31.生でも食べられる野菜は?
荷馬車の荷台にフリンを乗せ、村に戻ってきた。
フリンは、僕の家の玄関――木の板を打ち付けただけのもの――を見るなり、
「あははは、なんだよこれ! 中には入れないじゃないか!」
「応急処置だったから、仕方なかったんだよ」
荷台から飛び降りたフリンは、家や倉庫の周りを見て、
「うーん、そうだなぁ……馬小屋を建てる木材はあるのか?」
と尋ねてきた。
以前、荒れ地を開墾したときに、何本か太い木を抜いて、重ねていたことを思い出す。
「あそこに何本か重ねているけど?」
二人で、その場所に行くと、
「あーこれじゃダメだ。もっと乾燥させないと……あと、このサイズの木が5本は欲しいなぁ……」
「わかった、じゃあ、ドアの修理なんかを先に頼んでもいいかな?」
フリンが怪訝そうな顔をする。
「いや、『わかった』って簡単に言うけど、木材の乾燥なんて、すぐにはできないぜ?」
「うーん、じゃあ、見ててくれる?」
口で説明するよりも、実際に見せた方が早いと思い、(重力操作)で同じくらいの太さの木を持ち上げる。
ボコッ! ボコッ!
ブチブチブチッ!
木が持ち上がり、太い根が次々に切れていく。
「!」
フリンはあんぐりと口を開けている。
続けざまに5本の木を抜き、横にして重ねていく。
(日照調整)と念じ、丸太の周辺だけ、局地的に日の当たりを良くした。
これで、乾燥も大丈夫だろう。
「ジェイクッ! 君、《ファーマー》じゃないのか?!」
「《ファーマー》だよ。開墾にも、植物の生育にも必要なスキルだからね」
ただ、僕にも、やっていることはムチャクチャだという自覚はある。
「そりゃ、そうだけど……」
「あとは、乾燥するのを待つだけだ。フリン、お願いしてもいいかな?」
フリンはあまり納得していないようだが、気持ちを切り替えたようで、
「あの倉庫を、造り替えてもいいかい? 馬小屋と倉庫をまとめて作ってやる!」
「うん、ありがとう! それでお願いするよ!」
フリンが作業に取りかかる。
僕は新しいスキルを試してみる。
大量の、聞いたことのない野菜の名前らしきものが羅列された。
「こんなにあると、なにが何か、わからないんだけど……」
あまりにもたくさん表示されるので、
「生でも食べられる野菜は?」
と、自分のスキルに尋ねてみる。
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ファーマー レベル5
EXTRA SKILLS
新種創造(小)
-オオバ
-キャベツ
-キュウリ
-ショウガ
-セロリ
-ダイコン
-タマネギ
-トウガラシ
-トウモロコシ
-トマト
-ニンジン
-ニンニク
-ネギ
-パプリカ/ピーマン
-ホウレンソウ
-ミズナ
-ラディッシュ
-レタス
-ワサビ
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これでも多いと思うが、少なくとも、ボルドー辺境伯領では栽培されていないものばかりだ。
そもそも、聞いたことがない。
そういう意味では「新種」だと思うが、どのようなものかもわからない。
とりあえず、生のまま食べる野菜という前提で5種類ずつ作ってみよう……
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ファーマー レベル5
大地の神の加護
重力操作(小)
耕地管理(小)
-土壌改良(小)
-区画整理(小)
-自動施肥(小)
地熱操作(小)
鉱石採掘(小)
EXTRA SKILLS
城壁組成
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お、ちょうどいいスキルがある!
(区画整理)と念じると、カボチャを作っていた畑が、見事に5つの区画に分けられた。
それぞれの野菜に合うように、
(土壌改良)
(自動施肥)
と念じながら、土を掘り起こす。
これだと、スイの落とし物が余ってしまうな……。
畑の奥にある、スイのトイレのことだ。
近所の農家の皆さんに、お裾分けをした方がいいのだろうか……
そんなことを考えながら、鍬をふるっていると、
――オオバの種を蒔きますか?
――キャベツの種を蒔きますか?
――キュウリの種を蒔きますか?
――種ショウガを植えますか?
――セロリの種を蒔きますか?
それぞれの区画で、尋ねてくるので、すべてに「はい」と答える。
オオバってどんなのかな、とか、ショウガはたぶん芋と同じなんだろう、と想像しながら作業を進めていくと、あっという間に時間が経ってしまい、夕暮れが迫っていた。
リンゴの木を見に行くと、緑色だったものが少しずつ赤くなっている。
前回は、一本の木だけに(成長促進)をかけたが、他の木は放置していた。
特に赤く色づいているリンゴを3つほど採って、フリンが作業をしている、我が家の前へ向かった。
「え?」
僕は、自分の目を疑った。
もとの家の横に、さらに立派な家(?)が、ほとんどできあがっているのだ。
たしか、倉庫をお願いしたはずだが……
もとの家の玄関は、まだ何もない。
壊れた玄関から家の中を覗いて見ると、一部の屋根や壁や窓がなくなっている。
「おーい、フリン! これ、どういうこと?」
新しい建物に向かって呼びかけると、ドアを開けてフリンが出てきた。
「あ、ジェイク、ちょうど良かった。仮の家ができたんだ!」
「仮の家? そ、倉庫は?」
「えーと、これが、倉庫と馬小屋になる予定だよ?」
「うーん。わからないよ! どういうこと?」
「あーごめん、ごめん。それはね……」
そう言って、渡したリンゴをかじりながら、フリンが説明してくれたことには……
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