第1部ー2−
僕は驚いて少女の顔をいつもより開いた目で見つめた。当の少女は部屋の中に入り、ドアを閉めた。バタンと部屋の中にドアを閉めた音だけが響く。ボクはYシャツの胸ポケットに入れておいたタバコを一本取り出して、口にくわえてライターで火をつけてから少女に言った。
「君はボクがなにかわかっているのかい?」
そう言ってボクはタバコを一息吸ってから、肺に煙を流し込む。そして、少女から顔そむけて白い息を吐き出す。すると少女は答えた。
「えぇ」
ボクはその答えに大きなため息をついた。そして少し苛立った様な声で少女に向かって言い返した。
「いいか。ボクは一応殺し屋だ。君が誰かを殺したいと願って、報酬をだしてくれるなら仕事をしてやろう。だがな・・・」
「だから、私を殺してって言ったじゃない」
少女は怒ったりするような様子もなく、ただタンタンと言った。こんな調子で言葉を返されると、こちらも興が冷めたというか、どうもテンポを崩されたというか。そんな気分になって、声を弱めてから、言いたいことを続けた。
「死にたいなら自殺すればいいじゃないか。なぜボクなんかに頼る必要がある?」
「あなたに殺されたいと思った・・・。それじゃだめかしら?」
ボクの目をジッと見つめてそういってくる少女。
正直いってやりにくい。少女の依頼や態度もそうだが、初めてのことでどうしていいやら・・・。頭のなかをいろいろと思考が駆け巡る。『このまま消してしまえばいい』だとか、『さっさと追い返すべきだ』とか、一番いいのは記憶を消してから、どこか遠い町にでもやってしまうのがいいのだが、なんとなくこの子はまたここに来るような気がした。捨てても、捨てても戻ってくる子犬のように。
ボクは頭の中で回り続ける思考を振り払うかのように、吸っていたタバコの白い煙を勢いよく吐き出してから、小さくなったタバコを机の上においてある灰皿に押し付けてから、「ともかく、その仕事をボクは受けない。だからもうでてってくれ」
ボクはそう少女に対して言い放ち、ソファの上に横になり目を閉じた。ボクの意識がなくなるまで、少女が部屋を出て行く音どころか、なんの音も聞こえなかった。
忙しくて投稿できずにすみません。
楽しみにしてくれた方も、してなかった方も
読んでくれただけで作者は幸せです。
ありがとうございます。
つづきも楽しみにしていてください。