52.金のにおいがするわ!
「「「はあ……」」」
タイゼン様との話を聞いた三人は、揃ってため息をつく。
「もう、なんか……」
「ジェイク君だね……」
「残念過ぎるお人好し」
なぜか、僕の名前が良くない意味になっている?
ポケットから顔を出しているサラが、
「ねぇ、この露出狂女、燃やしていい?」
(気持ちはわかるけど、やめておこうね)
「ハイ!ハイ!ハイ! あたし、ジェイクのお手伝いがしたい!」
ミリアが元気良く名乗り出る。
「えぇ~……また岩石運び~?」
とカリナが嫌そうに言うと、ミリアさんが、
「カリナは、実家に帰っていてもかまわないぞ? 身体も鍛えられるし、楽しそうだから、私も手伝うよ、ジェイク君」
「ミリアお姉様! 私だけノケモノにしないでください!」
とりあえず、三人も城壁作りに参加するみたいだ。
「あ! 危ない!」
三人の後ろにゴルリディアが現れた。
ボッ!
ゴルリディアが全身から発火する。
グギ……
氷の塊が溶け始め、まだ凍っていたはずの巨大オオカミの口から、ゴルリディアが出てきたようだ。
「ミリアさん、ゴルリディアは、氷漬けにしても死なないんですね!」
「あぁ、そのようだな……初めて知ったよ」
「いや、凍らせ方が甘かったんだと思う……」
「露出狂女の言う通りよ。アレの周りだけが凍っているだけで、魔物の体内はまだ凍ってないもの」
ポケットからサラが解説してくれたが、三人には全く聞こえていない。
早速、条件反射のように三人が解体を始めた。
僕は、骨と灰の中から魔石を探す。
「その黒いヤツが魔石よ」
「あ、これか……ありがとう」
続けて、焼け焦げた、最初の3匹のところへ向かう。
独特な臭いが鼻を突く。
中途半端に燃やすと、こんな感じになるのか……一気に骨になるまでやる方が良さそうだな。
ボンッ
青白い炎が3匹を焼き尽くす。
間もなく、骨と灰だけになった。
再び魔石を探していると、
「ジェイク君の火力はすさまじいな」
とミリアさんを先頭に、三人が血まみれになった姿で近づいて来た。
「うわっ!」
「驚かせてすまない。どうせなら全部解体しようと思ってたんだ……」
「そういうことなら、水を出しますね!」
三人が腕や顔を洗う。
「あースッキリした! ありがとう、ジェイク」
「ご苦労!」
「ねぇ、コイツやっぱり燃やしていい?」
「「「誰?」」」
「え? サラの声が聞こえるの?」
「もしかして、ジェイクのポケットの中にいる?」
ユリアが目を凝らして、僕を見ている。
「見えるの?」
「うっすらと見えているぞ?」
ミリアさんにも見えているようだ。
「魔石のせいじゃない?」
サラが事も無げに言う。
僕は、ズボンのポケットから魔石を取り出し、サラに近づける。
「「「あ! 見える!」」」
「私の声も聞こえてるんじゃない?」
「「「聞こえる!」」」
「これでサラちゃんとも話ができる!」
なぜかユリアが嬉しそうだ。
「別に私は……ゴニョゴニョ」
サラは、顔を真っ赤にしている。
「サラは、魔石の効果を知っていたのか?」
「もちろん知っていたわよ」
「どうして教えてくれなかったんだよ?」
「だって、アンタは、魔石が無くても見えてるし、話もできるからいらないでしょ!」
「まあ、それはそうだけど……ちなみに魔石って他にどんなことができるの?」
「それはあの三人の方が詳しいんじゃないの?」
三人の方を見ると、揃って首を横に振る。
「基本、換金目的だし……」
「私も討伐証明としか……」
「あたしも知らない……」
「そこの露出狂女! 今回の魔石を持って、魔法を使ってみなさいよ!」
「え? 露出狂?」
カリナが自分のことかと指をさす。
「アンタよ! 恥ずかしげもなく脱いでたじゃない!」
カリナは11個の魔石を左腕で胸元に抱え、
「えいっ」
と杖を前に出した。
ピキピキピキッ!
僕たちの目の前に氷の柱が出来上がった。
「「「「!!!!」」」」
僕たちは、驚き、唖然としてしまった。
「え? 本当に知らなかったの?」
四人で首を横に振る。
「ねぇ、サラちゃん。魔法だけしか強化されないの?」
「んー……じゃあ、ジェイクは2つくらい持ってみて、火の玉を撃ってみなさいよ!」
サラに言われた通りに火の玉をイメージすると、僕の頭の5倍くらいの大きさの火の玉ができる。
この辺りを延焼させないように、空に向かって投げた。
火の玉は上空で弾けるように散っていった。
「私たちは魔法を使えないんだが、他に魔石の使い道はないのだろうか?」
「あの、髭面のおじさんに、武器に混ぜてもらえばいいんじゃない?」
「マゴローさんのこと?」
「そうそう、あのおじさん、すごい武器を作りたいって言ってたじゃない?」
「確かに言ってたけど……魔石にそんな効果があるなんて……みんな知ってるのかな?」
「私たちは不勉強だったが、売買されるということは、何らかの利用価値を知っているからだろう」
「ギルドでもそんな話は聞いたことないよね? お姉ちゃん」
「ああ……」
「金のにおいがするわ!」
カリナが目を輝かせている。
お手数ですが、是非とも評価をお願いいたします。
少しずつですが、定期的に更新できるよう、頑張ります。
誤字・脱字や読みづらい箇所があれば、お知らせください。
2月は本業が繁忙期に入りブラック状態になります。
更新が遅れるかもしれませんので、ご容赦ください。




