表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

現実逃避ノススメ

作者: 東雲潤

 さて、それじゃあまずは私のことから話そう。おひつじ座A型、身長は155せんちで体重40キロ。さば読んでないよ本当だよ。あと特筆する事があるとすれば舌にピアスがあいてるよ。特に意味もなく。昔、友達が、ううん好きな人、好きだった人があけてた影響かな。今でもその人が好きだとかいうんじゃなくて、なんとなく外せないだけ。これがなくなったら私が人と違うところがなくなってしまう気がして。舌ピアスくらい今時そんな珍しいわけでもないのにね。


 きみは現実逃避したいの?私が異世界にでも連れて行ってくれると思ったの?バカだなそんな能力あるわけないでしょうよ。私、どこにでもいる何にもなれなかった人だよ。何にもなれなかった。一応言っておくけどお酒飲めるし煙草も吸える、つまり大人の年齢だよ。可哀想に恋人なし金もなし、仕事はあれど安月給、生きてるだけなのに何と金のかかることかって嘆いてるような人だよ。ねえ、だからさ、一緒に現実逃避しようか。


 きみはきみをすきになって。私も私をすきになる。まずはそこから始めよう。いきなりハードル高いね?自分で言っといてちょっとこれ無理かなとか思ってるけど頑張るからさ、自分のことすきになろう。もうクリアしてるなら問題ないよ、ナルシスト大歓迎だよ。

 次はどうしようかな、私きみが男の子なのか女の子なのか知らないから、性的なことは抜きで考えてるんだけどね?ちなみにどうでもいいけど昔、女の子と付き合ってたこともあるんだけど。本当どうでもいいね?別にそんなの特別なことでもないし、変わってるとも思わない。人として、自分以外の一個体として他人をすきになるのに性別とか関係ないよねっていうだけの話。きみはそういうの嫌悪する?

 世の中には色んなひとがいるからね、思想とか信念とか。みんな同じじゃつまんないから、色んな考えがあって良いと思う。まぁそれはそれとして。


 きみは何色がすき?私は赤がすき。血の色だからとかメンヘラみたいなことは言わないよ。メンヘラじゃないから本当それだけは誤解しないで欲しいかな。とても健全だよ!健康診断もオールクリアだったんだからね!!

 どうして赤がすきなのかってところだけど、自分でもどうしてだかわからない。気が付いたときから小物とか文具、家具とかも赤色を好んで選ぶようになってた。ゲームとか、テレビにつなぐハードがあるやつでもポータブルでもアプリでも最初に属性を選ぶやつってあるでしょ。火か水か風か、みたいな。赤か青か緑か、みたいなさ。絶対火属性もしくは赤いの選ぶからね。きみがゲームしない人なら通じない例えでごめんだけど。


 空とかって眺めたりする?昼でも夜でも良いよ。私はよく眺める。昼でも夜でも。春のやわらかな青空も、夏のまぶしい青空も、秋の高い高い青空も、冬の澄んだ青空もすき。晴れ限定。夜も晴れ限定。曇りとか雨は気持ちが落ち込む方のグループの人なの、私。でも雨の夜は布団にくるまって目を閉じてると沢山の人達が拍手してるのを聞いてる気分になるから、ちょっとすき。音がすき。

 せっかくだから季節の話もしよう。どの季節がすき?って、今まで生きてきて何回聞かれた?超どうでもいい変化球。それはいいや何回でも。話を戻して、私は春がすきかな。何かが始まるようなわくわくした気持ちになるからね。学生時代はともかく、今は特に何も始まらないんだけど。花粉症もちだとつらいよね、春。きみは?

 そうそう春といえばなんだけど私、桜がすごくすきでね。身近な人はそれを絶対知ってるってくらい声を大にしてしつこく言ってるくらいすきでね。歴代お付き合いしてきた人達は特に。ね、これってちょっと呪いだよね。春になって桜が咲いてるのを見る度に、隣にいるのが誰であれ、頭の片隅に私がいるんだよきっと。こわいねぇ。ふふふ。


 きみは何か、花でも物でも見ると誰かを思い出したりする?忘れられない気持ちでも、すっぱり忘れてるけどなんか思い出すなぁくらいでも。私は結構あるかな。視覚的なものもだけど嗅覚、においで思い出すのが多いかも。物理的に匂ってる時もあれば鼻の奥で記憶が匂ってる時もあって、この感覚って誰に言っても伝わった事がないんだけど。比較的わかりやすい例えで言うと、夏の雨でアスファルトが焼けるにおい?思い出すと、鼻の奥に感じない?きみと共有出来たらうれしいんだけど。


 最近、うれしい事ってあった?私は、うーん、ぱっと出てこないから多分ない。きみのうれしい話が聞きたいな。100円拾ったとかそういうのでもいいよ。いや、これちょっとうれしいエピソード的な、ラッキー!的な、歌の歌詞とかにあったりするけどでも実際さ、道ばたに100円って落ちてなくない?見たことある?


