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55.面会

領都の大通りを、三人の女性があるいていた。


「あ、ミリアちゃん、これ、持っていきな!」

露店の女性が、店先のリンゴを袋に入れて渡す。


「ありがとう! また、あとで、伺います!」


「あら、そう? 帰りに寄ってね!」


「ミリア嬢、次の討伐の時には、俺も仲間に入れてくれよ!」

若い冒険者風の男が、声をかける。


「ああ、考えとくよ!」


そういうやり取りをしながら、三人はタイゼン・ド・ボルドー辺境伯の屋敷に向かう。


ボルドー伯の前任者は、開拓が進まなかったこともあり、安全性を高めるために屋敷と広大な土地を石垣やフェンスで囲っていた。

その結果、領民たちとも精神的な隔たりが大きかったようだ。


しかし、ボルドー伯は、領民とのコミュニケーションを大切にする人物で、屋敷がある広大な敷地は、領民が自由に往来できるようになっていた。


屋敷前には、衛兵が二人立っている。


「私は、冒険者のミリアだ。タイゼン様に取り次ぎを願いたい」


衛兵は黙って右手を挙げ、敬礼をし、屋敷の中に入って行った。


しばらくすると、スリーピーススーツに身を包んだ男性が、衛兵とともに現れた。


「わたくしは、ボルドー家の執事を務めております、ポールと申します。かの名高きミリア様の突然のご訪問、大変恐縮に存じます」


ポールは深々と頭を下げる。


しかし、真意は「冒険者ごときがアポなしで来訪するのはあり得ない」という意味である。


「あぁぁっ! あのときのヒツジさん!」

カリナの大声に、驚いて顔を上げるポール。

衛兵たちも、目が点になっている。


ゴツン


ミリアさんのゲンコツが落ちる。

頭をおさえるカリナ。


「お久しぶりでございます。あたしたちは、マロネ村のユリアとカリナと申します。洗礼の日に、カイル様にお声かけいただいた者でございます」


「ああ、あの時の! すっかり美しくなられて……気づかずに、申し訳ありません。カイル様もお約束を守れなかったと、いたく気に病んでおられました……ちょうど、今朝方、カイル様もこちらへお戻りになられたところです! さあ、どうぞお入りください」


気まずそうなミリアを先頭に、ポールが応接室へ案内する。


「こちらで少々お待ちください」


「「「ありがとうございます」」」


ポールは、スッといなくなり、メイドたちが入れ替わりで、茶菓子やカップ、お茶を準備する。


「わあ、美味しい!」

「香り高いお茶だな!」

ポリボリポリボリポリボリポリボリポリボリ




「おかわり!」


ゴツン!

2度目のゲンコツ。


しかし、メイドはさりげなく茶菓子を追加してくれた。


2杯目のお茶を飲み終えた頃、


コンコンコン


と応接室のドアがノックされ、ドアがひらく。

三人も慌てて立ち上がった。


タイゼン伯、カイル、ポールの順に入って来る。

同時にメイドたちが、スッと消える。


「はじめまして、タイゼン様、カイル様。私は冒険者をしております、ミリアともうします」


「はじめまして、タイゼン様。あたしはミリアの妹でユリアともうします」


「はじめまして、タイゼン様。私はカリナともうします」


「あー、良い、よい。堅苦しい挨拶は、抜きにしようではないか?」


タイゼン伯は席につくように促し、フランクに話しかける。

「君たちは、あの、ジェイク君の知り合いということだね?」


「はい、同郷の幼なじみでございます」


「ジェイク君には、今、マロネ村の南部に城壁を建造してもらっているのだが……」


「はい。存じております。本日は、その件について、ご判断を仰ぎたく馳せ参じました」


「ウコボ川と、東側の城壁についてであろう?」


「は! 左様でございます。現在、ウコボ川の河畔まで城壁が完成致しております」


「「「!!」」」


タイゼン伯、カイル、ポールの目が点になる。


「い、今、なんと?」

驚きの余り、このような場面では一切口を出さないポールが尋ねる。


「はい。ウコボ河畔まで城壁と堀・見張り小屋が完成しております」


「……」

信じられないという表情のポール。


「じ、ジェイク君の能力は想像以上だな……つまり、堀とウコボ川を接続すると、クロコーディルやヒッポなどによる被害が懸念されることと、ウコボ川以東の城壁をどうするか、ということかね?」


「ご賢察のとおりでございます」


「私も一度、ジェイク君が造った城壁を見たが、クロコーディルやヒッポ程度で破壊されることはあるまい。ピラニャにせよ、小型のクロコーディルにせよ、貴重なタンパク源だ。見張りの者たちにとっても、適度な暇潰しにもなろう。堀とウコボ川の接続を認めようではないか。必要な場所には橋も掛けて欲しい」


「は! かしこまりました!」


「ウコボ川以東については、西側の城壁が完成した後、改めてお願いをしようと思うが、どうか?」


「ジェイクは、半月くらいで出来るって言ってましたよ?」

カリナが口を挟む。


「「「な?! 半月?!」」」


「父上、わたくしが領兵の一分隊を連れて、マロネ村に向かいたいと存じますが……」


「しかし、お前には、勇者の……」


「もちろん、魔王を討伐しますが、わたくし自身、まだまだ修行の身です。スキルを磨き、レベルアップを図るためにも、派遣のご命令を!」


タイゼン伯は、ポールを見遣る。


ポールは黙って頷いた。


お手数ですが、是非とも評価をお願いいたします。

少しずつですが、定期的に更新できるよう、頑張ります。

誤字・脱字や読みづらい箇所があれば、お知らせください。


2月は本業が繁忙期に入りブラック状態になります。

更新が遅れるかもしれませんので、ご容赦ください。

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