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41.お静かに願います

「しかし、ジェイク君がいた辺りの草木が燃えた跡があったんだが、その後、どこにもサラマンダーが通った形跡がないんだよ」


ああ、もう誤魔化すのは止めよう……


「あの、どこかで食事をしながら、話しませんか?」


「やっぱり、何か知ってるのね? まさか、また、手懐けた……むぐっ!」


鋭いカリナの口を押さえ、


「バイロン、どこかゆっくり話しができる店を知らない?」


「ああ、会長が重要な商談をするときに使っている店があるぜ……でも、かなり高級店だけど、大丈夫か?」


「たぶん、大丈夫だと思うけど……」


僕たちは、領都の中心部から離れた格式のある店の前に立つ。

確かに超高級そうな店だ。


「じゃあ、みんなはここで待っててくれ」

バイロンが先に入り、交渉してくれるらしい。


服の中から、サラが、

「私をどうする気? この女冒険者たちに殺させるの? 見世物小屋に売るつもり?」

とうるさいので、ミリアさんたちから少し距離をとって、

「大丈夫、そんなことにはならないから」

と小さな声でなだめる。


店からバイロンが出てきた。

「とりあえず、個室をお願いしたけど、ジェイク、本当に大丈夫か?」


「ああ、なんとかするさ」

手持ちのお金で足りなければ、キャベツとキュウリの代金、80万ヨールの小切手もある。


スイをつなぎ止め、僕たちは店の中へ入った。


店員さんは、みな整然と並び、ピシッとした同じデザインの服に身を包んでいた。


案内されるがまま、広い個室に入る。


珍しい円形のテーブルで、5つの椅子が均等に置いてある。


席に着くと、すぐに泡立つ飲み物がグラスに注がれた。

みんなバイロンに注目する。


バイロンが軽くグラスを挙げて、半分くらい飲む。


四人が一斉に真似をする。


小皿に乗った食べ物が出てきた。


「バイロン! こんなんじゃ足りないわよ!」

カリナが文句を言うが、バイロンは口元に人差し指を立てて、何も言わずに、外側にあるフォークとナイフを器用に使って食べ始めた。


食べ終わると、バイロンが、

「食事について文句を言ってはダメなんだ。食べながらしゃべってもダメ。食事と食事の間に、普通に会話するのは、大丈夫。フォークやナイフの使い方は、俺を見て真似をしたらいい」


いくつかの料理が出てくるたびに、一斉にバイロンと同じように食べる。

みんな緊張しているようだ。


「さて、次がメインだ。ジェイク、話していいぜ」


「ああ、ありがとう」


僕は、服の中から、サラを取り出す。

テーブルの上で、サラがキョロキョロしている。


「ジェイク君? 何をしているんだい?」

ミリアさんが不思議そうに尋ねる。


そうか、みんなには見えないんだ。

どうやったら、見えるんだろう?


僕は、指先に火をともすイメージをした。


指先がろうそくのように燃える。


「「「「??!!」」」」


四人の顔がひきつる。


「ジェイク、魔法も使えるようになったの?」

ユリアが恐る恐る尋ねる。


「いや、これは、火の精霊の力を借りてるんだよ。今、ここにいるんだけど、みんなには見えないんでしょ?」


四人が黙ってうなずく。


森の中でサラと出会い、今に至った経緯を話す。


「じゃあ、ジェイクは、私の魔法よりすごい力を持ってるってこと?」


「カリナよりすごいかどうかはわからないけど……」

と言いかけると、


「こんな女には負けないわよ?」

とサラが言う。


カリナに聞こえなかったから、良かったものの、喧嘩を売ってどうするつもりなのだろう。


「熱くないのか?」

指先の火を消すと、バイロンが近づき、僕の肩に手を乗せた。


「うわ! 見えた! 妖精みたいなのがいる!」


「失礼ね! 妖精なんかじゃないわよ! 火の精霊よ!」


「す、すみません……」


バイロンが慌てて、肩から手を離す。


「あれ、見えなくなったぞ?」


再び、バイロンが、僕の肩に手を置く。


「ジェイクに触れると、火の精霊の姿が見えて、声も聞こえるみたいだ」


三人が席を立ち、次々に頭や肩の上に手を乗せる。


「「「ほんとだ……」」」


「えーと、この子は、サラ。火の精霊で、オルタ迷宮からやってきたらしい」


「ジェイク君! 精霊と契約を結ぶなんて、聞いたことがない! キミはどうなってるんだ?」


「ねぇ、ちょっと! ジェイクをバカにしないでよ!」


なんで、サラは喧嘩腰なんだろう?


「バカにしているつもりはない。むしろ、畏敬の念を持っているくらいだ!」


「あら、冒険者なのに、物分かり良いのね……」


そうか、サラは、冒険者に対して苦手意識があるのか……


「ミリアさん、サラが失礼な言い方をしていますが、おそらく迷宮の中や、迷宮を出てからも冒険者たちから一方的に敵意を向けられたんだと思います……だから、大目に見てあげてください」


グス、グス……

また、サラが泣き始めた。


「なんで、アンタはそんなに優しいのよーっ!」


「それが、ジェイクのいいところでしょ?」

ユリアがサラに言う。


「それしか取り柄がない」

カリナがそんなことを言うので、


「カリナは、もう、ウチに出入り禁止!」


「なんで私には優しくないのよ?!」


「カリナ、自業自得って言うんだぜ?」


「「「「あはははっ」」」」


みんなで大爆笑していると、店員さんがやってきて、

「お静かに願います」

と叱られてしまった。

お手数ですが、是非とも評価をお願いいたします。


少しずつですが、定期的に更新できるよう、頑張ります。


誤字・脱字や読みづらい箇所があれば、お知らせください。

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