第一話 武士!?
気弱で臆病な自分を変えたい。そんな思いが何故か旅への思いを募らせた。願わくば気になる子に近付けたら……いや、好きになれたら幸せになりたい。内なる想いを秘め、僕は旅に出る――。
朝、目を覚ますと時計はギリギリの時刻を指していた。旅に行くためのバスを予約していたのに、初日から遅刻しそうだった。
「やばいってこれ!!!」
バス停の待合所を目指し、猛ダッシュをした。息を切らせながらバス待合所に辿り着くと、まだバスは姿を見せていなかった。置いてけぼりかとも思っていたが、待合所で楽しそうにしている女性たちがいるところを見ると、そうではないみたいで安堵した。
「失礼……ここから出立で間違いはないか?」
「え? あ、そうです」
「ふむ、しからばここで待たせてもらうぞ。おぬしの名はなんじゃ?」
「あ、えーと……僕は」
「何と無礼な奴! 何故に名を名乗らぬ? おぬし、それでも日本男児か!」
あれ? ここは日本でしかも、現代だよな? しかもバス乗り場なんだけど、この女性はどう見ても日本人じゃないけど、言葉が古風?
「外国の人ですか?」
「それは侮辱か?」
「え?」
「外からの人間だと? ニホン人はよくそれを平気で言うが、やめていただきたい」
「ご、ごめん。気を付けます」
「あ、いや、言い過ぎたな。すまぬ」
「こ、こちらこそなんか、ごめん。僕はタイスケです。あなたは?」
「うむ! ワシはガリーナじゃ。ロシアからはるばる日本に来たのじゃが、どこもかしこも近代的過ぎてつまらぬ。武士はどこにいるというのじゃ?」
「えええ?」
旅立ちの初日、僕は綺麗な瞳色をした異国の女性に度肝を抜かされた。ここから何かが始まる? かもしれない。