なろう作家は感想やPVを求める
初めての物語。
駄作ですが、見てもらえると嬉しいです。
突然だが、皆は小説家になろうというサイトを知っているだろうか?
俺はそこに作品を投稿している。
異世界転生
皆が皆、このジャンルで書いて、書籍化まで持っていってる。だから、俺も書籍化の夢を見て、異世界転生の話を書いている。だが、定番のジャンルで書いているが、全然PVが来ない。いや、定番のジャンルだからこそか。
一話目を投稿した時は十分しない内に50PVを超えたが、今では一日中掛けても5すらいかない。感想も来ないし、レビューも来ない。
物語を書きたいと思えない。やる気が萎えていく。
でも、それでも諦めきれず、今日も十三話目を投稿する。
人の夢と書いて、儚い。昔の人はよく言ったものだ。
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異世界転生とチーレム。この二つの言葉は深く結びついてる。
なろうの作品群を見ていると、異世界に転生して、ハーレムを作るという内容の話が多い。
だから、俺はそういう風にどんどん主人公を強くさせていき、女の子のキャラをどんどん追加していく。チーレムは加速していった。金髪の美少女、銀髪のロリっ子。獣耳の女の子などなど、沢山のキャラを登場させた。
だが、次第に敵キャラが思いつかなくなってきた。
どうしようか?
俺はカチッとマウスをクリックして、ラスボスをネットで調べる。オーソドックスな邪龍や魔神などが出てくる。中には女神様という斬新な人もいた。
俺は主人公が邪神を殺し、世界を救うというハッピーエンドにしようと考えて投稿した。
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五日後、
……今日もアクセス解析に目を通す。やはり、全然アクセスがない。あっても、一や二という数字がちらほらと散らばっているばかりだ。
それでも、一縷の希望を掛けて、感想欄をクリックする。
見ると、感想が一件も来ていた。
俺は急いでマウスを連打する。
カチッ
画面が変わり、感想欄へと移行する。
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投稿者:人魂
その他
こんなの、書いてて楽しんですか? PVや感想目当てじゃないですか?
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読んだ後、うん? と思い、読み返してみた。
書いてて楽しいですか?
楽しいですか?
「楽しいか……」
俺は今までを振り返ってみる。書いてて、楽しくない気がしてきた。
改めて、内容を見てみても、表現は単調すぎるし、内容も簡単。赤子同然の物語。そして、なにより、主人公が強すぎてつまらなく感じた。
「でも……ここでやめたら……」
書いてきた物語を殺すことになる。いかに、つまらなかろうと、いかに単調でも、これは俺が書いた初めての連載小説だ。殺すわけにはいかない。かといって、自分が書いていて、面白味が一切感じない小説など、書く意味がない。
「どうしたらいいんだ!?」
俺は画面越しの【人魂】さんに叫ぶ。世界が一瞬、暗くなったように感じた。
俺はその日は小説を投稿するのをやめた。
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次の日、学校から帰ってすぐ、俺はパソコンを起動した。
小説家になろうと検索画面に打ち込み、俺はマイページを開いた。
お知らせ欄を見ると、新しい感想が来ていますと、文字が表示されている。
慌てて感想を見てみる。
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投稿者:アキ
良い点
最初の方は面白いです。
悪い点
主人公が強くなりすぎてつまらなくなってきている。
その他
主人公の苦労も見てみたいです。
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読んでみて、成る程と思った。初めの強くないところはまだ面白いと思ってもらえるのか。でも、ストーリーを見直すと単純すぎることが多い。全体的に改稿した方がいいのかな、なんて思う。
まず、主人公がチートな特典を得て、転生する。チートな特典は、時間が経てば、自動的に強くなっているというもの。そして、異世界に降り立った主人公は女の子を沢山得る。所謂、ハーレム状態というやつだ。
どんどん強くなる主人公、苦労なしに、龍を余裕で倒せるになり、邪神を倒しに行く。
「だめだめじゃん」
俺は、主人公が邪神から弱体化の魔法をかけられて、弱くなった。というのを主題に物語を書き、投稿した。
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今日も小説家になろうに投稿する。この話で、完結の予定だ。人気な人は、後日談とか入れてる。だけど、俺は本当の本当の完結だ。結局、最後の最後まで書籍化はこなかったどころか、相変わらず、PVすら来ない。
カチッとマウスを鳴らし、物語を投稿する。
ついに、完結した。たぶん、数カ月だったけど、書いててよかったなと思えた。
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あれから、数日後、感想が二件来た。
内一件は、面白かったです。とシンプルに一文書かれていた。それだけでも、書いてて良かったと思えた。面白いって思ってもらえて、良かった。
二件目は前の人だった。
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投稿者:人魂
良い点
完結おめでとうございます。前に感想を入れてから、とても面白くなって、お気に入りの小説になりました。良かれば、他の話も投稿して下さいね。
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と書かれていた。
そして、その言葉を噛み締めていくうちに、PV目当てで小説を書き、感想やポイントを求めていた自分がアホらしくなった。
同時に、この【人魂】さんにありがとうと思った。多分、前にあの感想を貰えなければ、俺の小説は只々、つまらないだけの話になっていただろう。
だからこそ、俺はマウスを新規小説作成の部分に持っていく。
今度はもっと上手に書けるはずだ。まず、設定から書き出そう。プロットを書こう。
そして、単調じゃないストーリーを書こう。読んでいて、読者の【好き】も大事だけど、一番は俺が大好きと思える小説を書こう。
俺自身が読んでいて……書いていて、楽しいと思える作品を書こう。
俺はそう決めて、キーボードを鳴らし始めた。