壱之拾 モブ、チート不可能と知る
「俺? 個人経営の広告代理店。販促のなんでも屋だな。そんで元々、平賀源内は尊敬してたんだよ」
「尊敬ですか?」
「そう、土用の丑っつう、日本で最初の商業キャンペーンを成功させた男だからな。販促屋としては尊敬するべきだろ? で、会えたら会おうと思ってたんだが、どうもこっちには存在しない人物らしくてな。」
「はあ」
「そんなもんだから土用の丑のキャンペーンを俺が仕切ったついでに平賀源内を名乗り始めた、というわけだ」
やべえ、このおっさん胡散くせえ。登場からこっち、胡散臭くない要素がないぐらいに胡散くせえ。
そんな気持ちが顔に出てたらしく、
「俺の役割はこういう胡散くさい役割なんだわ。俺以外は全員実学でな。ざっと本草学、まあ博物学だな、それに地学、化学、冶金学、海洋学、基礎医学、栄養学、農学、天文学、気象学、測量学、薬学、衛生学、数学、河川工学、変わったとこで料理研究家とかだな」
めっちゃ人選しっかりしてますやん。モブの入る隙間ありませんやん。どないしますのん。
いや、社会に貢献する気はないんですけどね。できれば、極力、可能ならばニート志望でござる。模型だけいじっていたいでござる。
そもそも専門家が揃ってるなら俺にできることなんて、鼻くそのかけらほどもないだろうし。
ノーフォーク農法?水田という、表土流出にも連作障害にも強い最強農法があるじゃない。水田が優秀すぎて、日本は経済の基準単位が石高という、お米大好きカントリーだよ。
荒救作物?伝統派なら蕎麦、粟、黍。新作派ならジャガイモ、サツマイモ、どっちも選べるよ。というか農学の寅吉いるし。
石鹸?あるよ、残念ながら高級品だけど。庶民は糠袋やムクロジ、かまどの灰使ってるね。
脚気? 江戸患いな。医学や薬学や栄養学の専門家がいるから楽勝じゃん。ビタミンB群の抽出とか食の改善とか朝飯前っしょ。ドラマでもあったよね。
娯楽? ゲームならカルタや囲碁や将棋があるよ。というか普通に絵双六ってボードゲームあるし。
甘味? 白砂糖使った上菓子も黒砂糖使った駄菓子もあるよ。高級品から庶民向けまで揃ってるぜ。
紙? 鼻かむのに紙使うのは日本くらいだって、外人がビビるくらいの製紙大国だが?紙くず拾ってなんとか生活ができるのは世界で江戸くらいだぞ。
火薬? hahaha、戦国の世は鉄砲の量が世界基準でヤバい保有数だったんだぜ。
プリンやケーキ? ケーキはバターがないから無理だけど、プリンぐらいは献上されてるよ。カステラならあったかな。牛乳は少ししか手に入らないんだと。
「知識チート無理じゃねぇか!」
「だから無理なんだって」
おっさんと話をするほどに自分の存在意義が薄れていくのを感じる。あれ? これ俺いる? いらないですよね?
いかんいかん、知識チートは求められてないんだった。どこまでも一般人の俺が必要なんですよね?必要なの?
「遠い目をしてどうした」
「己の存在意義について考えており申した」
「口調おかしいぞ」
モブというジョブもこれでなかなか難しい。主に俺の自尊心の問題で。
「とはいえ、危急の者はようやく集まったが、まだまださんぷるが足らんからの。お主らの動き次第で次の動きが決まるのじゃから、大いに縁を結んで欲しい。が、無理をせずとも勝手に縁は広がるじゃろ。もうキツネとも知己を得たしの」
監視を公言する狐と仲良しにはなりたくないものである。猫巫女はいないんだろうか?
「ネコの神使もおるのじゃぞ!」
キツネはさっさと帰ってどうぞ。
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