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3.領都までの道のり

「そうか、君のご両親は、この街道で……」

スミスさんは、歪んでしまった軽量鎧の左腕の部分を外していた。

戦いの後、ポーションを飲んでいたので、痛みは治まったようだが、露出した左腕はパンパンに腫れ上がっていた。


「去年、確か、珍しいメガティガーとかが出たというあれか?」

マイクさんも少し休んで落ち着いたようで、話に加わってきた。

「はい、そのメガティガーに襲われたみたいです」


領軍も調査していたので、そのくらいは知っているだろう。どこの誰が襲われたか、ということまでは知らないようだが。


「さっきの魔物にしろ、メガティガーにしろ、ゴルリディアという寄生型の魔物に侵されると、巨大化するという報告があってな……」

「さっきスミスさんに巻き付いていたのが?」

「あぁ、そのゴルリディアだ。」


マイクさんが付け加える。

「ゴルリディアに侵された魔物は、まず、頭をやられちまうんだ。イカレたように片っ端から獲物を食い漁って、どんどん巨大化していくっていうんだ」


その話を聞いていたユリアが、

「あ、そうだ! お姉ちゃんにきいたことがある! どこかの村が、大きなワイルドボアにめちゃくちゃにされたって」

「あぁ、領都の南東にあったファルサックという村だな。」


「村は壊滅したんだけどよ、巨大化したワイルドボアは、あの美しいミリア嬢が一太刀でゴルリディア諸共切り捨てたんだってよ! すげぇよなぁ……」

それにすかさず反応したのはカリナだった。

「ミリアお姉様は、いつもそんな相手と戦っておられるのですね! しかもあの美貌を保ったままっ! でも、あのお美しさが魔物なんかに傷つけられてはたまったものではありませんわ!」


カリナの勢いに驚きつつも、マイクさんが、

「へぇ、おまえたちもあの美しき女性騎士ミリア嬢を知ってるんだなぁ」

「知ってるも何も……ミリアお姉様とは義理の姉妹の杯を……」

「うそつけ」

隅っこで丸まっていたバイロンがつぶやいた。


「あんたは黙ってなさいよ!」

首をすくめるバイロン。


「でも、マイクさん。ミリアお姉様の、実の妹がここにいますわよ!」

ビシッとユリアを指さす。


「へぇ……」

真っ赤になっているユリアを、物珍しそうに見るスミスさん。

「マジか! 君、名前は? ミリア嬢とお近づきに……」

少々食い気味のマイクさんをスミスさんがたしなめる。

「止めとけ、マイク。みっともないぞ。さあ、そろそろ出発しようか。遅くなれば、また魔物に出くわさないとも限らない」


1日かけて領都まで移動するため、みんな小さな背負いバッグに携帯用の食料や着替えを入れている。

ユリアやカリナは水場で顔を洗い、僕やスミスさんは、刃物の汚れを落とした。

バイロンだけは、明日の洗礼のために準備してもらったらしい、礼服を着ている。


僕たちは水場を後にし、領都に向かった。


それからは、特に魔物に襲われることもなく、順調に進めた。


それでも、領都の城壁が見えるころには、すっかり日も暮れていた。


「ようやく領都が見えてきたぞ! 君たちは、明日洗礼を受ける。つまり、一人の大人として扱われる。だから帰りは私たちはいない。わかってるな?」

何人かの、ゴクッという唾を飲む音が聞こえた。


もし、村へ帰る途中に魔物にあったらどうしよう、と不安に思っているのだろう。

しかし、洗礼を受けることで、何らかの能力を手にすることができるのだ。


マイクさんも言ってたけど、神様は気まぐれだから、僕たちは誰も力を手に入れられないかも知れない。


逆に、全員が神様の寵愛を受けるかもしれない。

まさに、「神のみぞ知る」わけだ。


しばらくすると、領都の門が見えてきた。


門から街道の入口まで、かがり火が焚いてある。


僕たちのように地方から出てくる子どもたちのために準備してくれているのだろう。


「ちょっと手続きをしてくるから、軽く食事でもしててくれ」

そう言うとマイクさんが門番の兵士たちのところへ走って行った。


僕は肩掛けのバッグに、携帯食料を入れていたが、他の子どもたちは背負いバッグから携帯食料を取り出した。


「これ、パサパサでおいしくないんだよね」

「あたしも嫌い」

女子二人が愚痴をこぼしている。


「それでも君たちの家族が準備してくれたのだろう? でも、明日からはそんなことを言ってられなくなるぞ」

スミスさんが、まるで我が子に言うかのようにたしなめる。


僕たちは黙って携帯食料と水で腹を満たした。

門からマイクさんが戻って来た。手にはなにやら書類がある。

「今さらだけど、君たちはマロネの村の、えーと、ジェイク君、バイロン君、ユリア君、カリナ君、で、間違いないね」

「「「「はーい」」」」

これで無事に領都に入れるようだ。


このあとは、洗礼が行われる教会に向かい、地方から出てきた子どもたちは、大聖堂の隣にある建物で夜を明かす。つまりは雑魚寝だ。


当然、領都に住んでいる子どもたちは、明日、自宅から大聖堂へやって来る。


宿舎は集会所のような広い部屋だ。男女はもちろん別棟になっている。


蝋燭が灯してあるものの、そんなに明るくはない。

かろうじて座っていたり、横になっていたりするのがわかる程度だ。


いくつかグループが出来上がっている。

おそらく、同じ町や村からやって来た子どもたちなのだろう。


僕とバイロンは、部屋の端の空いている所に、支給された毛布を敷いた。

特に寒い訳ではないので、バッグを枕にして寝るといいかもしれない。


毛布の上に座り、明日のためにバッグの中身を確認していると、

「今日のこと、秘密にしてくれよ」

蚊の鳴くような声でバイロンが言う。


「うん、誰にも言わないよ」

寝ている子もいるので、僕も小さな声で答える。

「ほんとか?」


「誰にも言わない。明日の朝は早いから、もう寝よう、バイロン」

「ああ、そうだな。おやすみ、ジェイク」

「うん、おやすみ」


旅の疲れから既に寝息を立てている子。

何度も寝返りをうっている子。

離れた所にいる別のグループは、まだヒソヒソと話をしている。


僕も疲れていたのだろう。すぐに眠りに就いた。


お手数ですが、是非とも評価をお願いいたします。


少しずつですが、定期的に更新できるよう、頑張ります。


誤字・脱字や読みづらい箇所があれば、お知らせください。




アナザーストーリー~不定期です

『神様の気まぐれってやつで勇者にはなってしまったけど、人の役に立つことはそれなりに大変です。』https://ncode.syosetu.com/n0791fw/

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