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11.あ、それ、偽物です

僕たちは、住所と職業を書いて、書類を受付嬢へ渡した。


「では、しばらくお待ちください。この後、地下の試験場で冒険者試験を行います」


僕とバイロンが驚いて顔を見合わせていると、

「大丈夫ですよ。《商人》のバイロンさんも、《ファーマー》のジェイクさんも、初期スキルの確認ですから。」

「「はい、わかりました」」


地下の試験場までは、受付嬢が案内してくれた。


その途中に、いくつか注意すべきことを教えてもらった。

 ・冒険者は実力主義であること。身の丈に合わない受注をして、命を落としても一切補償はされない。

 ・初心者は、常時発注されている害獣駆除や薬草採取などでレベルアップをすると良い。

 ・《商人》でも《ファーマー》でも、受注した依頼を完遂すれば実績が記録され、他国の冒険者ギルドでも受注しやすくなる。

 ・魔物討伐は受注者窓口で受注完了処理や売買手続きなどを行う。素材によっては商業ギルドでも買い取ってくれる。


「僕はずっと、ミリアさんみたいな人しか冒険者になれないって思ってたけど、いろんな職種の人でも冒険者になれるんだね」

「あたしも知らなかった。お姉ちゃん、そんなこと、一言も教えてくれないんだもん」

「私たちは、まったくの世間知らずだったわね」

「俺も、自分ができることを頑張って、レベルを上げていくぜ」


そんなことを話しているうちに、試験場に着いた。


「あとは試験官の指示に従ってください。試験が終わったら、再び受付までお越しください」


「「「「はい、ありがとうございます」」」」


受付嬢は試験官に書類を渡すと、そう言って戻っていった。


試験官の若い男性は、スラッとした身体つきだが、よく見ると無駄のない筋肉がついている。

サラサラの金髪で、顔立ちも整っていて、身のこなしも上品な感じがする。

「私はドナルドだ。よろしく」


「「「「よろしくお願いします」」」」


「まずは、《剣士》のユリア。そこにある武器はどれを使っても良いので、あの人形を敵だと思って切りかかれ」


「は、はい」


少し緊張気味のユリアは、細身の長剣を選び、

「あの、ドナルドさん。スキルを使っていいんですよね?」


「もちろん。それを確認する試験だからな。」


「あ、はい。そうですね」


数秒ほど間があり、


キンッ


と音がしたかと思うと、ユリアは剣を鞘に納め、


「ふぅ」


と息をついた。


トサッ


「「「「?」」」」


ドナルドさんの目が点になる。


僕たちは何が起きたのかもわかっていない。


ただ、胴の部分が斜めに切られた人形があり、その上半分が地面に突き刺さっている。


「きゃあああっ!」


ユリアが一番驚いているようだ。

その叫び声に、ドナルドさんが我に返る。


「驚いたな。今日、洗礼をうけたばかりなのだろう?」


「は、は、はい……」

ユリアはブルブル震えている。


「借りた武器は戻しておいてくれ」

「は、は、はい……」

ユリアはギクシャクしながら、剣を戻して僕たちの所へ戻ってきた。


「次。《魔導師》のカリナ」

「はい!」


カリナは《魔導師》らしく、杖を選んだ。

「隣の人形を使ってくれ」

「はい!」


しばらく間があり、


「いちげきひっさつ! えいっ!」


なんとカリナは杖を投げたのだ。


ブスッ、ブスッ、ブスッ、ブスッ


杖は訳のわからない軌跡を描き、立っていた残り四体の人形を貫通していった。


「「「「……」」」」


「私、まだ、魔法は使えないんで……」


「はあ?」

ドナルドさんが間の抜けた声をあげた。


「なんなんだお前たちは……あと、スキルは口に出すな」


「あ、ヤバ!」

鼻の頭をポリポリかきながら、カリナが戻ってきた。


「つ、次。《商人》のバイロン」

「は、はい」


「とりあえず、スキルを使ってみてくれ」

「ちょ、ちょっと待ってもらえますか?」

バイロンがキョロキョロとし始めた。


しばらくして、請うような目で僕たちをみる。

どうやってスキルをイメージするのか忘れてしまったようだ。

「バカね、バイロン。スキルを使いたいって思えばいいのよ!」


バイロンが手を合わせている。


さすがはカリナ。

長い付き合いだからこそ、バイロンが求めていたことがわかったのだろう。


再びキョロキョロし始めるバイロン。

試験場の中を見渡しているが、何をしているのだろうか。


バイロンの視線がドナルドさんの方へ向いた時、


「あ、それ、偽物です」


と、バイロンは、ドナルドさんのサラサラの金髪を指差して言った。


「「「ぶっ!」」」


僕たちは笑いを堪えるのに必死だったが、ドナルドさんは、顔を真っ赤にして、怒りと恥ずかしさを堪えていた。


「もういい、わかった。戻れ。」


お手数ですが、是非とも評価をお願いいたします。


少しずつですが、定期的に更新できるよう、頑張ります。


誤字・脱字や読みづらい箇所があれば、お知らせください。

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