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18.カナン商会(2)

僕はふと思い出し、

「エリスさん、すみません。芋はこれだけではないんです……あと、十数箱あるんですが……」

「結構です。全て我がカナン商会で買い取らせていただきます!」

「ありがとうございます! どちらに運び入れましょうか?」

「そうですね……では、裏の倉庫にお願いするわ。バイロン、ご案内を!」

「はい」


芋を倉庫に納め、同時に計量してもらうと、約300キロあった。


エリスさんから30万ヨールの小切手を受け取り、

「ありがとうございました」

とお礼を言うと、

「こちらこそ、あんなに素晴らしい芋を譲っていただき、ありがとうございました。おそらく、来週には売り切れていることでしょうね」

品のある笑顔で、そう言ってくれた。


僕は、その笑顔に甘えてみようと思い、

「ちょっとご相談があるのですが……」

とエリスさんに投げかけてみた。


「ええ、わたくしにお答えできることがあれば、なんなりと……わたくしもジェイクさんにご相談しやすくなりますわ」

ギブアンドテイクのようだが、悪い気はしない。


「今回、バイロンの実家からロバと荷車を借りて来ました。でも、申し訳なくって、自前で荷車を準備しようと思っています。どこか、良い所はご存知ではありませんか?」

「ジェイク、いつでも言ってくれよ! 俺からも父ちゃんに言っておく……」

「バイロン? お客様ですよ!」

「は、はい、会長。失礼致しました!」

うらやましいくらい素晴らしい先生だ。


「ふむ。それならば、ウチの荷馬車をお貸し致しましょう」

「え? 馬車ですか?」

馬車を借りるとなれば、かなりの金額になるだろう。

維持費もかかるのではないだろうか。


「その代わり……」

僕だけでなく、バイロンも唾を飲み込む。


「わたくしどもの希望する作物を作っていただき、すべてカナン商会へ譲っていただけませんでしょうか?」

「つまり、専属契約ということでしょうか?」

「簡単に言えばそういうことです。収穫のノルマも課しません。お譲りいただける量だけ、こちらへお持ちください。その条件であれば荷馬車を自由に使っていただいて構いません。台車の管理費もこちらで持ちましょう」


確かにエリスさんの提案で、僕が困ることはないと思う。

確実に買い取ってもらえる上に、荷馬車を自由に使える。

何か裏があるのか?


「その慎重さも素晴らしいですね」

こちらの考えを先読みするかのようだ。


「ジェイクさんは、そのお人柄だけではなく、スキルも優れていらっしゃるとお見受け致しました。実際に、あの芋を拝見した時には、驚きで声を失ってしまいました」


値踏みをしていたわけではなかったのか……


「おそらく、他の作物であっても、質の高いものをお作りになることでしょう。例えば、わたくしどもが、芋をお願いしたとします。ジェイクさんは、畑の半分で芋を、残り半分で豆を作っていただいて構いません。豆はギルドでも、他の商会に持って行かれても文句は言いません」


恐ろしいくらいに条件が良すぎる。


「本音を申し上げれば、芋も豆もわたくしどもに譲っていただきたいのですが……そこまで束縛は致しません」


「ありがとうございます。もったいないお申し出です。もし、二つの作物ができましたら、両方ともこちらへお持ちしますよ」


「まあ、うれしい! ジェイクさんがお作りになったものは、絶対に売れます。このエリス・カナンが商人としてのプライドに賭けて断言致します」


そこまで言われては、断る理由などない。


僕は信じられないくらい条件が良い契約書にサインをして、荷馬車を手に入れた。


馬車の荷台に、荷車を載せ、馬とロバを引っ張って行く。


小切手の一部を銀行に預け、残りを現金化した。

エリスさんから紹介してもらった種苗屋と鍛冶屋に行き、リンゴの苗木とカボチャの種を買い、鍬や鎌やスコップなどを買った。


その他、収穫箱や緩衝材、野宿用品、日用品や食料など、馬車の荷台に積み込んでいく。

荷馬車だけなら、村までの帰着が早くなるので、肉や牛乳などを買うこともできる。


さすがに今日は、バイロン家のロバがいるので、飛ばして帰ることは不可能だ。


まるで行商人のような積み荷で、領都を後にした。


お手数ですが、是非とも評価をお願いいたします。


少しずつですが、定期的に更新できるよう、頑張ります。


誤字・脱字や読みづらい箇所があれば、お知らせください。




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