 ところでこれどのあたりが現実逃避なんだろうって思ってる?そういえばそんな話だったっけ、くらいかな。私は今こんな取り留めのない話をしながら、顔も形もわからないきみを想像してる。何ならいるかどうかもわからない、きみを。きっといるんだろうなぁってもうほぼ妄想だよね。現実から逃避して、きみのことを考えてるよ。ちなみにここまで話してきた私のことに関してはノンフィクションだからね。きみと同じこの世界のどこかに実在している誰かなわけ。

 もしどこかで会えたら、お互いを認識できたら、それはもう運命だなぁとか思っちゃうんだけど運命って信じる?私は信じる。もうちょっと身近な言い方をしたら、縁だよね。人でも物でもそういうのってあると思う。突然めちゃくちゃみたらし団子が食べたくなってコンビニに行ったらレジ横に売ってた時の「運命だ!」感とか尋常じゃないし。あ、いや、きみのことみたらし団子と同等に思ってるわけじゃないからね?人とのそれは物とのそれより質量があるかなぁ。重いってこと。


 私、結構、ひとってすきなんだよね。嫌いなひともいるけど。例えば満員電車の中で一緒にぎゅうぎゅうになってる一人一人に人生があってさ、みんなそれぞれが主人公なんだよ。面白くない?

 私にとって不特定多数の、きみにとって不特定多数の、すれ違うだけの誰かも。そのひとにとっては自分が主人公なんだよ。逆にそのひとにとっては私も、きみも、不特定多数のモブなんだよ。面白くない?

 きみの人生は今日ここまでどんな物語だったのかなぁ気になるなぁ。ちゃんと主人公してる?一回しか生きらんないんだからね。セーブポイントなんてないし、リセットも出来ないんだから。どうせなら楽しまないと勿体ないよね。

 偉そうに言ってるけど私はちゃんと主人公してなかったかもしれない。少し前にね、再就職活動をしなきゃいけなくて。っていうのも勤めてた会社がなくなったからなんだけど。いや、これは今となってはだいぶ笑える話だったりするんだけど細かいことはまたいつかね。

 それで、生活するためにはお金が必要でしょ、稼ぐためには仕事しなきゃでしょ。いろんな会社に面接を受けに行ったの。全部落ちたの。年齢とか性別とかスキルとか、私なにも有利なものを持ってないんだなぁって思い知らされたよね。ピンチはピンチで、チャンスじゃなかった。こういうとき主人公なら大逆転のターニングポイントだったりするのにね。

 まぁなんやかんやあって今は仕事はしてるけど。そこそこに楽しくもあるけど。ちょっと自分にがっかり、したなぁ。でもわかんないじゃん、その転機がまだ“その時”じゃなかっただけかもしれないじゃんって。何事にも意味があると思いたいタイプだから、きっと後々になって今この道を歩んでるのが正解だったんだな、運命だったんだなってなるはずなの、多分。

 私は私を諦めきれないのかもしれないね。きっとなんか凄いことが起こるはずだ!めちゃくちゃ幸せになるはずだ!みたいな。主人公なんだもん、自分の人生の。だからハッピーエンドにしてあげたいじゃん。

 現実はなかなかそううまくはいかなくて、だからこうして。きみと現実逃避したがってる。おっと、なんか暗いね?!こんなはずじゃなかったんだけどな?!


 ねえ、きみにひとつだけお願いがあるんだけどいいかな。もしどこかで会えたら、これが運命だったならば、会えたときの合い言葉を決めよう。確率としてはほぼゼロだと思ってるけどわくわくしたいからね!

 「やっと見つけた」って言ってほしいなって今書いて、待ってこれシチュエーションによってはだいぶホラーじゃない?とか思ったんだけど。違うの、そうじゃなくて怖い感じじゃなくて。月9みたいな!いやその表現古いな。月9って。

 じゃなくて、おとぎ話的な?ファンタジー的な?ね、そういうことにしよう。どこの誰だかわからない私と、どこの誰だかわからないきみが、いつかどこかで巡り会うかもしれないって毎日ちょっとだけわくわくしよう。ひとまずのところこれが、きみと私のこれから始まる現実逃避。

読んでくれてどうもありがとう。いつかどこかで会えたらいいね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