23.薄切りカボチャの天日干し
「あいたたたた……」
腰を押さえて立ち上がるユリア。
「ふう、普段使わない所が鍛えられるな」
トレーニングの後のように汗をぬぐうミリアさん。
「カボチャかぼちゃカボチャかぼty……」
ブツブツと呪詛をつぶやくカリナ。
僕は、カボチャを焼いたり、揚げたり、煮込んだりして、三人の労働に応える準備をしている。
カリナがおかしくなりそうなので、芋も調理している。
最初は、重力操作でカボチャを浮き上がらせて、腰を曲げなくてもいいような位置で収穫をしてもらおうとしたのだが、
「それでは罰にならない!」
とミリアさんが言い張り――ユリアとカリナは当然反対したが――普通どおりの収穫作業となったのだ。
ただでさえ、中身がしっかりと詰まって重たいカボチャが、同じ面積の畑とくらべて、2倍強も実っているのだから、大変な重労働だ。
「よし、できた!」
テーブルがないので、並べようがない。
ヒヒヒヒヒーンッ
スイが大きな声でいなないた。
僕は慌てて外へ飛び出す。
しまった! 遅かった!
ポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリ
ポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリ
スイとカリナが薄切りにして天日干ししていたカボチャを、我先にと食べている。
僕は大きな声で、
「待てっ!」
と叫んだ。
ピタッと止まるスイとカリナ。
「スイ、これはお前のご褒美だから、食べてはいけないと言っただろう?」
「でも、でも、この人が、ご主人様が作ってくれたものを勝手に食べ始めたから……」
「それでも、ダメだよ! 勝手に食べちゃ!」
「ご主人様、申し訳ありません……」
スイを叱って、カリナの方を向く。
「カリナ、君が先に、スイのおやつを食べ始めたようだね?」
「う……」
ゴツン
ミリアさんからゲンコツを落とされたカリナ。
「ご、ゴメン……」
三人の後ろを見ると、収穫箱に入りきれないカボチャが山積みになっている。
「ミリアさん、ユリア、そして、カリナ、ありがとう! 大変だったよね? お昼を準備したんだけど、テーブルがないから外で食べよう! とりあえず手を洗って!」
手を洗って、盛り付けた大皿を、平らになっている石垣の上に置く。
石垣(荒れ地の岩石)についていた土や泥は、給水というスキルを使って洗い流していた。
「そういえば、これは何?」
ユリアが尋ねてきた。
「石垣だよ。かっこいいでしょ? あのあたりを耕そうとしたら、石がごろごろ出てきちゃって、ちょうどウチと道との境界線になりそうだったから、作ってみたんだ」
「「「……」」」
絶句する三人。
「ジェイク君。これを、この長い石垣を、全部、一人で作ったのか?」
「はい」
「あんた、何でもアリね」
「みんなもレベルが上がって、スキルとか増えたんじゃない?」
「あぁ、ユリアもカリナもレベルは4になったようだが、特に目新しいスキルはないようだ。だが、体力と精神力は間違いなく向上したぞ!」
「へえ、ユリアもカリナも頑張ってるんだね! 僕も頑張らなきゃ!」
「えへへ」
嬉しそうなユリア。
「あんたはもう少し自重した方が良くない?」
「カリナが、それを言う?」
僕は、食い荒らされたスイのおやつを指さす。
「あははは! カリナの負けだ。おとなしく、昼食をごちそうになれ」
素揚げした芋とカボチャ、カボチャを甘辛く炊いた煮物、薄く切ってかまどの炭火で焼いたカボチャ。
デザートは、芯を途中までくりぬき、その中に蜂蜜を入れて蒸したリンゴを出した。
スイには、リンゴとカボチャを乱切りにしたものをあげた。
***
「うーん、もう食べられない!」
カリナがごろんと転がる。
「「全部美味しかったよ!」」
ミリアさんとユリアも絶妙なタイミングでハモっていた。
「ご主人様! スイは幸せです~!」
「そっか、今度領都に行くときは、かなり重たいかもしれないけど、頑張ってくれよ!」
「はい! 頑張ります!」
「ジェイク、今、誰と話してんの?」
切り込み隊長のカリナが、ぶっ込んでくる。
姉妹も疑わしそうに僕を見る。
「……スイと」
「「「はぁ?」」」
三人が一斉に驚く。
「またあんたのトンデモスキル?」
「動物とも話せるの?」
「ジェイク君はどこに向かってるんだ?」
「ご主人様、申し訳ありません」
「あぁ、いいよ。気にしなくて」
「は? 今なんて言ったの?」
「いや、『申し訳ありません』と」
ご主人様とか言うと、またカリナが暴れそうなので、言わないでおく。
「まぁ、そんなことより、カボチャを村の人にお裾分けしたいので、手伝ってくれる?」
「「「そんなこと、じゃないんだけど……」」」
あまりに重たいので、荷馬車に乗せ、村中の家々を回りカボチャをお裾分けしていった。
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