肆之弐拾伍 モブ、荒ぶる神使ーズを見る
猫神使が威嚇し、キツネがオラつき、鳥さんがおらび続けるこの頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
「平賀さん、何故こんな荒ぶる移動動物園みたいなことに」
「さあ? 時の権力者が狙われてるとわかったから、かねえ? 鳥はまあ土御門の式神だからわからんでもないが、猫様と若一様が殺気だってるのはなんでなんだろうな? 多聞はわかるか?」
「少なからず町を整備した幕府に恩を感じたはるからとか? 神使の考えはることはようわかりませんわ」
古参の寅吉二人が首を捻ってらっしゃる。俺を含めた三人が解せない顔をしていると、大僧正が解説を始めてくださった。
「なに、江戸が開かれた結果、この土地は神仏にとって実に整ったものになったのじゃよ。それこそ京を超えるほどにの。江戸はいわば地上の楽土となったのじゃよ。その安寧を乱す輩にはどなたも慈悲を見せぬであろう」
つまり神仏の居心地がいいから騒がしいやつらは許さない、と?
江戸は神仏のリゾート的な場所なの? リゾートではしゃぐパリピを見る隠キャみたいな反発してるわけですか? こっちが神仏っていう絶対的強者なのに?
「今回の件はの、魔王が眷属を使ったわけでもなく、信徒に命じたわけでもなく、自発的に魔王復活を望む者どもがいる、というところが問題なのじゃよ。人界の問題ゆえ、神仏は手出しがそうそうできぬ。」
「えっと、つまり大僧正は下手に動けない、と?」
たしか大僧正は半分仏だから人の問題には首突っ込めないんだっけ。
「少なくとも表だっては動けぬの」
シャーシャーオラオラと荒ぶる神使ーズを見る。こっちはやる気満々だけどいいの? 神使ーズは半分以上神様寄りの存在でしょう?
「猫は産土神の神使であるゆえ、土地のケガレを祓うことを許されておる。先だっての鼠の件も土地の問題ゆえ対応ができた。氏子の七海に権能を使わせる間接的な形ではあったが」
なんか抜け道的な対応だったのか、アレ。あの時はキツネはいなかったけど、今回は大丈夫なのかな。
「我らが作り上げてきた宇賀野御霊大神「うかのみたまおおかみ)の結界を揺るがせはさせぬ! 今こそ関八州稲荷神使の取りまとめ、若一の名を持って眷属に命ずる! 地上の安寧を乱す輩を監視せよ! キツネの名に賭けて仏と人に怪しい動きを知らせるのじゃ!」
おお、キツネがやる気だ。聞いてると監視しかしない感じだけど。
まあこの細腕で危ない連中に突っ込まれても困る。返り討ちにあって人質にされるのがオチだろう。
キツネ巫女の捕縛とかキツネキング先輩が好きそうな絵面だな。縛られて凌辱待ったなしの場面とかフィギュアで作ってなかったっけかな。
あ、キツネが股に尻尾挟んで怯えてる。また心読んでやがるなこの野郎。
「七海くん、いうたかな」
「あ、はい、三番さん。多聞さん? ですよね。なんですか?」
「キツネや犬って全部ネコ目やねんで」
「知らんがな」
今そんなこと言われましても。
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