特異点にいる君 【前】
「特異点にいる君」は前・中・後の3構成で投稿させて頂きます。
面倒かもしれませんが、どうか御付き合いください。
時は過ぎ、夏。
あれから何事もなく時は流れた。
無事一学期も終わり、夏休みに入った。
予定通りのバイト三昧。
これまで以上の退屈さにも馴染んできた。
毎日、予定通りなのだから。
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「暑い・・・」
季節はすっかり夏。
耳障りなセミの声と、無駄に気合の入った日差し。
この組み合わせは想像以上にキツイ。
「空調が壊れたそうだ、耐えろ。俺も暑い・・・」
「でも先輩、これじゃお客さんからクレームきますよ」
今日もファミレスでのバイト。
昨日の演算で『ファミレスのエアコン故障』については知っていた。
知っていたが、暑いものは暑い。
分かっているからと言って平気ということはない。
これが知らないまま起こったと想像すると発狂しそうだ。
「ところで妹さんも夏休みですよね?平気なんです?」
「あぁ、千紗か。毎日家でゴロゴロしているよ」
2人暮らしとは大変なのだろう。
まして親のいない状況では尚更だ。
「仕事に行くと言ったらヘソを曲げられちまった」
「はは・・、可愛いじゃないですか」
「まぁ、帰りにプリンでも買って帰れば大丈夫だろう」
全く優しい人だ。
俺にもこんな兄がいれば、少しは違ったのかな。
そんな妄想より、今はこのサウナの様な空間に耐えなければ。
明日には直るらしい。
こんな時、暗算による未来演算は便利だ。
「おい!この店はエアコンもつけないのか!」
始まった。
今日最初のクレームだ。
これが後3人に言われるのか。
「やっぱり来たじゃないですか・・・」
「今日何人に言われるんだろうな、これ・・・」
後3人です。なんて言えるわけもないよな。




