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リトリビューション  作者: セスラ
【三章】終りの始まり
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2度目の遅刻


何故だ。何故なんだ。

みのるが俺を睨み付けている。


必死に弁解しても、話が通じない。



違うんだ。俺だって、頑張ったんだよ。


―――――――――――――


「どいてください!」

「通して!!」


救急隊員が大声をあげて来る。

周囲は野次馬で溢れている。


みのるを担架で乗車させる。

慣れた手つきだ。流石プロである。


「君も病院まで着いてきてくれるかい?」

「わかりました」

隊員の人にそう言われた。

同乗者が他にいないのだから仕方がない。


救急車に乗るのは初めてだ。

まさかこんな形で乗ることになるとは


車内で、みのるは腕で目を隠すようにしていた。

小さくすすり泣く音が聞こえる。


足の事だろう。

痛み、だけではないよな。

後遺症が残ると、素人目に見てもわかる。


みのるはもう、サッカーは…。




病院に着くと待合室で長いこと待たされた。

今頃『手術中』の明かりがみのるのいる部屋を守っているだろう。


「○○病室にみのる君はいます」

看護婦にそう告げられ、俺はみのるの病室へと向かった。


ドアを開ける。中から重苦しい空気が舐め回すように俺を包んだ。

そこには虚ろに窓の外を眺めるみのるがいた。


「大丈夫…か…?」

「俺、もう、サッカーできないらしい」

何かを噛み殺すように言い放つ。


「リハビリして、何とか日常生活に戻れるそうだ」

「そうなのか・・・」

かける言葉が見つからない。「知ってた」など言えるわけもない。

彼の選手生命は今、終わってしまった。


「随分落ち着いてたよな」

「え・・・?」


声色が違う。いろいろな感情が混ざったような声。


「お前、ひょっとして見てたのか?」

その言葉に心臓が跳ね上がる。

俺は何も見てない、知っていただけだ。でも―――。


「俺だって頑張ったんだよ!」

必死に吐き出した言葉は、見事に墓穴を掘った。

みのるの眉が少し持ち上がった。


「頑張ったって何だよ…」

見開いた目で俺を見ている。希望の消えた瞳で。

「やっぱりお前、助けてくれなかったのか!?ただ見てるだけだったのかよ!!」

その言葉は、俺の心を引き裂くのに十分だった。

そう、知ってたのに助けられなかった。ただ見ているだけ、無力な自分とその結果を受け入れただけ。


「どうしようも無かったんだよ!」

俺は何を言っているんだ。これ以上言葉を口にしてはいけない。わかっていても言い訳が止まらない。

「走ったんだよ!抵抗したんだ!それでも…!間に合わなかったんだよ!」

みのるが困惑した表情で俺を見ている。

『八つ当たりした相手がそのストレスの原因だった』なんて顔をしている。


短い沈黙が流れた。先に動いたのは俺だった。

いや、動いたのではなく、逃げた―――。

何も言わず、言えずに静かに病室を後にした。

ふわふわした足取りで外へと向かう。




病院を出ると携帯の不在着信に気が付いた。

そして無気力に呟いた。

「バイト、遅刻だ」


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