20 真実
「はぁ、はぁ、……っ、一体どういうことですか。私がいない間に……」
「おや、こんなに早く戻ってこれるとは。どうもこうも、私は今後ここで暮らしていきますので」
「はぁ?!そんなことさせるもんですか!王城にすぐさま使いを出して連行してもらいます」
「いいんですか?私を通報したら、アリアも道連れですよ?」
嫌悪感を露わにするイミュとは対称的に、ニコニコと黒い笑みを携えるゴードン。その様を見ながら、アリアは呆れるしかなかった。
「目は腫れなくて良かったね」
「あ、うん。アレスがタオルくれたから、ありがとう」
「「そこ、イチャつかないでください」」
ゴードンとイミュから指摘される。別に、イチャついてたわけではないんだけど。ゴードンは、お父さんみたいに私を子供扱いしている気がする。もう子供ではないんだけどなぁ……。こういうところはイミュとゴードンは似ている気がする。
「アレス、貴方の呪いはもう解いてあるので自由の身ですよ。いつでもどこでも好きに出て行ってください」
「いえ、私もこの生活が気に入っていますし、アリアともこれからも仲良くしていきたいのでお世話になります」
「アリアには私がついていますから大丈夫ですよ」
「いえ、お気遣いなく」
なんだかんだ、ゴードンはアレスとも不穏な空気を感じる。一体なんだというのだ。
「あ、そこの使い魔。先に釘を刺しておきますが、アリアに今後一切魔力補充を求めないように」
「はぁ?貴方に指図される覚えはありません」
「私はアリアの保護者であり、大切な人ですので、有無は言わせません。足りないなら、いくらでも私が補充してあげますよ」
イミュとゴードンが魔力補充をしているところを想像してしまった。これはこれで、需要があるところにはウケるかもしれない。
「はいそこ、変な妄想はしない」
「だから思考を読まないで!」
ドタバタな日常。これで私の物語は終わりを迎えるはずだった。
「……っ!……、っつ……く、あぁあぁぁああぁ!」
頭が割れるように痛い。立っていられなくて地面に突っぷす。今までにないくらいの尋常じゃない痛みに、顔が歪む。
「「「アリア!?」」」
呼ばれて支えられるが、上手く身体に力が入らない。
「うぅ、あ……っあぁぁああぁ……!!!」
突然身体中の血液が沸騰しそうなほど全身が熱くなると、私の意識は糸が切れたようになくなった。
叫ぶや否や、ばたりと倒れるアリアに男達が近寄るが、突然突風と共に、彼女の前に1人の男の子供が現れた。
「ありゃりゃ、意識が飛んじゃったようだねー。さすがにいきなり抉じ開けたのは良くなかったかなぁ」
「誰ですか、貴方は!」
「おや、貴方達は彼女の世界の住人?どうもどうも。僕はキース。彼女の元の世界から来たのさ」
「元の世界?一体どういうことですか!」
「まぁ、話せば長くなるけど、君達がいるこの世界は彼女の夢みたいなものなんだよね。彼女は創造主の一族の子で、元の世界から訳あって弾かれちゃったようなんだけど、やっと見つけることができたよ」
「言ってる意味が……アリアが、創造主?」
「そうそう。彼女、急にこの世界に現れなかった?あと、彼女が来る前の自分の生い立ちとか覚えてる?細かい設定とかされてるのかな?ま、どうでもいいけど」
キースという少年はクスクスと笑う。ネタバレをして愉快がる少年のように、目の前の男達の反応を見て楽しんでいた。
「彼女の力とか姿とかどれもこれもチート級でしょ?そりゃそうだよね、自分の世界なんだから。しかもこの状況、逆ハーレムっていうの?ウケるー。よっぽど彼女は承認欲求が強いのかな、あ、それとも欲求不満とか?」
「下世話なことを言うのはやめろ!」
「はは、それも設定かもね。うーん、僕はまだ異物扱いかー。まぁいいや、時間はたっぷり?んー、そこまででもないか。でもどうにかなるだろうし、そのうちまた来るよ。次は彼女を連れて帰れるといいんだけど。とにかく、じゃーね!」
再び風が舞うと、少年は消えた。アレスは倒れたままのアリアを抱き上げると、彼女の寝室へと向かった。
「どう思います?」
「あながち嘘ではなさそうなところが癪に障りますね。彼は一体何者なのか、何か痕跡が残っていればいいのですが」
イミュとゴードンは互いを見合わせたあと、先程のキースの魔力を探るが、特に何もわからず、一通り調べたあと、アリアのために看病へと向かった。




