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6.洗礼



「なんで置いていくんだよ!」

「あんたが来なかっただけでしょっ!」


シーッ!


僕たちは、周りの大人から注意された。

大聖堂の中では、静かに行動しなければならない。

声をあげていたのは、バイロンとカリナなんだけど。


(ジェイクも冷たいなぁ)

バイロンが耳もとで、小さな声で言う。


(僕たち、何度もバイロンを呼んだんだよ? 無視したのはバイロンだよ?)

実際、行列に並んでいた人々から、僕たちもクスクス笑われ、恥ずかしかったのだ。


バイロンもそれ以上は、何も言わなかった。


荘厳華麗な大聖堂は、色鮮やかな壁画や色とりどりのガラスが嵌め込まれた窓から、七色の光が差し込んでいた。

洗礼が行われている祭壇には、太陽の光が差しこみ、そこだけが明るくなっている。


祭壇では三人の子どもが跪き、三人の神官がそれぞれ子どもの頭の上に手をかざしている。

これだけの子どもたちを三人でさばいているのはすごいと思う。

体力や精神力も必要だろうから。


祭壇の前で、男の子と、僕とバイロンが留められる。

そこに立っていた神官が、

「皆さんは、この次に洗礼の儀式を行います。儀式にあたり、いくつか注意がありますので、よく聞いておいてください」


「「「はい」」」


前に並んでいた男の子と、僕たちが返事をする。


「皆さんは、それぞれの神官の前にいき、あのように跪いてください」

神官は左手を祭壇に向ける。


「次に、心の中で自分の名前を告げ、『神のご意志により賜りし権能は、我がために使うにあらず。世のため、人のために活かさん』と祈りを捧げてください。声に出してはいけませんよ」


続けて、神官は次のようなことを言った。

 ・大まかな職種は、神官たちにもわかるが、細かい技術や能力は本人にしかわからない。

 ・洗礼を受けた後、技術や能力を確認できるものが目の前に現れるが、意識的に他のことを考えると消える。

 ・神からの授かり物なので、むやみやたらに自分の技術や能力を他人に話してはならない。


「「「はい」」」


僕たちが返事をすると、ちょうど前のグループが祭壇から降りてきた。

期待していたものと違っていたのだろうか。一人の男の子、いや、男性が、さめざめと涙を流しながら帰って行った。


神官に促され、祭壇へのぼる。

三人とも、言われた通りに神官たちの前に跪く。


僕は、心の中で念じる。

(僕の名前はジェイクと申します。神のご意志により賜りし権能は、我がために使うにあらず。世のため、人のために活かさん)


あれ?

何も起こらない。


僕を担当している神官が、小さな声で、

「も、もう一度祈りを捧げてください」

と言う。


僕は黙って頷き、再び念じる。

(僕はジェイクです。神のご意志により賜りし権能は、我がために使うにあらず。世のため、人のために活かさん)


何も起こらない??


一緒にのぼったバイロンと男性は、すでに祭壇から降りようとしていた。

「ま、まさか?」

神官が首をひねり、他の神官二人を手招きする。


三人の神官に囲まれ、

「もう一度祈りを捧げてください」

と言われた。


不安になりながら、黙って頷く。

(私は、マロネ村のジェイクと申します。神のご意志により賜りし権能は、自分のためだけに使いません。世のため、人のために活かします!)


次の瞬間、

バリバリバリバリッ!

耳をつんざくような音が響き渡り、僕は気を失った。


***


あたしは、神官の説明を聞き、祭壇を見上げると、ジェイクとバイロンと、もう一人の男の子が膝をついて祈りを捧げていた。


しばらくすると、涙目のバイロンと男の子だけが立ち上がって、祭壇を降りようとしている。


あたしは小さな声で、説明をしてくれた神官に尋ねる

「あの、何が起きているんですか?」

口を開け、呆然とする神官。


ジェイクは三人の神官に取り囲まれた。


「ジェイクに何をしているんですか?」

不安を覚えたあたしは、神官のローブをつかみ、引っ張る。


「あ、すみません。先ほど、カイル様の洗礼でも同じようなことが行われて……私も、何が何だか……」


「ジェイクも勇者になるの?!」

カリナも尋ねる。

「いや、それはないと……」

と神官が答えかけた時、


まぶしい光がジェイクを包みこんだ。


バタンッ!


ジェイクが倒れた。

「ジェイクーーッ」

あたしは、祭壇へ駆け上がる。

「ジェイク? ジェイク? 大丈夫?」

「君、落ち着いて!」

神官の一人が言う。


あたしはその神官を睨み付け

「ジェイクに何をしたんですか?!」

黙りこむ神官たち。

「ジェイク! ねえ、起きて!」


異常に気づいた大聖堂の職員たちが駆け寄ってきた。

「き、君は下がって!」

「ジェイクは大丈夫なんですか?」

あたしはカリナとバイロンに引きずられるようにして、祭壇から降ろされた。


祭壇前で説明をしてくれた神官が、

「君たちは、彼と同じ地域から来たのですか?」

「そうです。マロネ村からやって来ました」

「今から彼を医務室へ連れて行くから、洗礼が終わったら、様子を見に行ってあげてください」

お手数ですが、是非とも評価をお願いいたします。


少しずつですが、定期的に更新できるよう、頑張ります。


誤字・脱字や読みづらい箇所があれば、お知らせください。





((ポイントアップキャンペーンは終了しました。))


カイルの視点です→ https://ncode.syosetu.com/n0791fw/ (あまり筆が進みません)

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