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閑話.冒険者の基本

ユリアたちが村に戻って、ジェイクに話をした内容です。

洗礼を受けて、四人で村へ戻った翌日、ユリアとカリナは、先輩冒険者であるミリアに弟子入りをし、冒険者としての基本を教えてもらうことにした。


「ユリア、カリナ、冒険者になるということは、死と隣り合わせだ。非常に危険な一方で、やりがいもある」


「「はい!」」


「パーティーを組む場合、私やユリアは前衛、《魔導師》のカリナは後衛として動かなければならない。他にも、ケガの治療に当たる者、体を張って敵の攻撃を受け止める者など、パーティーメンバーによって役割は変わる」


「「はい!」」


「まずは、常時依頼となっている街道の魔物を狩っていこう」


「はい!」

ユリアだけが返事する。


「あの、地下迷宮の魔物はむちゃくちゃ儲かるって聞いたんですけど?」


「あー、そうだな……メガマンティスと遭遇してどうだった?」


「私はバイロンみたいになってませんが、ちょっと……」


「カリナ、ダメよ! そんなこと言っちゃあ」


「うん。じゃあ、まだ、やめとけ。金よりも命を大切にしろ! 少しずつでもいいからスキルをマスターして、レベルを上げることを考える方が先だ。初心者だけで迷宮に入れば、即、死だ。」


「「はい!!」」


「あと、知っていると思うが、領都の北部と南部の山岳地帯に、地下迷宮や鉱山が広がっている。北部のオルタ迷宮は、だいたいレベル5くらいからベテランまで幅広い層の冒険者たちがチャレンジしている。海底下に広がるユバリ鉱山は、稀少金属が採掘できるため、ボルドー伯の直轄となっている。一方、南部のサングーン山脈やその麓の樹海に住む魔物は、非常に厄介だ。だから、迷宮の探索も鉱山開発も進められていない」


この半島の南端にそびえる活火山をノボルトという。

その北側に、険峻なサングーン山脈が半島を東西に分断するように存在する。

さらにその北側に樹海が広がっており、数少ない人類未到の地となっており、詳しいことはわかっていない。


マロネ村を中心にした場合、北60キロの所に領都がある。

東に30キロの所に酪農や牧畜が盛んなノルン村があるが、道が整備されていないため、森や牧草地を抜けなければならない。

約100キロ南にサングーン山脈の麓の樹海が広がり、おおよそ500キロ南にノボルト火山がある。


「へえ、じゃあ、意外とノボルト山の周辺には、オイシイお宝が眠ってるかもしれないのね!」

カリナが目を輝かせて言う。


「カリナ、私の話を聞いていたか?」

ミリアさんがため息まじりに言う。


「まずは、レベルアップですね! がんばりましょう!」


「お、おう……」

ミリアはユリアと顔を見合わせた。


領都へ向かう街道の中ほどになったとき、角が生えたタヌキのような魔物が3匹現れた。


「イビルラクーンだ。ユリアは左の一匹を、カリナは残りの二匹を! スキルをうまく生かせよ!」

ミリアは落ち着き払っている。


「いくよ!」

先に攻撃を仕掛けたのは、投げナイフのカリナだ。


ビシュッ

バシュゥ


見事にイビルラクーンの頭部に命中した。


残った一匹がこちらへ向かってくる。


ユリアは柄に手をかけ、飛びかかってきたイビルラグーンを、


キンッ


ユリアは剣を鞘に納め、


「ふぅ」


と息をついた。


ドサッ

ビチャッ


真っ二つに切られた肉塊が地面に落ちる。


「二人とも見事だ。今から、こいつらを解体するぞ!」


***


うぷぅ!

おええええええええっ!


カリナとユリアは街道の端の草むらにうずくまる。


「おい、これくらいで吐いてたら、冒険者なんてできないぞ!」


「私たち、解体するの、今日初めてなんですけど……」

恨めしそうに見るカリナ。


「あたし、冒険者よりも、早く、ジェイクのお嫁さんに……」

泣きながらつぶやくユリア。


「吐き終わったか? 解体の技術も冒険者の腕前だ。素材を高く買ってもらおうと思うのであれば、上手に解体するんだ。というか、洗礼の後の帰り道はどうしたんだ?」


「あのときは、なんとなくジェイクが解体してくれたので、あたしたちは触ってもないし……」


「あー、でも、バイロンも、もどしてた気がする……」


「そうか。ジェイク君、成長したな。小さい頃はずっと私の周りをつきまとってたのに……」


「あたし、がんばる!」


突然ユリアがやる気を出した。


***


オルタ迷宮は大盛況だった。


ミリア、ユリア、カリナは、領都から足を伸ばし、オルタ迷宮に向かったものの、入場制限がかかり、長い行列に巻き込まれていた。


「おい、ミリア嬢だ!」

「なんで、ミリア様がこんな所にいるんだ?」


ミリアは無視を決め込み、ユリアはうつむき、カリナはドヤ顔をしていた。


第一層は芋を洗うような混雑であった。


保護者同伴、ベテラン冒険者同伴、ベテランと新人の混合パーティー、新人を訓練中のクランなど、多くの人で賑わっていた。


「例年、この時期はこんな感じだ。今日は見学だけにしておこう」

とミリアが言うと、


「この迷宮は何層くらいあるのかしら?」

とカリナが興味津々に尋ねる。


「ああ、これまでの最高到達地点は三十二層だ。まぁ、二十層から二十五層あたりでもいい稼ぎになるから、最深部まで到達した者はいないよ。二十層まで行くのにも、最低一週間はかかるからな」


「無理無理無理ぃぃぃ! 一週間もシャワーも浴びずに戦い続けるなんて!」


「じきに慣れるさ。解体しても、吐かなくなったじゃないか!」


「まあ、そうだけど……」


ユリアもカリナも、手際は悪いが、魔物の解体に慣れてしまっていた。


ワイルドジャッカル、おばけねずみ、モンスターマッシュルーム、マンイーターなど、さまざまな魔物がどこからともなく湧いてくる。


しかし、素材としては価値がほとんどないため、多くのベテラン冒険者は、邪魔な魔物を蹴っ飛ばして先へ進むことが多い。


下の層に進めないほど増えすぎた場合には、二十体や五十体単位で買い取りも行われている。


いずれにしても、冒険者になったばかりの人にとってはありがたい場所だ。


「さて、迷宮見学はこれくらいにして、これから戻って、領都の外の森で魔物を狩ろうか」


「領都の外の森って、ワイルドボアがいたところ?」


「たぶん、そう、かな……」


「ああ、ミリアが話してくれたあたりだ」


「あのときは、ジェイクが手懐けてくれたけど、ワイルドボアに体当たりされて死ぬ人もいるんでしょう?」

ミリアが声を震わせながら言う。


「あぁ。でも、ワイルドボアなら、さっき見たワイルドジャッカルやマンイーターより戦いやすいぞ」


「ワイルドボアはまっすぐ突進してくるだけで、噛みついたりしないものね」

カリナが納得する。


「森は常時討伐依頼の魔物がいるし、領都にも近いから、最初の頃は、私もしばらくはそこで稼がせてもらったよ」


三人は森の中で、実践練習を積んでいった。

ご愛読、感謝です!

御礼申し上げます!


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本当にありがとうございます!!


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いよいよ12月1日(日)午前0時からスタートです


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