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16 密会

いいのか悪いのか、アレスという男が来てから、アリアはどんどん変化していった。成長というべきか、はたまた成熟というべきか、本来彼女は人と触れ合うことで心身共に成長するのだろう。


使い魔との触れ合いでは叶わぬ成長。きっとあの男はわざと変化させずに維持させることを望んだがために、自分を側に置かせたに違いない。そして、自分もアリアが変わることを望んでない。思考は同じ、なぜなら……


「探しましたよ、イミューズ」


あぁ、見つかってしまった。いや、わざと見つかるように仕向けた、というべきか。


「随分と探すのに手間取ったようですね、ゴードン。かれこれ2年間ですか?ハクトワルト国の宰相兼宮廷魔術士が聞いて呆れますね」

「えぇ、誰かさんが私の(えにし)を綺麗サッパリと消してしまったもので」

「はて、何のことやら」

「本当、腹が立つほど私に思考が似てますね」

「はい、貴方の使い魔ですから」


アリアは自分を自身の使い魔だと思っているが、それは私がそのように思い込ませたからだ。ゴードンが最初にアリアにつけた自らの縁がこの私であり、彼女を守るため、また彼女の目印となるために使役されていたはずだった。


「アリアの魔力に馴染んでいますね」

「まぁ、魔力補充もしていただいてますし」


言うなり、すごい形相で見られる。随分と表情が顔に出るようになったもんだ。この人も、アリアによって人間的に厚みが増したように思う。


「で、わざわざ私にバレるようにしたと言うことは、アリアは城に戻すということですか?」

「いいえ」

「は?」

「彼女は貴方に会いたがってないので、戻ることはないと思います。今回の要件は別です」


苛立ちがさらに顔に出ている。アリアと過ごすようになってからというもの、人の感情は面白い、とついからかったり軽口を言ってしまったりする癖がついてしまった。


あまりからかってばかりだと痛い目に合うことは把握してるので、ある程度で自重せねばならないな。下手なことを言いつづけたら、目の前の男に抹殺されそうだ。


「で、別の要件とは」

「ヴィヴィアンナ皇女殿下のところにいた、アレスという名の騎士がうちに来ています。ぜひに引き取っていただければ、と」

「なんとなく察しはついていましたが、まさか本当にアリアのところにいたとは」

「要件は以上です」


厄介者がいなくなれば、また晴れて私とアリアだけの生活が待っている。誰にも邪魔されない、変わらない空間。


この男が執着するように、私もアリアを独占したいという欲求がある。それは本来使い魔が持つはずもない感情だが、この男の執着が大きければ大きいほど影響を受けるのだから致し方ない。


「ダメです」

「は?」

「アリアは返してもらいます。イミューズ、家まで案内なさい」

「嫌ですよ、そんなことをしたら私が嫌われます」

「使い魔がそのようなことを気にする必要はありません」

「では、交渉は決裂ということで」

「待ちなさい!!」


待ちなさい、と言われて待つものがいるだろうか。転移魔法で転移したのでバレないとは思うが、念のためアリアには引っ越しを提案しようか。あと魔力補充をしてもらわねば、そろそろ身が持たない。


イミュは再び転移魔法を使うと、何事もなかったかのようにアリアが待つ家へと帰った。

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