修行も順調に進んでおりますね」
「まだまだ道半ばじゃがの」
ちょっとちょっと、このお姉さま神様はどなたなんですか。なんとかひめってのは聞こえましたけど、大僧正とどういう関係ですか。お綺麗なお顔をもっと見せてくださいよ。
「この方は高野山を拓くときに神領を譲って貰った神じゃよ。丹生津比売と言う。神領からは質のいい辰砂が取れるのでの。お主たち、寅吉の体も元はと言えば丹生津比売の神領より掘ったものなのじゃよ」
「しかしこの寅吉、本当に神威が効かないのですね。加護が強力だとは聞いてましたが、あの御方もご自覚なしで随分な加護を与えたものですね」
神威ってなんなんだろ。なんか神の威光みたいなことだろうか。
「そうじゃの、七海よ、他の者たちを見てみると良い」
どうやら目は動かせるので大僧正の言う通り周りを見る。神使ーズはお行儀よく畏まってる。君達神様は見慣れてるもんね。
しかし鳥さんは石のように固まり、古参寅吉二人は脂汗流してひたすら平伏してる。
お二人ともどうしたの?
「平賀さん、これが本物の神様かいな。これキッツイなあ」
「俺らは加護持ちだからこんなもんで済んでるんだろうよ。けど、指一本動かせる気がしねえ。大僧正は普段だいぶ気遣ってくれてんだな」
「正直、油断したら意識飛びそうですわ。そうか、これでまだマシなんか」
二人でボソボソ会話してる。俺も混ぜてほしい。話できないけど。
「それで七海の体を作り替えたとはどういうことじゃ? そも、何故そんなことを?」
「辰砂を金丹に作り替えました。寅吉の器としてだけでなく、神仏の器にせよ、とあの御方に命ぜられまして」
「あの神が…。ならば已むなしか」
あ、大僧正が頭抱えてる。珍しい、それは平賀さんの芸風ですよ?
「七海よ、お主の体が辰砂でできているという話は覚えておるかの? ああ、無理に話そうとせずとも良い。こちらで心を読むのでな」
返事できないんで助かります。まさか心読まれてありがたいと思う日が来るとは。
「そしてこの丹生津比売が言うにはお主の器の辰砂を金丹…仙人に変ずる薬に作り替えたらしい。確かに辰砂は金丹の材料ではあるが、丹を練るというのはそう簡単な話ではない。さすがは丹生津比売というところじゃが」
「そうそう為すことではありませんよ。今回はあの御方の命ゆえのことですから」
俺に加護くれた天御中主様の、ことですよね。こんなお姉さま神様に命令するとか羨ましい。俺にも少しその力分けてプリーズ。
「この子、金縛りどころか本当に緊張すらしてませんのね…」
「元々の性格もあってのことだろうの」
大僧正、俺をなんだと思ってらっしゃいますか?
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「ぶっくまーく」などもお気が向きましたらお願いいたします。
評価をいただければ、七海が喜んで通報をものともせずに五体投地でお礼に参ります。




