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13.背に腹は代えられない

当然、近くの薬草や木の実は採り尽くされている。

「もっと森の奥に入らないと、ないんじゃない?」

ユリアが不安げに言う。


僕がふと目の前の木を見上げると、栗の木だった。


[成長促進(小)]


と目の前にスキルが映し出された。


(セイチョウソクシン)

と念じてみる。


ボトボトボトボト


「きゃあああっ! 痛いっ! 痛いっ! 痛いっ!」

「なんで急に栗が降ってくるのよ?」

「おい、この栗、めちゃくちゃいいやつだぜ?」


三人がジーッと僕を見る。


「あは、あはは」

笑って誤魔化そうとしたが、

「ジェイク、あんた、かなりヤバい洗礼を受けたんじゃないの?」

「ちょっと、カリナ! 他人のスキルを詮索しちゃダメでしょう?」


「違うわよ! ジェイクは、バカ正直で、超お人好しだから、変なヤツらに拉致されたりするかもしれないでしょ? ユリアはそれでもいいの?」

「良くないけど……」


「そ、そんなことよりも、せっかくだから栗を拾わない?」


「「「そんなこと、で済ませるのか?」」」


ボトボトボトボト


まだ毬栗が降ってきている。


四人で、靴の爪先を使って毬を剥き、栗を取り出す。

すべての栗がはち切れそうに大きい。


(成長促進解除!)


ようやく毬栗の雨が止んだ。


ひととおり拾い終わり、全員バッグがいっぱいになった。


グルルルルル


唸り声の方を見ると、ワイルドボアが睨んでいる。


おそらく、栗を目当てに現れたのだろう。


力が強い魔物だが、体当たりされなければ、怪我をすることもない。


「そーっと逃げるわよ」

カリナが小さな声で言い、みんなが頷く。


[飼育調教(小)]


僕の目の前にスキルが映し出される。

そんなことできるのか?


(チョウキョウ)

と念じてみた。


先ほどまで、恐ろしい唸り声をあげていたワイルドボアは、フゴフゴと鼻を鳴らしながら、ゴロンと転がり腹を見せ始めた。


「ま、まさか、アレも……?」

呆れるカリナ。

「あは、あはは……」


***


僕たちはそれぞれ重くなったバッグを抱え、一頭のワイルドボアを連れて、領都へ入ろうとした。


「おいっ! ちょっと待て!」

「そこの四人組! 止まれ!」

まぁ、そうなることは想像していたが……


「はい、何ですか?」

僕は白々しく答える。

あとの三人は……真っ青な顔で、かなり挙動不審だ。


「お前たちの後ろからついて来ているのは、ワイルドボアじゃないのか?」

「え? これ、ワイルドボアっていうんですかぁ? そこの林で見つけて、人懐っこいので、ペットが逃げ出したのかと思って、連れてきたんです!」


門番たちは顔を見合わせる。

「た、確かにおとなしいな」

「わ、ワイルドボアではなく、ただの猪か?」


僕がワイルドボアを撫でようとすると、ゴロンと転がり腹を見せる。


ブヒブヒ


再び顔を見合わせる門番たち。

「あ、いや、すまない。俺たちの勘違いだったようだ」

「そいつが領都で暴れないように気をつけてくれよ!」


「ありがとうございます。お仕事、お疲れ様です!」


「「「お疲れ様です……」」」

後ろの三人は申し訳なさそうに挨拶する。


「おい、ジェイク、やべーよ! こいつが領都で暴れたりしたら、俺たちが捕まっちまうよ!」

「大丈夫だよ。このままギルドに連れて行って、あとはプロに任せよう」


ユリアとカリナが冒険者ギルドへ入り、受注者窓口のいかついおじさんを呼んでくる。


外に出てきたおじさんは、

「うおっ!! なんじゃこりゃあっ!!」


「常時依頼として出ていたワイルドボアです」

カリナも白々しく答える。


「待て、待て、待て、待て! 普通は、解体した肉を持って来るもんだ! なんで、まだ生きていて、そんなにおとなしいんだよ?!」

慌てるおじさん。


「今しがた、依頼書を見ましたが、解体した肉でなければならないという条件はありませんでしたよ?」

ここまでくると、ユリアも腹が座っている。


「まあ、そうだが……俺には判断できない。ギルドマスターを呼んでくる!」

急いでギルドの中に入るおじさん。


しばらくすると、いかにも冒険者上がりのおじいさんと、大型の檻を抱えたギルド職員たちがヒィヒィ言いながらやって来た。

「私は冒険者ギルドのギルドマスター、ライオネルだ。君たちが、コレを連れてきたのかね?」

「はい。僕はジェイク、彼がバイロン、この子がユリアで、その子がカリナです」

「君たちは四人でパーティーを組んでいるのかな?」

「はい!」


「私も長い間冒険者をやってきたが、こういうケースは初めてだ。捕獲は討伐より難易度が上がるし、鮮度も抜群というわけだ。どうだろう、こいつを5万ヨールで買い取らせてもらえないか?」


「「「ご、ごまん?」」」


「はい、いいですよ」


「よし、では、そのワイルドボアを檻に入れてくれ」


(檻に入れ)


トコトコと素直に入っていくワイルドボア。

檻の入口が閉められたのを確認し、


(調教解除)


グルルルルル


「うおっ!!」

驚き、身構えるライオネルさん。


ガンガンッ

ガンガンッ


檻の中で暴れまわるワイルドボア。

こうなれば、ただの魔物だ。


職員の一人が魔法をかけ、ワイルドボアを眠らせる。


その様子を見届け、ギルドの中へ入り、受注者カウンターで手続きを終えた。


ライオネルさんが、麻袋に入った5万ヨール分の金貨をドンッとカウンターに置く。


「面白いもんみせてもらったぜ! もし、また魔物を捕まえたら、連れて来てくれ! ガハハハハッ」

ご機嫌なライオネルさんに対して、ギルドの職員たちは、

「そんなにしょっちゅう生きた魔物を連れてこられたら、たまったもんじゃない……」

青ざめた顔で文句を言っていた。


僕たちは妙な視線を感じながら、冒険者ギルドをあとにした。

お手数ですが、是非とも評価をお願いいたします。


少しずつですが、定期的に更新できるよう、頑張ります。


誤字・脱字や読みづらい箇所があれば、お知らせください。




次の更新間隔が延びます。

「早くしろ」「つぎはどーなるんだよ」などのご声援をいただけると、とてもがんばれたりします。

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